テラーノベル
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2話
新しい名前
初めて間近で見る人間。
怖い。
身体が強張る。
それでも――聞かなければならないことがある。
ぼくは意を決して、人間に尋ねた。
「……サユリちゃんは?」
「どれのことだ?」
「一緒にいた……タコ」
「ああ」
人間は少し考えるようにぼくを見る。
「あれなら、改造手術自体は成功した」
「……!」
よかった。
「でもな、新しい自分を受け入れられなかったみたいでな」
「……?」
「精神錯乱だ」
「精神……錯乱?」
「あー……コワレタ」
「……コワレタ?」
その言葉の意味が分からない。
聞き方を変える。
「……生きてる?」
「生きてる」
「……!」
よかった。
生きてる。
それだけで、少しだけ安心した。
「オタマロは?」
「オタマロ?」
人間は首を傾げた。
「ああ。オタマジャクシのほうか?」
「うん」
「そこ。おまえさんと一緒にいるだろ」
「……え?」
意味が分からない。
ぼくが首を傾げると、人間は笑いながら、ぼくの身体を指差した。
「おまえさんの頭と背中。あと……耳? についてるヒレ」
「……?」
「それが、おまえさんの言うオタマロとかいうやつだ」
「……え?」
信じられなかった。
ぼくは慌てて鏡の前へ向かう。
そして、自分の身体に触れる。
頭。
背中。
耳のような場所についているヒレ。
「……オタマロ?」
人間は、ぼくが何も聞かなくても答えてくれた。
「おまえさん自身のだけじゃ、ヒレが足りなくてな。不格好だったんだ」
「……」
「だから、オタマロを食わせた」
「……!」
「そしたら、うまい具合に生えてくれてな。よかったよ」
鏡の中の自分を見る。
頭にあるヒレ。
背中にあるヒレ。
耳のような場所についているヒレ。
確かに――。
オタマロがいる。
「……」
悲しい。
でも――。
<良かった。オタマロ死んじゃったけど、ぼくとずっと一緒なんだ。一人じゃないんだ>
ぼくは、そう思った。
「それでな」
人間が口を開く。
「サユリを助けるためには、金が必要だ」
「……お金?」
「そうだ」
サユリを助ける。
そのために、お金が必要。
「……サユリちゃんを助けるためなら、なんでもする」
迷わず答えた。
人間は、そんなぼくを見て言った。
「そうか」
そして――。
「おまえさん、名前は?」
「……名前?」
「ないのか?」
ぼくは首を横に振る。
「じゃあ――ハンギョドン」
「……ハンギョドン?」
「今日から、おまえさんはハンギョドンだ」
初めて、自分の名前をもらった。
「ハンギョドン……」
「ある施設で働いてもらう。そこへ連れていくから、ついてこい」
「……うん」
ぼくは人間の後をついていく。
そして、もう一度だけ振り返った。
鏡の中に映る、自分の姿。
「待ってて、サユリちゃん」
必ず――。
「ぼくが、たすけるから」
コメント
1件
**第2話、読んだよ。** ハンギョドン、名前もらったんだね…。最初はオタマロのこと、悲しかったけど「一人じゃない」って思えたところ、じんときた。サユリちゃん助けるために、施設で働く覚悟決めたのも、すごく彼らしいなって思った。ダークな世界観なのに、優しさがあって、これからどうなるか気になる。次も楽しみにしてる🔥