syp「また…明日…?」
zm「?」
立ち止まった俺を不思議そうに見つめるゾムさん。なんだろう、呪われてしまったかのように初めてあったときよりその目に引き込まれそうになってしまう。
そう…
それは…戻るには遅すぎたような感覚。
甘い匂いに誘われて食虫植物に栄養にされる虫のように…
もう後を向くには遅すぎた。
彼の目に射止められ、体中からドッと冷や汗が流れる。
「なぁショッピくん。」
「この目、好きなんよな」
「嬉しかったで。」
「そういう事言われるの初めてやし。」
「だから…」
「一緒に…」
zm「…………ショッピくん…?」
ハッと我に返れば、俺はゾムさんの胸ぐらを掴んでいた。怯えたようなゾムさんの目に、今までのものが全て幻覚であり幻聴であることを理解する。
syp「すみません…少し…調子が悪いみたいです…」
zm「お…おい、大丈夫か…?」
膝から崩れ落ちれば心配そうにオロオロと狼狽えるゾムさん。あぁやっぱり彼は見た目だけじゃない。中身も優しい。もっと生きる事が出来たら彼女なんて一瞬で出来るんだろうな…
syp「…ごめんなさい。今行きます…」
zm「無理すんなよ…」
差し出された手を遠慮がちに持ちつつもフラフラと立ち上がる。まだぼーっとする頭に鞭を打って、一歩一歩歩き出した。
zm「…」
syp「…」
出会った当時のような沈黙が流れる。先程のことからお互い気まずいのだろうが、最後に振り出しに戻るのは嫌だったな。
syp(なに…やってんだろ…俺がゾムさんの胸ぐら掴んだのに…振り出しに戻るのは嫌やって…)
自分でもよく分からない行動に絶句する。
zm「やっぱり…綺麗やなぁ…」
zm「ふふっ…これで警告は最後やで。」
意味深に笑う彼の目。
syp(…)
syp「……………?」
zm「♪」
働かない頭、動かない体。俺は虚ろな目でゾムさんを眺めていた。
翌日、ゾムさんは学校に来なかった。
syp「……」
姉「…ショッピ…?」
syp「…………」
姉「ねぇ…聞いてる…?」
syp「………」
姉「ショッピ!!」
syp「ッ!?」ビクッ
姉「良かった…ショッピ。なんで返事しないの…?」
syp「…ごめん………なさい……」
姉「……あんた…帰ってきてから変よ…?疲れてるの…?」
syp「…大丈夫……」
syp「ただいま……?」
母「なんで疑問系なの…?」
syp「分からない…」
父「…疲れてるなら少し休め」
syp「…はい…」
違う…俺が帰る所はここじゃない…
kn「……お前もう帰れ。顔色酷いぞ?」
syp「……」
kn「…っ…生きてんのか…?」
syp「……」
kn「おい返事ぐらい…」
syp「……」フラッ…
ドサッ…
kn「!?は!?もっ……、…もしかして…あいつ…!やりやがった…ッ…」
syp「あれ……」
先生「あ?起きたんですね」
syp「俺は…」
先生「あぁ、さっき急に倒れたってコネシマくんが運んで来てくれたんですよ。」
syp「そう………ですか…では…」
先生「あぁ!ちょっと待って!そう言えばコネシマくんに「絶対にこいつを外に出さないでくれ」って言われてるの。だから少し待っててくれる?」
syp「…」
先生「先生用事あってさ、少しの間だから待っててね。もしも何かあったらそこにある電話使って?一応鍵閉めていくから開けて欲しいときは言うのよ。鍵持ってくるから。」
syp「……」
先生「じゃあ言ってくるわね。」
syp「………」
カチャンッ
syp「…………違う…」
syp「行かなきゃ…」
syp「ゾムさんが…待ってる…」
ショッピは手紙を握り締める
syp「速く…速く………」
ガリガリガリ……
ガンッッ!!
思いっきり扉を蹴れば、脆い扉は簡単に壊れ、唯一鍵がかかっている所だけが不様だった。
syp「急がなきゃ…」
モブ1「キャーーー!?!?」
モブ2「とっ…扉がっ!?」
syp「…」ダッ…
syp「あぁ………」
後から聞こえる扉を叩く音。簡易的に閉められた屋上への扉の奥からクソ先輩の声も聞こえる。
syp「ゾム……さん………」
syp「ここに……いたんですね…」
zm「…」
こちらを気にする素振りなく屋上のフェンスにもたれかかる彼。夕日に染まり、紅い光を反射する目。もうあの目に何度心を奪われたか、
zm「ショッピくん…」
syp「はい…」
zm「お前、随分俺の目にお熱いなぁ?」
syp「…はい♪」
ドンドンと背中に衝撃を受ける。きっとこの扉の先でなんとか開けようと頑張ってるんだろうな。
zm「本当に俺の目が好き…いや…ここまで来ると依存…の方がええな。」
syp「ええ。この身をいくつだって削れるくらいには」
zm「最後の警告はもう終わったで。」
syp「知ってますよ」
zm「本当にええんやな?」
syp「…えぇ………」
zm「…この目はな、奇病の一種なんや。」
zm「長い名前の奴やったな…」
zm「んで、この目は…綺麗になっていくにつれて俺の寿命を奪う…」
zm「答え合わせや。俺がお祭り初めての理由…それは少し前まで目が見える事はなかったから。」
syp「…」
zm「ショッピくんだけやった。この目を好いてくれるの」
zm「なぁ…俺発作で1人で死ぬのは嫌や。」
「その『ただの』美しすぎる目と一緒がええな。」
腕を引っ張られ、そのままゾムさんはフェンスを越した。俺もそれに続く。
「もう桜も散ってきたな」
落ちながらゾムさんは言う
「ええ。若草色に染まってきています。」
俺は呟いた。
「これで『さいご』やから」
「最後…?」
「ふふっ、『最期』。」
「だからこの『最期』の三月。しっかりその目に焼き付けとけよ」
そう、どちらが言ったのかは分からない。
2人は落ちていく。
取り憑いた者と取り憑かれた者は
幸せそうに───
kiyu「うーんと、一言。」
kiyu「雑ですみません。」
コメント
3件
ぅぅぅぅぅぅぅぅらめしやぁ(?)
涙腺崩壊しました() 主さん神です🫠🫥
わーっ、最高でした!!フォロー失礼します!!!!!!