ピアノで人って救えたらしい。
いや、救えた。
正確には、救われた。
みんな、小さい頃1回は言われてたと思う。
泣くなって。
泣くって本当は大事なことなのに。
ただうるさいっていう理由だけでそう言う。
別に批判してる訳じゃないし、うるさいってのもわかるけど、うるさいって言って黙らないんだから、言っても子供を傷つけるだけだった。
運悪く俺は、丁度幼稚園の年中ぐらいの時に妹がいた。
だから、親に甘えたいとか思っても無理だった。
なぜか、そうやって迷惑かけたくないという意識を物心ついた時から持ってた。
でも、やっぱり、誰かに見て欲しくて、気づいて欲しくて。
幼稚園でも、なんかいじめられてた。
理由なんて忘れたけど。
友達なんて呼べる人いなかった。
唯一仲良かった子は、バスでだけ仲良くて、もう一人の子は、俺がいじめられてるの見て笑ってた。
でも、バスじゃ普通で、でも苦しかった気がする。どう信じたらいいかわからなかったから。
好奇心がよく暴走してた。
男女どっちもトイレが同じところにあった。
私は男用の方を男用だと知らなかったから、使ったことがある。
親は、世間一般的なことは教えてくれた。
でも、これといって大事なことを教えてくれたりはしなかった。
友達は大切にしなさいだとか、そもそも友達がいなかった俺には不必要だった。
「この人は友情に救われてきた人なんだな」って思った。
いじめられてることも言わなかった。
心配かけたくなかった。
年長になったらいじめ減るかなって思ったのに、同じクラス。
踊る時、隣で、私は
「僕の血潮〜♪」ってところで、脈に手を当てるところがあった。
私は先生を見ながらやったけど、その子に違うって言われた。
毎回。
隣の人と手を繋ぎましょうと言われた時、つねられた。その子に。
怖くて手が震えてた。
いちばん怖かったのは、私がフェンス越しに外を見てた時。
いつもひとりでそこから景色を眺めて、たまに話しかけてくれる小さい組の子と話したりしてた。
その時は1人だった。
ここから大きい声出したら家に届くかなって。
そんなこと考えてたら、後ろから押された。
一瞬何が起こったかわからなかった。
でも、ああ、死ぬのかな。とは思った。
幸い、木には刺さらず、木に当たったおかげで下まで転げ落ちることはなかった。
でも、その時も見上げると、バスで仲のいい子がこっちを見て、押した本人とふたりで笑って帰って行った。
フェンスの登り方が分からなかった。
でも、いちばん怖かったのは遅れたらお母さんに電話されて怒られるんじゃないかって。
叩かれたくないなって。
そう思ったら涙が出てきた。
先生は、全然通りかからなくて、怖かった。
やっと通りかかって、先生に話した。
「その子とは友達?」
そう聞かれた。私は首を振った。
だって、以前、「50+50分かったら仲良くして友達になってあげる!」って笑顔で言われて、その子の笑顔を自分に向けられたことに嬉しくなって、答えた。「10」と。
「ざんね〜んw」と言われた。
その時、まだあれが続くんだなって思った。
同時に、友達になりたかったなって。
その子がほかの友達といる時楽しそうなんだもん。俺は1人なのに。
先生は困ったように言った
「で、でも同じクラスなんだよね?」と。
頷いた。
「じゃあ友達だよね、?」
頷かないと迷惑かな
そう思って頷いた。安心したように先生は頬の筋肉の力を緩めた。
教室まで付き添われた。出血はなかったから。
その押してきた子のところに連れてかれて、先生がその子に「謝ってあげて?」と優しく言った。
その子は「ごめんね」と思ってもなさそうに言って、また友達に笑顔を向けてどっか行った。
その友達もこっちを見て笑ってきた。
先生が「これで仲直り!」と言う。
_なんで?
幼かった私でもわかった。
だって、押したら危ない。
今回はたまたま運が良かったけど、木に引っかかってなかったら落ちてた。当たり所が悪ければ死んでた。
なのに、謝ったら解決?
