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「ここが例の……。」
剣は口を開いて校舎を見つめる。歌留多達も剣の隣に立って校舎を見ている。
「だいぶ大人数な気がするけど……?」
月弥が来たメンバーを見ながら呟く。
「馬鹿言え。こんなんでも足りないぐらいだ。あの絵画、思ったより厄介だろうしな。」
歌留多が月弥に軽く突っ込みを入れ、校舎の中へと入っていく。
「どんだけ厄介な絵画なんだか……。」
月華も溜め息を吐いて歌留多を追った。全員が校舎に入り終え、歌留多は全員に振り返った。
「あの絵画は只者じゃねぇ。確実にな。美術室はこっちだ。」
薄暗い校舎を歩き回りながら、歌留多はアヤメとマキネについて話し始めた。
アヤメと出会ったのは俺が16、あいつが13の頃だ。当時の俺はどっちかといえば真面目で大人しい方だった。アヤメは今よりやんちゃしてて生意気だった。だけど絡んでいくうちにあいつと話すのが楽しくて仕方なかった。マキネと出会ったのはつい最近だった。あいつは家出をしてた最中らしくて、アヤメに絡まれたことがきっかけで話すようになった。いつも豪快で俺達は振り回されてばっかり。アヤメさえも少したじたじになるくらいには。そこが面白かった。だけどマキネは時折らしくない表情をしている。暗く、誰にも言えない秘密を抱えているようだった。
「………。」
全員が黙って聞いていた。歌留多も少し沈黙した後に口を開いた。
「マキネのやつ、まだ何も言ってねぇくせに勝手に取り込まれやがって。アヤメも散々生意気してたくせにあぁいうときだけ庇いやがって……。……だから絶対ぇ助けてぇんだ。」
「いいじゃん。硬い友情で結ばれてんね。」
ギルトが歌留多の肩に腕を回す。歌留多は抵抗もせずに「ん。」と照れ臭そうに返した。
「ここだな。美術室。」
歌留多が指をさして示す。全員がドアの前に立ち、息を飲んだ。
「か、絵画、いきなり襲ってきたりしないよな…?」
剣が不安そうに歌留多に言った。
「どうだろうな、とりあえず身構えとけ。」
「そんなヤバいんだ。」
バイトは興味がなさそうだが警戒した様子を見せた。
ガラ…
扉を開けて視界に入ったのは、一つのイーゼルだった。キャンバスが置かれている。キャンバスの正面の方へ行くと、その絵画は真っ黒に塗りつぶされていた。特に変だと思うところはない。ただ、おそろしいくらい不気味な雰囲気を出していた。
「うわ…なんか見ていたら不安になるような感じする……。」
剣が顔をしかめる。月華は同意するように頷いた。ギルトはまじまじと見つめ、バイトは少し離れた位置で絵画を睨み付けている。月弥は絵画に近付いてそっと触れた。
「おい何があるか分からねぇんだからあんま触んなよ…!!」
歌留多が止めに入った途端、絵画は剣達を引っ張った。
「うわぁ!?」
「チッ……余計なことしやがってッッ……!!」
「…さぁ、どうだろう、こうしないと始まらないよ。」
月弥はやけに冷静だった。アヤメ達を救い出す鍵を掴んだようだった。やがて全員絵画に取り込まれ、 美術室には静寂が訪れた。