テラーノベル
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4話です。
注意書きは1話をご覧下さい。
では、どうぞ。
どれくらい走ったのだろう。
気がつけば、俺たちが入ってきた入口が見えて来ていた。
2人で勢いよく御山の外に飛び出し、地面に倒れ込む。
疲れすぎて体が動かない。
酸欠で頭が真っ白になって、息が上手くできない。
荒い呼吸を繰り返しながら、自分の手を見下ろす。
生きてる。生きてるんだ。
喜びと、恐怖と、後悔が同時に押し寄せてきて。
その時、初めて涙が出た。
流れ出したらもう止まらなくて、声も出せずにただただ泣いた。
ぺいんとは声を上げて泣いていて、そのせいでいっそう涙が出た。
その後、俺とぺいんとは 俺たちがいないことに気がついた親や里の大人たちに保護された。
こっぴどく叱られたが、俺もぺいんとも上の空で、説教内容なんて1つも覚えていない。
ぐちつぼは帰ってこなかった。
俺のせいで、ぐちつぼは死んだ。
死んだんだ。
あの化け物に襲われて、生きてるわけがない。
俺はそれから学校へ行かなくなった。
何もせずに家に引きこもり、ずっと泣いていた。
中学校と高校の6年間、俺はぺいんと以外とは顔も合わせなかった。
毎日遊びに来てくれるぺいんとに勉強を教えてもらって、都会の大学に通うことにした。
大学に受かったら、すぐに家を出ていった。
とにかく、あの場所から逃れたかった。
俺が、ぐちつぼを殺した。
都会に出ようと、仕事を始めようと、あの里を出ようと。
その事実は変わらない。
俺は最低最悪な人間なんだ。
父「…らっだぁ」
rd「ん”……、?」
父さんの声に、はっと我に返る。
どうやら、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
扉の前に立つ父さんの手には、暖かそうな夕食が乗ったお盆が握られていた。
父「食べなさい。お腹が減っただろう。」
rd「あ…ありがとう。」
受け取って、食事を口に運ぶ。
暖かくて、涙が出そうになった。
あんなこと思い出してたから、多分感情が不安定なんだと思う。
父さんの方を見ないようにしながら黙々と食べていると、父さんは俺の横に静かに腰掛けた。
父「…大丈夫か?」
rd「何が?」
父「あのこと、思い出させちゃっただろう。母さんがごめんな。」
rd「…父さんは悪くない。から、謝んないで。」
父「……」
父さんは、優しく笑いながら俺を見ている。
なんか恥ずかしい。
でも、こうやって父さんと真面目な話をするのは久しぶりだったから、少し嬉しかった。
父「まだ、あの日のこと引きずってるのか?」
rd「うん……。どうしても忘れらんない。まぁ、忘れられる訳ないよね。俺の、せいだし……。」
父「お前1人の責任じゃない。皆で行ったんだから、連帯責任みたいなもんさ。」
rd「でも、ぐちつぼは死んだ。知ってる?喧嘩って、手出した方の負けなんだよ。それと同じ。ぐちつぼは死んじゃった、俺が連れてったせいで。俺が誘ったせいで。だから、“俺たち”じゃない、俺の負けだよ。」
父「…まぁ、あんまり抱え込むなよ。」
rd「……」
無理な話だ。
親友を失った。
それだけで辛いのに、それが更に自分のせいだとなると、立ち直れる人なんかいないと思う。
でも、父さんは俺を元気づけようとしてくれてるだけだから、その優しさを踏みにじらないためにも、何も言わない。
俺はそうやって、大きなトラブルは避けてきたのに。
さっきは母さんと激突してしまった。
…まぁ、あれは十中八九母さんが悪いけど。
父「……らっだぁ。」
rd「ん?何?」
不意に、父さんがどこか真剣に声をかけてきた。
父「お前は、あの山について、どこまで知りたい?」
rd「え……?」
急に投げかけられた、思いもよらない質問に、一瞬戸惑う。
御山について。
俺は何も知らない。
rd「…父さん、何か知ってるの?」
父「あぁ、知ってるよ。…あの山の、全てを知ってる。」
なんで、父さんが。
それは聞かなくていいと思った。
でも、父さんが教えてくれるなら、知りたい。
あの山について。
もしかしたら、ぐちつぼが戻ってくる方法も……
rd「…全部知りたい、って言ったら?」
父「そう言うと思ったよ。」
父さんは苦笑いしながら、ポケットから何かを取り出した。
rd「鍵…?」
それは、銀色に光る鍵だった。
持ち手のところに、不思議な模様が掘られている。
rd「なんの鍵?」
父「家の倉庫の鍵だ。入ったことないだろう。」
rd「あ…確かに。」
家の倉庫は、父さん以外が入ることは無い。
というか、入れないのだ。
そういえば、いつも鍵がかかっていて、小さい頃はよく、「開けて」とせがんだような気がする。
rd「なんで、倉庫の鍵?」
父「あそこに、御山についての全てが入っている。知りたいなら、開けて勝手に探しなさい。」
rd「父さんが教えてくれるんじゃないんだ。」
父「自分の目で真実を確認したほうがいいだろう。…お友達も呼んでくるといい。」
rd「あぁ…ぺいんとのこと?」
父さんは優しくうなづくと、俺の頭をわしゃわしゃと撫でて、立ち上がった。
父「頑張りなさい。」
rd「…?」
父さんが出ていった部屋は、とても静かに感じた。
俺の手の中には、倉庫の鍵が 銀色の光を放ちながら静かにおさまっていた。
今回はここで切ります。
事が動きそうですね。
では、また次のお話で。
おつあめ〜。
コメント
4件
この話読んだ事なかったからわくわくで見てみたら神作だった... あの神社の秘密何なんだろう...ぐちつぼ助かってくれッッ!!