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窓際で荷物をまとめるAtを、俺は机から静かに見つめていた 。
さっきの 、あの一瞬だけ 、
確かに笑った 。
ほんのわずかに唇の端が上がった 。
無表情の仮面に隠された 、初めて見る柔らかい色 。
… 俺のせいで ?
俺が慌てて、声を裏返して、必死になって
それが彼奴の気を 、少しでも動かしたんだろうか 。
心臓はまだうるさく鳴っている 。
鼓動が強すぎて 、胸の奥が痛い 。
声にして伝えたい言葉が溢れているのに 、
喉の奥が硬く閉じてしまって 、息ばかりが詰まっていく 。
_今なら 。
今、この静けさの中でなら 。
”ありがとう”だけじゃなくて 。
”好きだ”って 。
ずっと前から 、君だけを追いかけていたって 。
口が震えた 。
唇が”す”まで形を作りかけた 。
でも 。
At「… じゃあな 、また明日 。」
鞄を肩にかけ、Atが振り返る 。
淡々とした声 。
その顔はもういつもの顔に戻っていた 。
あの一瞬の揺らぎは 、痕跡すら残さずに
消え去っていた 。
Mz「あ … 」
息が漏れた 。
声にならなかった 。
伝えたかった想いは 、また胸の奥に押し込められていく 。
ドアが開き 、Atが教室から出ていく 。
その扉の閉まる音は 、軽いはずなのに
俺には何より重く感じた 。
まるで俺の声を閉じ込めるように 。
あの後俺はどれだけ教室でぼーっとしていたのだろう 。
外はもう薄暗くなっていた 。
帰り道 、待ち伏せしていたのだろう4人が俺に駆け寄ってきた 。
Tg「Atくんとどうだったのっ !?」
Ak「なんかあったんでしょ !?」
Pr「その顔どしたん ?w」
Kty「なになに ?聞かせてよぉ !」
騒ぎ立てる4人に 、俺は引きつった笑みを返すことしか出来なかった 。
Mz「… まぁ 、ちょっとだけ 」
それ以上言葉が出ない。
胸の奥では嵐が吹き荒れているのに 、
口からは上手く取り繕った薄い言葉しか出てこない 。
Atの笑顔 。わずかに見えた横顔 。
それだけで世界が色付いて 、
それだけで心がちぎれそうになる 。
近づけた気がした 。
でも触れる前に消えてしまった 。
言葉にして届けなければ 、何も始まらない 。
それは分かっている 。
けれど 、俺にはまだ勇気がなかった 。
”好きだ”って言いたいのに 。
どうしても声にならない 。
届かない 。
4人の声が遠のいていく 。
明るい世界の中で 、俺一人だけが暗闇に取り残されたような気がした 。
足が重い 。
この胸の奥にあるのは 、恋という名の光のはずなのに 。
なんでこんなに苦しく 、脆いのだろう 。
Atが振り向くたび 、期待して 、打ち砕かれて 。
それでもまだ 、俺の心は彼奴に縛られている 。
_届かない声 。
それでも叫びたい 。
声にならなくても 、胸が壊れるまで 。