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小雨程度の、雨が降っていた。
俺と莉犬がいるこの部屋に、雨の音がぽつりぽつりと小さく響いては重たい空気に溶け込んでいく。
莉犬はソファーに座り俯いたまま一言も話さない。
「莉犬」
声をかけても聞こえない。
莉犬はただそこに座って、掌を握り締めて俯いていた。
すると、突然すくっと立ち上がる。
そしてソファーの背もたれにだらしなくかかっていた俺の上着を羽織り、玄関へと駆けていった。
「莉犬まって!」
俺の声も届かず莉犬は鍵を開け家を出ていってしまった。
すかさず俺も莉犬の背中を追いかける。
外に出ると、雨が少し強くなっていた。
追いかける莉犬の背中は雨で濡れている。
莉犬が向かった先は、いつしか俺と見た桜の木が生えている小さな公園。
今は夏なうえ木は雨に濡れ悲しそうに冷たい雫を落としていた。
そんな雫が俺の手の甲に透ける。
「りいぬ、」
ブランコの前で立ち止まった莉犬に駆け寄った。
その背中はひどく小さく見えて、胸がきゅっと締め付けられる。
俺は莉犬の肩に手を置いた。
「莉犬?」
正面から彼の顔を覗き込む。
そうすると、彼はボロボロ大粒の涙を流しその場に蹲る。
雨はより一層強くなっていた。
彼の髪、腕、背中。色々なところに弾かれて虚しく地面へ溢れる。
「…っぅ、……ひぐ、っ…」
莉犬は嗚咽し左手の薬指を悲しそうに見つめた。
それをきゅっと優しく両の掌で覆う。
「……莉犬、俺、ここにいるよ、…」
頬を伝う涙を指の腹で拭った。
涙は俺の指を通って溢れ、地面にぱたぱたと小さなシミを作る。
「ここに、いるってば。」
俺の背中を撫でる手も、涙を拭う指も、俺なりの優しい声も、全部全部莉犬は感じてない。
ここにいるっていうのに、どこに行っちゃったの、と莉犬は泣く。
もう、莉犬の世界に俺はいない。
彼を愛して、こんなに近くにいるって言うのに。
「……かえってきてよ。さとちゃん。…また抱きしめてよ」
『ここにいるって、…何回も言ってるじゃん。ニブチン莉犬がよ』
莉犬の頬に、俺の指が透けた。
コメント
14件
フォロー&ブクマ失礼しますっ! 主さんのストーリー好きすぎます🤦♀️ 天才の類ですね🕶✨
うぁあ、泣きました…😿😿 愛しい人がいなくなるってどれだけ辛いんでしょうか、切なすぎます…🤦♂️
桃くん…切なすぎるだろ…