怖かったのに。
それでもその時の私には許すって選択しかなくて。
またいつもみたいにひとりで本を読んでた。
あの子は今、友達に囲まれてるんだろうな
そう思うと、私はなんも変わってないなと思う。
弱虫なくせに、一丁前に強がってるガキのまま。
いいとこだけのこして成長なんて出来るわけない。
元からないのに。
小学校でも浮いていた。
なんとか友達を作りたくて自分なりに頑張ったけど、誰も見てくれなくて。
幼稚園の頃からのくせで1人で過ごしてた。
別にいいと思ってた。
でも、お母さんに言ったらこっぴどく怒られた。
今までそうしてきたのに。
でも、浮いてるからそんなことできなかった。
人との接し方が分からなかった。
空振りしかしなかった。
クラスで一人の子に話しかけた。
でもその子は話さなくて、私は結構戸惑ったけど、居心地は何故か悪くなかった。
その子は声を出さなくても笑ってくれたりした。
初めて「自分」が存在してるように思えた。
存在してるよ、って教えてもらえた気がした。
その子はきっと、そんなの知らないんだろうけど。
でも、2年生のある日、転校することになった。
理由はシンプル。引っ越しだ。
最終日、手紙をもらった。
自分の行動について沢山書かれてた。
いい意味で。
自分って存在してよかったんだ
そう思えた。
まぁ、歴史は繰り返すというのはこういうことだろうか。
転校先で馴染めなかった。
どうせ寄ってくるのは1日目2日目3日目だけ。
あとから知ったが、クラスの男子が俺と遊ぶなよと言ってたらしい。
んな典型的すぎることするやついるんだなと知った時は思った。
道理でみんな誘いに乗ってくれないわけだった。
しかも、私に仲良くしようと言ってくれてもすぐ去ってくし、しかも、友達だと思ってた子も、私が転校生で噂も何も知らないからって理由で近づいてきてて。
つまりは信じられる人はゼロ人。
中には仲良くなったら色々請求してくるやつもいた。
そんなのを小3で繰り返し経験した上に過去にもいじめがあったなら、トラウマを持って当たり前だ。
なのに、周りと馴染めなくて怒られた。
じゃあ、馴染み方を教えて欲しい。
信じ方を教えて欲しい。
毎晩泣いた。
そんな日々を淡々と過ごして1年後。
転校生が来た。
めちゃくちゃめーっちゃ美女。
そうだな。何が言いたいかと言うと
一目惚れした。
心臓を鷲掴みされるような感じ。
いやいやそんな同じ女よないないと思ってた。
その子と仲良くなりたくて初日に話しかけたかったけど、全然見つからなかった。
その三日後だろうか。
その子の担任がその子を連れてうちの教室に来た。
見た瞬間ドキッとした。
「一緒に帰る方向の子がいないから誰か一緒に帰ってくれる子いる?」
はいはいはいはいはい!!
…と、内心これだった。
みんなが挙げてなくて戸惑ってるのに、手は勝手にあがってた。
勢いよく「ハイ!」と言ってしまったことに気づいて恥ずかしくなった。
(データ消えてて萎えた )
そのあとキョドって手を繋いだりした。
恋心を自覚した話はまた別の話。
無事小学校は卒業できた。
でも、やっぱ中学でも馴染めない。
そんなある日、Mちゃんにアラームの音にしたいからとピアノを頼んでみた。
結局、その日から空きすぎてピアノ忘れて耳コピが届いた。豪華3曲。
部屋でひとりで聞こうと思って
ドアを閉めた瞬間再生した。
好きな曲だ。
手にいきなり暖かいものが落ちてきた。
スマホにもだ。
嗚咽を漏らして泣いた。
初めてだった。こんなに泣くのは。
いじめられたときも、馴染めない時も。
自分の体を内面的にも外面的にも傷つけるようになったときだって、誰も気づかなかった。そりゃそうだ。手首なんてすぐバレる。
しにたいなって思ってた。
どうせ死んだって家族の悲しむ理由は娘だからだと思ってた。ただの家族としての役割。
そんな自暴自棄な俺の事を肯定してくれてるみたいで。
本当は苦しかった。
一人が好きでも孤独は嫌だった。
存在してるって証明が欲しかった。
生きてていいっておもえるようになりたかった。
人間不信でも、トラウマ持ちでも、それでも生きてていいって言って欲しかった。
助けてって言えるようになりたかった。
しにたかった。
それでも生きてたのは人に簡単に操られてしまうMちゃんを放って逝きたくなかったから。
Mちゃんといるときだけ、存在を認めてもらえてる気がした。
やっぱ、ひく人が優しいと、ピアノの音色も優しいもんなのかな。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!