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――『約束は、破られた。』
その言葉を 五人は何度も読み返していた。
「……誰が破ったんやろ」
舜太が呟く。
「五人のうち、誰かってことだよね」
太智が答える。
「でも、誰が?」
柔太朗が写真を見る。 そこに写っている五人は みんな笑っている。 誰かが裏切ったようには見えない。
「……仁人」
勇斗が口を開く。
「何?」
「何か思い出してない?」
「……」
仁人は答えられなかった。 昨日、 写真を見た瞬間 確かに記憶が流れ込んできた。
――『今度こそ、最後まで一緒にいて』
――『うん』
自分は約束した。 なのに 写真には、
『約束は、破られた。』 と書いてある。
「……分からない」
仁人は俯いた。
「まだ、何も」
嘘だった。 本当は 少しだけ思い出していた。 自分が 四人から離れていく場面を。
*
その日の帰り、 五人はいつもの道を歩いていた。
「仁人」
勇斗が隣に並ぶ。
「さっきから元気ないけど」
「……大丈夫」
「またそれ?」
「え?」
「『大丈夫』って言うときの仁人、全然大丈夫じゃない」
仁人は笑った。
「そんなことないよ」
「ある」
勇斗は真っ直ぐ仁人を見る。
「俺たちに言えないことある?」
「……」
言えない。 言ってしまったら 四人が自分から離れてしまう気がする。
「……ごめん」
仁人は小さく呟いた。
「何が?」
「なんでもない」
勇斗はそれ以上聞かなかった。 ただ 仁人の隣を歩き続けた。
*
夜、 仁人は一人で写真を見ていた。 すると また記憶が蘇る。
――雨。
前世の自分が走っている。
『待って!』
四人の声。
『仁人!』
振り返る。 四人が追いかけてくる。 そして、 自分は言った。
『来ないで』
『なんで?』
『もう、五人でいるのは無理なんだ』
『どうして?』
答えられない。 ただ 泣いていた。
『約束したじゃん』
『……ごめん』
『五人で最後までって』
『ごめん』
仁人は首を振る。
『俺がいると、また誰かがいなくなる』
『そんなの分からないだろ!』
『分かるんだよ!』
叫ぶ。
『何回繰り返しても同じだった!』
その言葉に 仁人自身が息を呑んだ。
「……何回?」
今の自分が呟く。 前世の自分は、 すでに 何度も同じことを経験していた。 そして 最後に。
『だから、来世では――』
そこで記憶が途切れた。
「……っ」
仁人は目を開けた。 胸が苦しい。 でも まだ最後の言葉だけが思い出せない。
*
翌日、 勇斗たちは図書室に集まっていた。
「これ、見つけた」
柔太朗が一冊の古いアルバムを開く。
「この遊園地の昔の写真」
「……!」
そこには 昨日見つけた写真と同じ日の写真が何枚も残っていた。 一枚。 二枚。 三枚。 五人で笑っている。 五人で歩いている。 五人で観覧車に乗っている。 そして 最後の一枚。 五人のうち、 一人だけが写っていない。
「……」
仁人の顔が青ざめる。
「この日……」
柔太朗が写真の日付を見る。
「五人で来たはずなのに」
「最後の写真だけ、四人や」
舜太が呟く。
「誰がいなくなったんや?」
写真を見る。
そこに写っていないのは――
「……仁人」
太智が呟いた。 仁人は何も言えなかった。 写真の中の四人は 泣いていた。 そして 写真の端、 小さな文字がある。
――『待ってるから。』
「……」
勇斗が写真を握る。
「俺たち……待ってたんだ」
その瞬間 仁人の中で、 最後の記憶が一気に蘇った。
『来世では、もう会いませんように』
自分がそう願った。 四人に背を向けて 一人で去った。 その背中を 四人が追いかけてきた。
『仁人!』
――それが 前世の最後だった。
「……俺だ」
仁人が呟く。
「約束を破ったのは……俺だ」
「仁人……」
勇斗が名前を呼ぶ。
「俺が、みんなから離れた」
涙が落ちる。
「みんなが嫌だったんじゃない」
「……」
「怖かったんだ」
仁人は顔を覆った。
「また、誰かがいなくなるのが」
四人は何も言わない。 ただ 仁人のそばに立っていた。 そして 勇斗が静かに言った。
「じゃあ、今度は」
仁人が顔を上げる。
「俺たちが約束を守る番じゃない?」
「……え?」
「今度は五人で」
勇斗が笑う。
「最後まで一緒にいよう」
舜太も頷いた。
「今度は、誰も勝手に離れたらあかんで」
「うん」
柔太朗が笑う。
「約束」
太智も小指を差し出した。
「五人で」
仁人は震える手で その小指に自分の小指を絡めた。
「……うん」
その瞬間 仁人の頭の中に まだ一つだけ、 思い出せない記憶が残っていることに気づいた。
――『来世では、もう会いませんように』
その願いを口にする直前 自分は 誰かに何を言われたのか。 そこだけが どうしても思い出せなかった。
コメント
1件
みぅです🖤 第18話、すごくよかったです……仁人が「約束を破ったのは俺」って言うところ、胸が締め付けられました。でも勇斗が「今度は俺たちが守る番」って言ってくれて、そこに舜太も柔太朗も太智も小指を差し出して……もう泣きそうになりました🥺 来世では会いませんようにって願ったのに、それでもまた五人で集まってしまう運命、すごく切なくて美しいです。最後の「誰かに何を言われたのか」っていう伏線も気になる……この重さと優しさが混ざる感じ、大好きです。 続きも静かに読みますね🌙