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「ぬぁっ……! とりゃぁぁぁ!! わわっとぉ……!?」
気合いと驚きが入り混じったルティの掛け声とともに、公国へ向けた戦闘が開始された。トンネルを抜けるまでは、ルーヴ率いる白狼騎士団が道案内をしていた。
しかしゲートから出て来た魔物群により、中断を余儀なくされる。騎士団に向かって行く魔物までは面倒を見切れず、こちらはこちらで大量の魔物が押し寄せたからだ。
「なに、心配するな! この程度の魔物ならば騎士団で何とか出来る! 故郷を頼むぞ!!」
――などとルーヴに頼まれてしまったので、ルティとシーニャを筆頭に前へ進みだす。フィーサはおれの手元にあり、ミルシェは事前にかけた防御魔法のリキャストに気を配っている。
公国に向かうには魔導ゲートを突破しなければならない。侵入者を防ぐゲートではあるが、ゲートを制御する魔力が未だに流れているようだ。
魔導ゲートの高さはぎりぎりよじ登れるくらいだが、魔物の群れが押し寄せて来ている以上そんな真似をする余裕は無い。
敵の様子を見るに、公国内には多数の反乱魔導兵が残っているとみていいだろう。しかしゲートの向こう側から来るのは魔物ばかりで、正直どれくらいの魔物が棲んでいるかは国内に入ってみないと分からない。
閉じられたゲートをルティが拳で破壊しつつ、襲って来る魔物はシーニャが倒している。低レベルのゴブリンと狼、それに少数の巨人族が群れで襲って来ているが……。
「グルルァァ――!?」
「ギィエェェェ!?」
今の時点ではレベルの低い魔物が多数で、シーニャは退屈そうにしている。
「ウニャ~……弱い、弱すぎるのだ~!」
「とぉぉぉぉぉ!! じゃあじゃあ、私と代わろうか?」
「嫌なのだ!! シーニャ、ドワーフじゃないのだ! ゲートを破壊出来るような力なんて無いのだ」
「……それなら壊して壊しまくって、シーニャの為に魔物を呼び寄せますよ~! ふおぉぉぉぉぉぉ!!」
何だかんだで連携が取れているようで、ルティの破壊力でゲートを破壊し、魔物が押し寄せる前にシーニャが倒す――といった感じで案外いいコンビなのかも。
「イスティさまは、前に出て戦わないなの?」
「……ん? この辺は身軽さに長けている二人に任せる」
フィーサの疑問ももっともだと思っていると、
「ウフフッ、これだから小娘は」
ミルシェが早速フィーサを挑発し始めた。
「小娘じゃないもん!! わらわはイスティさまと一緒に戦いたいなの!」
「その意気を買って小娘に優しく教えて差し上げますわ。アックさまは確かに驚異的なお強さですわ。ですけれど、たかが魔物相手に張り切ったところで何かが変わるわけではありませんのよ?」
「むむむぅ……」
「アックさまはあたしたちと違って人間。強くとも、体力までは永遠のお強さではありませんわ。そうですわよね?」
「ま、まぁな」
実はルティの特製ミルクを飲んでいるから多分体力の心配は無い……とは言えない。おれはともかく、ルティたちを前面で戦わせているのもミルシェの指示によるものだ。
以前彼女と話し合った役割分担が生きているわけだが、おれが全ての敵を殲滅するのは簡単かもしれないが、シーニャたちが先陣を切る方が正しいはず。
「イスティさま!」
「うん?」
ミルシェに言われたことで頭にきたかな?
「わらわの体内に残っている魔法属性を使って、斬りまくって欲しいなの!」
そうかと思えば案外冷静だった。
「そういや、魔導士の時に使わなかったな」
「はいなの! エンチャント攻撃で魔導兵を破壊しまくるなの!!」
「あぁ、それもいいな」
フィーサのエンチャント攻撃で魔導士を倒す予定だったが、結局使わずじまい。それがまさか体内に属性が残っていたとは。
「ひえええ!? ワ、ワイバーンが沢山飛んできました~!! ア、アックさまっ! どうしましょう!?」
魔導ゲートの上空は雪模様の空が見えている。トンネルじゃないので明るさはあるが、飛行タイプの魔物にとっては狙い放題。そうなると、さすがに空からの魔物だとルティたちでは不利か。
状況を見るに、ここまでいくつかの魔導ゲートを突破して来ている。その数は数えていないが、魔物のタイプが変わったところを見ればもうすぐのようだ。
「よし! 交代だ、ルティ、シーニャ!!」
「は、はいっっ!」
「ウニャッ!」
ワイバーン相手であれば風魔法が最適だろう。こういう時、癪《しゃく》ではあるが、風の神の魔法を使うのが良さそうだ。
「……ふぅっ――、アエルブラスト!」
ラファーガは幻影を作り出していたが、それを省き純粋な突風攻撃にした。ワイバーンの群れは強烈な突風に対応出来ず、次々と地面に叩きつけられている。
「おおー! さすがアック様ですっ!!」
「ウニャウ!!」
ワイバーンの群れが序盤の山場だったようで、周辺は静まり返った。これであらかたの魔物は掃討出来たようだ。