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…あ、…え?
……バレ、た…?
あぁ、よく言う頭が真っ白になるってこんな感じなんだな。色が抜け落ちると言うよりは、フラッシュで目を潰されたかのような鮮烈さ。目の前の弓弦は見えてるのに、真っ白だとしか考えられない。
途端膝がカクンと曲がり、俺は席にすとんと落ちた。弓弦の手が俺の頬から離れて、弓弦の手がとても熱かったことに気が付いた。
「……陽太郎」
「っ…」
声を聞いた瞬間脳が石の様に固まり、ひび割れた様に軋んだ。今顔を上げると弓弦と目が合いそうで、勝手に動こうとする体を抑え込む。
どうしよう。そんな考えが過るが直ぐにどうするもこうするも残された道は一つしか無い、と回らない頭が告げた。
そう……
「あぁ好きだよ。……親友としてな」
……誤魔化すしか無い。ずっとそうしてきた…それしか無かったんだから。
「ま、好きか嫌いかって言われたらな。ってか急にどうした?何々メンブレ中か?」
笑え、笑え。
「あ、やっぱ昨日の酒残ってんじゃね?だからこんなこと聞いたんだろ?」
眦を揺らすな。喉を震わせるな。
「あ〜…ってかさ、昨日…「陽太郎」
被せられた低い声。よく通る、透き通った冷たい水みたいな声。弓弦の声。
……目を、合わせてしまった。
「よく口が回るな」
……あぁ。弓弦、全然笑ってねぇや。
無意識にまたテーブルに乗り出していた体が、重力に引っ張られてガタンと椅子に崩れ落ちた。もう誤魔化せない。今度は目の前が真っ暗になった。それを面白いと思う余裕ももう無かった。
「昨日お前が言ったんだぞ、好きだって。まぁ大方酒で口が滑ったんだろ。言っとくけど別に、聞いただけで責めたい訳じゃないからな」
「…………なんで?」
「…陽太郎?」
なぁ、なんで?
俺は迷惑もかけてないし、押し付けてない。ただ……ただ弓弦を好きだっただけなのに。なのになんで、俺が男ってだけでなんでこんな形で好きな奴に暴かれて、恋心を砕かれなきゃいけないんだ?ずっとずっといつバレるか分かんないからって、わざと連絡絶って、遠い大学行って……どうせこんな終わり方になるのに、なんであんなに苦しまなきゃいけなかったんだ?
…俺のこれまでって一体、何だったんだ……?
(……あぁ、駄目だ)
糸が、切れそう、だ。腹のな、かが。ぐるぐ、るして……哀し、?それとも、これ、は……
ぷつん、とどこかで軽い音がした。
「悪いかよ、好きで。なぁ……何が悪いんだよッ!」
テーブルを叩いて立ち上がった。弓弦が目を丸くして俺を見ている。ここであいつの言葉を聞かないのは悪手だし、店内で怒鳴るなんて迷惑だ。わかっている。わかっているのに声を止められない。腹の底から逆流してくる言葉が、止められない!
「お前達と何が違う!普通ってなんだ、気持ち悪いって何処がだ!俺はお前達を受け入れんのに、お前達は何で俺を受け入れてくれないんだよ!」
あぁ嫌だ!痛い!耐えられない!
言葉の棘が体の中をズタズタに裂いていく。その傷から流れるのは怒りではなく、黒黒とした哀しみ達だった。
だって全部思ってた事で。でもこんなこと言ったって何にもならなくて。言えなかった、言わなかった。だって、でも、だって、でも………。
「陽太郎、落ち着け!」
「っは、お前だってホントは気持ち悪いって思ってるんだろ。馬鹿みたいだって思ってるんだろ!?思い上がりも甚だしい、男で、冴えなくて、怒りもコントロールできない身の程知らずだってよ!」
「そんな事……陽太郎!」
「あぁぁうるさい!言うな!わかってんだよ!男だからってだけじゃないんだって!どうせお前と俺なんて……!
月とスッぺ ンなんだって!」
「…………」
「…………」
………噛んだ。
嘘だろ、おい。