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3人それぞれ悩みはあるものの、初めての女子会は楽しかった。


徹や孝太郎や鷹文の普段言えない愚痴を言い合って時々声が大きくなることもあったけれど、周囲の視線など気にすることもなく楽しんだ。


「ああー、楽しいわね」

「そうね。こんなに楽しいんなら又集まりましょうね」

麗子も一華も上機嫌。


学生時代から勉強ばかりであまり遊んだ経験のない乃恵にとっても、新鮮な体験だった。


「一華ちゃん。電話、出ないの?」


さっきから何度もなる携帯の着信。

相手を確認するものの、一華は電話に出る気はないらしい。


「いいんです。今日はみんな忘れてパアーッと楽しむんですから」

なんだか投げやりな言い方。


ちょっと心配だなと思ったその時、


「ねえお姉さん達」

いきなり声が掛かった。


え?

まさかここで声をかけられるとは思わなくて、3人とも固まった。


「随分楽しそうだから、声をかけちゃいました。よかったら一緒に飲みませんか?」


現れたのは20代前半の男の子2人連れ。


「いえ、私達は・・・」

一番近くにいた乃恵が断ろうとするけれど、


「いいじゃない。何でもおごるから」

ちょっと強引に席に座ろうとする。


これって、ナンパ?

ここは会員制クラブで、誰でも入れる場所ではないはずなのに。


「俺たちもここの会員なんだ。お姉さん達もよく来るの?」

すでにお酒が入っているのか、次々と話しかけてくる男の子達。


しつこいな、消えてほしいのに。

乃恵ははっきり言ってやろうとタイミングを見ているけれど、一華も麗子も笑って見ている。


***


「へえー22歳。じゃあ大学生ね」

「ダメじゃない、こんなところで遊んでいないで勉強しなくちゃ」


いつの間にか5人でテーブルを囲み、なぜか上手にお酒を勧める麗子と一華。


そのうち男の子達が酔っ払ってきた。


「ねえ、お姉さんも飲んでよ」

グラスにワインを注ぎ乃恵に差し出す男の子。


「私はいいから」

なんとかかわしていた乃恵だけれど、


「何でだよ、俺の酒が飲めないのかよっ」

酔っ払いのおじさんみたいなことを言い出した。


だから酔っぱらいは嫌い。

職場でも、飲み会に出ればいつもこんな感じ。

女性比率の低い医者の飲み会では、若い女性研修医なんて飲み屋のお姉さんより扱いが悪い。

セクハラみたいなまねをされても、相手が部長では黙るしかない。

だから、酔っ払いは大嫌い。


「なあ、何とか言えよ」

無反応な乃恵に、さらにグラスを差し出す男の子。


「やめてっ」

乃恵が手を払いのけた。


ガチャンッ。

グラスが割れテーブルの上にワインがこぼれた。


「お前、なにするんだよ」


こぼれたワインはテーブルに置いていた麗子や乃恵の携帯を濡らしただけじゃなく、男の子達の着ていた服にも掛かってしまった。


マズイな。

そう思っても、今さらどうすることもできない。


「この服がいくらすると思うんだ。弁償してもらうからな。俺のおやじは社長で経済界にも顔が利くんだ。絶対に許さないからな」

とうとうパパの名前まで出して怒鳴り出す男の子達。


その大声はその場に不釣り合いで、一斉に注目を集める結果となった。


***


「お客様、いかがなさいました?」

慌てて駆け寄ってきた店員。


「こいつがワインを落として俺の服を汚したんだ」

まるで先生にでも言いつけるように、俺は悪くないと主張する男の子。


困ったなあとみていると、


「大丈夫ですか?」

店員の男性が乃恵に声をかける。


「ええ、大丈夫です」


携帯は水没してしまったけれど、それ以外の被害はない。

ただこの男の子達は・・・


「何だよ、そいつじゃなくて俺の心配をしろよ。俺が被害者なんだ。もういい、警察を呼べ」


「ちょ、ちょっと」

さすがに焦る乃恵。


こんな所で警察を呼ばれたら、大騒ぎになる。

そもそもこの店には鈴森商事の専務である孝太郎の名前を出して入店した。

ここで騒ぎを起せば、きっと孝太郎に迷惑が掛かる。

それはダメ。


さあどうしたものかと麗子を見れば、焦った様子もなく人ごとのような顔をしている。

一方一華の方は、呆れたように男の子を見ていた。


「早く、警察を呼べっ」


男の子の怒鳴り声がホールの中に響き、周囲が静まりかえった。


***


万事休す。

もう収める方法はないのかと思ったそのとき、


「すみませんが、支配人を呼んでください」

一華が立ち上がり、店員に1枚の名刺を差し出した。


「えっと・・・」

困惑したように、名刺と一華を見比べる店員。


「私、浅井の家内です。支配人を呼んでいただけますか?」

穏やかな口調で話す一華に対し、


「は、はい。ただいま」

やっと状況が飲み込めた店員は逃げるように奥へと消えていった。


さすが浅井コンツェルン。影響力は絶大だわ。



数十秒後、現れた男性。


「当店の支配人でございます」

迷うことなく一華に向かって一礼した。


「お騒がせして申し訳ないですけれど、」

言いかけた一華に、


「いえ、こちらこそ申し訳ございません。鷹文様にはいつもお世話になっておりますのに、奥様がいらっしゃっているとは存じませんで、失礼いたしました」

深々と頭を下げる。


「今日は友人と食事に来ただけなので」


「さようでしたか。後は私がお話をいたしますので、奥様には別の席をご用意いたします」

怒って立ち上がったままの男の子はほったらかしで、話を進める支配人。


「オイ、俺たちを無視して話を進めるな」

やっと気づいた男の子が声を上げた。


「失礼ですが、本日はどなたのお名前でご入店ですか?」

「それは・・・親父の・・・」


「ここで騒ぎを起されますと、会員様であるお父様にもご迷惑が掛かりますが?」

よろしいんですかと、尋ねる支配人。


「それは・・・」

男の子はなにも言えなくなってしまった。

わがままな女神たち

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