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#stxxx
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「ねえ、私達、もう一緒にいるのやめよう」
明け方、酷く歪んだ、屈折した太陽を、君に例えたいといつか思っていた。
「えっ?」
私はいつの間にか、ずっと前から、あの時から、君から目が離せなくなって、一緒に並走していたつもりが、私しかいなくなっていた。
「なんで?あたし、…離れたくないよ」
つらつらとテンプレートを並べて、コスパよく安心感を与える方法を試す。こんな一大イベントなのに、喋る前の、綺麗な文章を組み立てる事があたしは出来た。
「暮らしが安定してきたし、私、迷惑しかかけてないし、私達、別の人生をまた作るべきだと思うんだ」
なんで?と問うと、そりゃあ、と返ってくる。
あたしは君が必要と言うと、他にもいるよ。と言われた。
小さく聞こえてくるテレビの音は、聞こえやすい高い声で笑っていた。人を離さないように、編集されていた。
ずっとずっとそんな会話をしていたら、眉に力を入れ喋り方を変えた。
「だってさっちゃん、汚いんだもん」
「汚さはえーちゃんと変わらないよ!」
「食べ方も汚いし」
「食べれたらいいじゃん!!」
「常識がない!!」
「えーちゃんもふつうじゃない!!」
「目的の為の犠牲に対する配慮もないし」
「仕方ないでしょ?!逃げるためだったもん!」
にげる、そう、私達は脱出したのだ。平和を手に入れるために私達は奴隷じゃなくなったのだ。
新しい生活を手に入れ、人と出会うために、命をかけてここから逃げ出してきたのだ。
「そーゆとこがさっちゃんのこと嫌いなとこ!」
「なっ」
「なんだと〜?!」
「もう知るもんか!あたしは助けてやんないからね!!」
「…別にいいしっ」
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「今日から貴方はここの家族ですよ」
捨てられた私を拾ってくれたのはこの場所だった。ここは大きな国のようだった。道路もあって、草木も私たちのものだった。私のような、生き場を失った人たちを積極的に受け入れているらしい。
そこは男女関係なくそこの皆が笑って迎えてくれて、私の唯一の場所を提供してくれた。
「手を合わせて、そう、深くお辞儀するの」
「ねえ、なんでこんな事するの?」
「それはですね、この儀式、〝モル〟をすることによって、我らの〝主〟に力を与え、いつかその力を譲り受けるのです」
「?よくわかんない」
「いずれ分かる日が来ます。このようなものは、突然に…必然的に…悟り開くものなのです」
「ふぅん……」
えーちゃんとはここで出会った。私より随分小さくて、年齢も私より下のようだった。
ここでは一人一人にグループがある。A、B、Cと3つに分けられていて、Aの人は普通の健常者。Bはそれより少し劣り、体力が少なかったり、信仰心が少ない人などが該当する。Cは最下層で、身体が極端に弱かったり、問題児だったり、精神病だったりするとここに入る。Cは、何を犯すか分からない為、言うなれば邪魔者だ。
「君、もうモルは終わってるよ?なんでまだやってるの?」
「…私はCグループだから…モルが足りないの」
グループを見分ける為に、私達はグループ別に違う色の服を着ている。Aなら赤、Bなら青、cなら紫。
「Cは悪いことでもしたの?」
「うん、身体が弱いことは罪だよ。前世に悪い事をしたから、身体が弱くなってるんだ。私がしてるのは、その償い」
「じゃあ私の前世はいい人なんだね!!Aグループだもん!!」
「うん、きっとそうなんだね」
「あたしには前世の記憶とかないけど、前世の行動をしたのが君なら、一体どんな事をやらかしたのかなぁ?」
「分からないよ。私も、現世の記憶しかない」
ーーーーーーーーーーーーー
テレビの音は、えーちゃんがいない分大きく聞こえた。もう安全な暮らしは、当然何もなくて、それが「平和」ということで、誰も傷つけないし、傷つける人もいない。本当に、いい生活を私達は手に入れたのだ。
「…寝てた…」
流れた汗を拭いつけっぱなしのテレビを消そうとリモコンに手を伸ばしたが、外から聞こえていた音に驚き、その手はすぐ下の机に落ちた。
外から聞こえたのは放送で、遠くの音まで遅れて今にやってくる。聞き取りづらくも、私は耳を澄ますしかなかった。
「…………今すぐ帰ってきてください。私達は何も悪い事をしません。家族全員が、貴方の帰宅を待っています。善行をするのです。あなたにとっての最適解を、導き出すのです。私達はすべての人間を向かい入れます。皆で一つになる方法を知っています。温もりを知っています。主をモルし続けたものは皆、最終的には全知全能になります。私達はいつも正義の味方です。私達には団結力があります。恐れる必要はありません。私達は誰も責めません。帰らない場合、悲惨な結末が待っています。時間はありません。今すぐ帰ってきてください。」
