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誰も知らない、高嶺の花の裏側2
第92話 〚隣に立つ覚悟〛(海翔視点)
澪が、前を向いて歩き出した瞬間。
俺は、何も言わなかった。
言えなかった、の方が正しい。
助けるべきか。
止めるべきか。
それとも——信じるべきか。
その全部が、頭の中で絡まっていた。
(怖いだろうな)
澪の背中は、強く見えて、
でもどこか、壊れそうだった。
今まで俺は、
「守る」ことで澪の隣にいた。
危険を遠ざける。
痛みを代わりに受ける。
それが正解だと思ってた。
でも今は違う。
澪は、自分で選ぼうとしている。
予知じゃなく、
心臓で。
その瞬間に、
俺が前に出たら——
それは信じてないってことになる。
拳を、ぎゅっと握った。
正直に言えば、
めちゃくちゃ怖い。
失敗したらどうする?
誰かに傷つけられたら?
俺が止められたのに、って後悔したら?
……それでも。
「行け」
心の中で、そう言った。
澪が教室のドアを開ける。
一瞬、肩が揺れたのが見えた。
それでも、振り返らなかった。
その背中を見て、
俺はやっと分かった。
守るって、
前に立つことだけじゃない。
逃げ道を塞がないこと。
選択を奪わないこと。
それでも、隣から離れないこと。
もし転びそうになったら、
その時は——全力で受け止める。
でも、今は。
俺は一歩後ろで、
同じ速度で歩く。
澪が選んだ未来を、
信じるために。
(……大丈夫だ)
それは澪に向けた言葉で、
同時に、
自分自身に言い聞かせた言葉だった。
この距離は、弱点じゃない。
覚悟だ。