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それから私は、何となく店長のことを避けるようになってしまった。
まあもともと、私が遅番に入るのがあんまりなかったからというのもあるが…
遅番になっても、雛瀬さんもいて2人っきりになることはなかったから、もちろん『いい子の私』で話していたし、店長に送ってもらうということもない。
休憩時間は被らないからバラバラ。しばらく、店長に素の自分を見せていなかった。
しかし…今日はいつもと違った。
「施錠はOKですね。」
「うん、じゃあ帰ろうか。」
今日は雛瀬さんがお休みの日。つまりは、店長と2人で遅番をする日。
まだ4日くらいしかたっていないのに、すごく久しぶりな感じがする。
「何だか、藤塚さんと2人で遅番するのは久しぶりな気がするね。」
「まだそんなにたっていないですよ?それとも、早く私と2人っきりになりたかったんですか?」
「そ、そんなことは…」
…なんて、私も今同じことを思ってたけど、なんてひっそり思うが、あえてからかう。
もっと気まずくなると思っていたが、店長の態度で一気にいつもの私に戻る。
というか、つい癖で店長の車まで付いてきてしまったが、唐突に不安に襲われる。
勝手に乗ったら迷惑じゃないだろうか。あの時は送ってくれたけど間が空いたし…。
「あれ?乗らないの?」
ドアの前で俯く私に、店長が不思議そうな顔をした。
その言い方は日常の延長かと思うくらい自然で、当たり前だった。
「え?てか、送ってくれるんですか?」
恐る恐る聞くと、店長は笑ってうなずいた。
「当たり前さ。藤塚さん、前にお願いしてくれたでしょ?さすがに雛瀬さんがいる時は色々と誤解されそうだったからできなかったけど…」
苦笑いを浮かべてから、慌て「あ、も、もちろん変な気持ちはないからね!!」と言い直す。
その様子に、思わずくすりと笑いが溢れてしまう。
(私のよく知る店長だ。よかった…て、何がよかったんだろ。)
思わず呟いた心の声を疑問に思いながらも、車に乗り込む。
久しぶりの店長の車は何にも変わらず、私の気持ちを穏やかにさせる。
そのせいだろうか。
「店長。久しぶりに、ごはん食べに行きません?」
普段の自分では考えられない発言をするのは。
「へ?」
エンジンがかかると同時に腑抜けた声を発する店長。
やっぱり、変わらない。少ししかたっていないから当たり前なのに、今日はそれが嬉しかった。
「ね、行きましょう?私、お腹すいちゃいました。心配しなくても、今日は私の分は自分で払いますから。」
「あ…う、うん。それじゃあ…行こうか。」
「はいっ。」
本当は…対してお腹は空いていない。どうして嘘をついてまで店長をご飯に誘ったのか。
矛盾した気持ちを抱えながら車は走り出した。