空が少し白み始めた早朝。
ひんやりとしたシーツの感触に意識が浮上する。
薄らと瞼を上げると、シャツのボタンを閉める彼の背中。
そっと擦り寄り腰に抱きつくと、ん?と声が降ってきた。
「もう行くの、」
「始発で帰るよ」
「…最近全然一緒にいてくれないじゃん」
「ごめんって」
拗ねんなよ、と頭を撫でてくる彼の手に安心するが、欲しいのは謝罪じゃない。
「バレそうなの、彼氏」
「まぁ、そんなとこ」
「ふーん。あ、そこのパンツ取って」
「はいよ。なに、仁人も出んの」
「たまには駅まで一緒に行こうよ」
「ん、そんならはよ準備しろ 」
「はーい。」
間の抜けた返事をしてゆっくりと着替え始める。
今俺に背を向けて歯を磨いているアイツは、俺の彼氏でもなければ友達でもない。
良く言えば『友達以上恋人未満』、悪く言えば『セフレ』、といったところだろう。
そしてアイツには帰るべき場所があり、待っている人もいる。
なのにわざわざ俺のところに来て一夜を共にするなんて、もうそんなの俺の勝ちだろ。
何が彼氏だ。アイツが、勇斗が好きなのは絶対に俺だ。
「準備おわった?」
「ん、もーちょい」
ドアの前でちゅ、と背伸びをしてキスすれば、それよりも少し甘いのがまた返ってくる。
そのあと、駅までは腕を組んで歩いた。
俺はお前からの、愛が欲しいよ。
「ただいま…」
「おかえり」
「あれ、起きてたの」
「うん、早起きしたんだぁ」
「そっか、ありがとな」
ポンポンと優しく頭を撫でられるその手に甘える。
「勇ちゃん、ねむい」
「ベッド行こっか」
「抱っこして、」
「はいはい」
手を広げて強請ると、嬉しそうな呆れたような顔で結局運んでくれる。
そんなとこが好きだなぁ…と思って、目の前の首筋に顔を埋めた、
「着きましたよ、お姫様」
「ん、」
「あれ、降りないの」
「…離れたくない」
「じゃあ一緒に寝よっか」
2人でふかふかのベッドに横になって、見つめ合う。
「なんかさ、久しぶりだね」
「そうだな…ごめん、忙しくて」
「ううん全然。帰ってきてくれるだけでうれしいよ」
そう言って俺はまた抱きついた。
抱きしめ返してくれるその腕に安心したいけど、この首筋からはやっぱり、知らない匂い。
どこに行ってるの、本当は。
問いただしたいけど、俺を見つめるその目に嘘は見えなくて。そう信じたくて。
「ずっと、俺のそばにいてくれるよね、?」
「うん。ずっと柔のそばにいるよ」
「離れてかないでね、」
「離れるわけないよ。不安にさせてごめんな」
あなたはそう言ってキスを落としてくれるけど、欲しいのは謝罪じゃないんだよ。
こんな狡い聞き方しか出来ない俺を、どうか許して。
俺はあなたからの、愛が欲しいよ。
コメント
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みるちゃんのひさびさのさくひん!!!嬉しすぎるし内容も天才すぎた、どっちもどっちってそういうことね、なるほどね、ほんとにちょっと切ないような内容書くの得意ってか上手だよね、ほんとにだいすき、🥹🥹