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「お待たせいたしました。こちら唐揚げ定食と、サラダうどんになります。」
何だか無愛想な店員がお皿を機械的に置くと、声もかけずに過ぎ去っていく。
恐らく高校生だろう。もう少し指導してほしいな、と思いつつもそれを横目で流す。
「お、きたきた!!いやぁー、俺も腹ペコでさあ。ちょうどよかったよ。」
対して店長は気にもしてない感じで、目の前のご飯に目を輝かせている。
接客業の店長なんだから、もう少し気にかければいいのに。
(まあ…それが代田店長か。)
心の中で笑いを溢し、割り箸を2つに割る。
「ん?そういや、藤塚さんお腹空いていたって言ってたけどそれで足りるの?」
食べようとする手をぴたりと止めて、店長が聞いてくる。
「は、はい…私、お腹は空いても少食なんで。全然足ります。」
動揺でざわつく心臓を隠しながら平常心を装って答える。
自分でもよく分からない言い分だ。案の定、店長は気にしないでご飯にありつく。
私はそれを、自分の食を進めずにじっと見つめ、考え込んでしまう。
(…おかしい。店長と出会ってから分からないことだらけ。何で…かな。)
「そうかそうか。食が細いんだね。でも、若いうちはいっぱい食わなきゃだよ?まあ、俺みたいなおっさんが夜にこんだけ食ったらメタボまっしぐらなんだけどさ。ははは。」
「…………分からない。」
「へっ?」
「あっ…いや…」
思わず心の声が漏れてしまう。気づいた時には既に遅く、我に返った視線の先には、きょとん、唐揚げを口に含んだまま首を傾げる店長がいた。
店長は、目をぱちくりさせながら、口を上下に動かし、何とか飲み込む。
気まずい沈黙が流れてしまうが、うまく言葉が出てこない。
一瞬の間が、私には何時間にも感じられた。
「分からないって…もしかして仕事のことかい!?あ、それでご飯に誘ってくれたのかな!?」
「へ?ちがっ…」
的外れな質問に、すぐさま口を開いて反論しかける。…が、途中で言葉が出てこなくなってしまった。
ふと、頭にあの女性が浮かび上がってきたから。