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遊園地から帰った夜、 仁人は、ベッドの上で古いチケットを見つめていた。 何度見ても そこに書かれている文字は変わらない。
――『もし次に会えたら、今度こそ最後まで。』
「……次に会えたら」
その言葉が、ずっと引っかかっていた。 まるで、 この言葉を書く前に 五人が一度、離れたこ とがあるみたいに。 仁人は目を閉じた。 すると、 また、あの記憶が浮かんだ。
夕暮れの遊園地。
五人で乗った観覧車。 笑い声。 そして――
『また来ようね』
『うん』
『次は朝から来ようや』
『絶対ね』
五人で笑っていた。 そこまでは同じ。 でも、 今回はその先が見えた。 観覧車から降りた五人は 誰かを待っていた。
「……誰を?」
仁人が呟く。 記憶の中の自分が、何度も時計を見る。
『遅いな……』
『まだ来てない?』
『うん』
四人が不安そうに顔を見合わせる。 そして、 遠くから一人の姿が見えた。 仁人はその顔を見ようとした。 けれど そこだけが、どうしてもぼやけている。
『ごめん』
その人が言う。
『もう、一緒にはいられない』
「……え?」
仁人は息を呑んだ。 その瞬間、 目の前の景色が崩れた。
「……っ!」
仁人は勢いよく目を開けた。 息が苦しい。 心臓が速く鳴っている。
「誰だった……?」
思い出せない。 でも、 あの声だけは覚えている。 寂しくて。 泣きそうで。 それでも笑おうとしていた声。
*
翌日。
「昨日の夜、夢見た」
学校で勇斗が言った。
「俺も」
柔太朗が続く。 仁人は顔を上げる。
「……どんな夢?」
「遊園地」
「……!」
四人も同じだった。
「観覧車に乗ってた」
勇斗が話す。
「そのあと、誰かを待ってた」
「俺もそこまでは一緒や」
舜太が頷く。
「でも、最後に誰かが来て……」
舜太が眉を寄せる。
「何か言ってた」
「なんて?」
「……覚えてへん」
太智も首を振る。
「俺も」
仁人は黙っていた。 四人には言えなかった。 自分だけは その先を少し見たことを。
「でもさ」
勇斗が言う。
「俺たち、あのとき誰かを待ってたんだよな」
「うん」
「じゃあ、その人は誰なんだろう」
五人の間に沈黙が落ちる。 仁人はチケットを机の上に置いた。
「これ」
「昨日の?」
「うん」
四人が見る。
「もしかしたら、この人が何か知ってるのかもしれない」
「……誰?」
「分からない」
仁人は首を振った。
「でも、この言葉を書いた人は、俺たちが離れたことを知ってる」
勇斗がチケットを裏返す。
「だったら」
勇斗は言った。
「探そう」
「え?」
「このチケットが使われた日を調べれば、何か分かるかもしれない」
「せやな」
舜太が頷く。
「五人で探したら、見つかるかもしれへん」
「……うん」
仁人も頷いた。
*
放課後。五 人は図書室で昔の新聞を調べていた。
「……あった!」
太智の声が響く。
「何?」
「この遊園地、昔は今より大きかったみたい」
古い記事を広げる。 そこには 数十年前の遊園地の写真が載っていた。 そして その写真の端に、 小さく五人の姿が写っている。
「……これ」
仁人の手が止まった。
「俺たちだ」
五人とも 確かに そこにいる。 けれど。
「待って」
柔太朗が写真を指差す。
「これ……」
五人の少し後ろ。 木の陰に 一人だけ立っている。
「誰?」
太智が呟く。 顔は見えない。 でも その人が手に持っているものだけは、はっきり見えた。
――同じ古いチケット。
「……この人が」
勇斗が呟く。
「俺たちを待ってたのかな」
仁人は写真を見つめた。 その瞬間 また記憶が蘇る。
『お願い』
誰かの声。
『今度こそ、最後まで一緒にいて』
そして 自分が答えている。
『……うん』
仁人の目から、涙が一滴落ちた。
「……俺」
「仁人?」
「俺、この約束を知ってる」
四人が息を呑む。
「前世で……約束した」
「何を?」
仁人は写真を見つめた。 そして 震える声で答える。
「――五人で、最後まで一緒にいるって」
その言葉を口にした瞬間、 写真の裏側に 見覚えのない文字が浮かび上がった。
――『約束は、破られた。』
五人は息を止めた。 そして仁人は その続きを見てしまった。
――『だから、もう一度会おう。』
仁人の指が震える。 これは 五人の誰かが書いた言葉なのか。 それとも、 まだ知らない誰かが、 五人に向けて残した言葉なのか、 分からない。
ただ一つ。 はっきりしたことがある。 五人の輪廻は、 偶然始まったものではなかった。
コメント
1件
あっ…読み終わった…第17話、めっちゃ重かった。仁人が夢の中で“誰か”の声を覚えてて、でも顔だけがぼやけてる描写、すごく切なかった。写真の裏に浮かんだ文字、『約束は破られた』って…この世界、絶対にただの青春物語じゃないよね。輪廻とか、自分たちで気づいてしまった過去とか、刺さる。次が待ち遠しいです。素敵な作品をありがとうございます🌙