『繫縛の楔』〜私はこの檻から逃げられない〜
第9鎖 『美しい貴女に愛の抱擁を』
コンコンッ。
『失礼します。主様。』
『……ぁ、ぅ…っ。』
(頭が痛い。ルカスに飲まされた薬のせいで上手く喋れない。というかなんで私…。)
『混乱しているようですね。無理もないです。ルカスさんが飲ませた薬は思考回路を乱れさせるものですから。』
『ナック…。どうして私はここに…? 』
『可哀想な主様。忘れてしまったんですね。貴方は我々執事の心を乱す存在なんですよ。貴方が他の人と話していると心がとても痛む…。だからもう他の人の目につかないように閉じ込めているんですよ。』
『私が心を乱す存在…。』
『えぇ。だからここにいれば何も怖いことはありませんから。』
ギュッ…。
『っ……。』
私は主様を抱きしめる。
『ふふ。どこにも行かせませんよ。貴方はずっとここにいればいいんです。私と、ずっと……。』
『……。』
と、その時――。
『私とじゃなくて、僕とだから!』
ラムリが部屋に入ってくる。
『ラムリ…。邪魔をしないでくれますか?今は私と主様の時間なんですから。』
『はぁ?そんなの誰が決めたわけ?主様は僕と過ごしたいですよね?』
『いいえ、私ですよね?』
『…。』
解らない。なんて答えればいいの?私はみんなの心を乱すからここから出られないの…?
それならもう…。
『…私は2人と過ごしたい。ダメかな。』
『『!』』
『『ダメなわけないです。\ございませんよ。』』
2人の手が私に伸び、優しく愛撫する。
私は身を任せる。
『ん…。可愛いです。僕の主様――。』
『もっと私に見せてくれませんか?主様――。』
私は2人のしたいことに付き合った。全て忘れてしまえば幸せなこともあると、身体に言い聞かせた。
『寝ちゃった…。』
『少しやりすぎましたね。でも寝顔も美しいですね。』
『うん。ルカス様のおかげで主様はもうここから逃げないしずっと一緒に居られるんだね。』
『えぇ。我が同室の執事ながら恐ろしいです。主様に催眠鎮静剤を飲ませるなんて。』
数時間前、3階執事部屋――
『催眠鎮静剤…。普通に飲めばちゃんと作用するけど、多量摂取させてれば、副作用で悪夢、意識レベルの低下、興奮、錯乱、幻覚、夢遊症状、攻撃性、せん妄、異常行動などの精神症状や意識障害が挙げられる。まぁ、その場しのぎだけど。自分がここから逃げ出さない。と意識させることが大事なんだ。そしたら私達から逃げることはないよ。…思い出したその時はまた無理矢理に飲ませればいい。』
『私でもゾクッとしてしまいましたよ。薬が切れるのも時間の問題かもしれませんがね。』
『まぁ、その時はその時でルカス様が何とかしてくれるよ。』
『すぅ、すぅ…。』
暖かい…。ずっとここに居たい。
というかなんで私はここから逃げ出そうなんて考えたんだろう。――まぁ、いっか。
記憶は閉じたまま、その方が幸せなのかなんて、本人にしか分からない。
次回
第10鎖 『夢の中で告げられたこと』
コメント
2件
ふふ、お楽しみにね♡
うわぁーラムリ出てきた!ありがとうございます😭次はどうなるんだろう地下組かな?