「さっちゃん…えーちゃん……」
「あんちゃん………?」
「私はあの時に逃げ出してしまったけど、今思うと気の迷いだったんだなって気づいたよ。ここは素晴らしいところだよ!私も生きてるし、まだ間に合うからさ!戻っておいでよ…!待ってるから
…、……、。………。。、………、……」
一瞬で、この放送が嘘だと思った。そう信じたかったから。この放送がいつ撮られたのかも分からない。録音をとって、その後にあんちゃんが殺されたのかもしれない。行かないほうがいい。行く必要がない。
…あれ、えーちゃんは?主を信じるえーちゃんは、この放送を聞いてどう思う?わからない。私は昔から人の気持ちを考えれない。いま急に考えろと頭が思っても出来るわけがない。
もう、なんて面倒くさいんだ。
ーーーーーーーーーーーーー
「なあ」
「ん?なあに?」
三つ葉のクローバーの冠を作っている最中、一人の女の子が話しかけてきた。外にはねた赤色のボブで、服は青色だった。きっと、Bグループの人だ。
「モルってなんでするんだ?」
「え、なんでって…」
「昔からしてたから……?」
「うーん、分からないよ。君はなんでその質問をしたの?」
「いや、幸せになることってあんのかなってさ」
「?どういう事?」
「どんなに金持ちでも、立場が上でも、皆それ以上を求める。それが人間の本能なんだ。」
「それを踏まえた上で、主の恩恵を受け入れた先って、何があんのかなってさ。」
「確かに、それは考えたことが無かったなー。」
「まぁ、別にいいんじゃない?あたし、そもそも恩恵なんて無いと思ってるし」
「おっ?!やっぱりな!!」
「おめぇなんでAグループになんかいんだよぉ〜」
「逆に君はなんでBグループなの?体力もありそうだし、Aじゃないの?」
「ふん、その通りウチは体力もあって、この通り役割分担では役に立ちすぎているくらいだ。」
「だが私にはな、信仰心が無いんだよ」
ツリ目の中にある瞳孔を下瞼である程度隠した彼女は、ゆらゆらと興奮気味に喋る。
「ウチは最近ここに入ったんだけどさ、ここ、やべーよ。」
「あたしが生まれたとこよりマシだとは思うけど」
「いーやそんなことはない。お前は不運なだけだ」
「強制的にこんなとこに入れられて、役割とか言って武器作ってんだぜ。」
「それだけじゃねぇ、誰がどれだけ頑張っても皆で分け合いっこすんならさ、サボった奴のほうが得するじゃん。」
「うわ、その考えはなかった。君はセコイね」
「頭がいいと言ってくれたまえ!」
「うん。セコイね」
「おいおい〜」
「…で、モルを馬鹿にしてたらBグループになったってワケ。」
「頭がいいのか悪いのかどっちかにしなよ〜…」
「ばっかお前そんときゃまだ来てばっかだったんだよ」
「ほなしゃーないかー」
「うんうん、そんでこっからが本題なんだけどさ」
きょろりと一周、見回してから影をつけてこちらに近づいて囁く。
「こっから出る方法知らね?」
…なぁんだ。思ったよりしょうもない
「あそこの門から出れば?」
「アホかテメーそんなことしたら一瞬でコール行きだぞ」
私達は主の加護を受けるために最後、やらなければいけないことがある。それが〝コール〟だ。現実の実体を無くすことで、その人は主の元へ行きより力を与え、主が力を増して私達に平和をもたらしてくれる。毎月、誰かしらが選ばれ、主の元へ行く。
「ここから出れるじゃんよかったね!」
「範囲が小さ過ぎるんだわお前最高に性格悪いな」
「ん、でもなんでここから出たらコールに選ばれるの?」
「あー、お前、コールに選ばれる人ってどんな奴か知らねーのか」
「どんな人なの?」
「一つはランダムだ。AでもBでもCでも、誰でもコールに抜擢される。信仰心が濃いかろうがどうでもいい。あぁ、だがグループを仕切ったりするおえらいさんは基本的には選ばれないな。仕切る人ってのは大事なもんだからさ。」
「そして二つ目は、反逆者だ。」
「チームってのは団結力が必要なんだ。そこに内通者とか、スパイとか、裏切り者がいては国の崩壊もあり得る。」
「勿論ホラ吹きとか外の情報を教えたりするのも選ばれる。チームに不信感を抱かせないためにも、原因は早く始末しなければいけない。」
「なるほど、君はもうすでにコール対象なんだね」
「あぁ。だからいち早くここからでたいんだ。」
「えーどうしよっかなーー」
「なんだよ…なんかあんなら言えよ」
「しゃーないなー…畑のとこあんじゃん」
「おう。Aグループがいつも担当してるとこだよな」
「あそこ、実は抜け穴があるんだよね」
「ないすすぎる…!ん?!でも近くに門があるじゃねーか!」
「うん。でもね。そこを通れば…」
「……と言ってもすぐにバレるので隙を狙って門からでたほうがいいかな」
「なんなんだよ無駄じゃねーかこの時間!!」
でも本当だよ。と、私は悪意を込めて笑った。
「……そろそろ時間か…また話そう。」
「うん。楽しみにしてるよ〜」
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