この世界には、”能力”というものが存在している。
能力専門の学校は多数あるが、ある一つの学園は少し特別だった。
“推薦”だけで選ばれる。ある日学園から手紙が来て、その学園に入学出来る。
選ばれる確率はごく僅か。文字通り最強と呼ばれるほどの能力者たちが集まる学園。
そんな”おどみん学園”の校門におどろくは立っていた。
「ここが…今日からおどろくが住む所…」
いい忘れてたけど、この学園に入学したら寮に住むことになる。卒業まで。
…でも卒業の難易度が高すぎなのだ…
「…おい!」
ん?
おどろくが建物を見上げていると、後ろから誰かに話しかけられた。
「お前、なんでぼーっと突っ立ってるんだよ!」
う…めんどくさい人に絡まれたのだ。
…よし、無視しよう。
おどろくは無視して歩き出す。
「…チッ!〈能力発動:ハンマー〉」
その人は怒っておどろくに向かって能力を使った。
周りから悲鳴が上がった気がする。
「…〈能力発動:ウルフ〉」
おどろくはそいつの後ろに素早く回り込んで、蹴りを入れる。
「がっ…!?」
そいつは気絶して倒れ込んだ。
…あ、つい少し本気で蹴っちゃったのだ。
…周りからの視線が凄いのだ。こんなときは逃げるのだ!
おどろくは急いでその場から走り去った。
「………はあ〜…」
入学式が終わって、教室に入ったおどろくは息を吐いて席に座る。
おどろくの能力、つよつよだけど使うと物凄く疲れちゃうのだ…
「…ねーねーちょっと。」
「…?はい」
机に突っ伏して寝ようとしたときに、誰かに話しかけられた。
「君ってさ、さっき校門前でなんか不良っぽいのぶん殴ってたよね?あれ凄かった!」
「あー…で、できればこの話は大事には…」
「あー多分無理、だって結構な人が見てたと思うよ。」
「そ、そんなー…」
目立たないようにするおどろくの計画が…
「あ、忘れてた。私の名前はべる、よろしくね。」
べるさん…どこかで聞いたことあるような。
「えっと、おどろくなのだ。よろしくなのだ。」
「なになになんか面白い話してた?」
「あ、ななっし〜。」
ななっし〜さん…あ!思い出したのだ!
二人とも、能力者たちが戦う大会でいつも上位にいる人たちなのだ。
…さ、さすがおどみん学園。つよつよな人たちがたくさんいるのだ。
「えっと…おどろくなのだ。よろしくなのだ。」
「あーあの不良をボコしたって噂の!」
もう噂になってるのだ!?
「そうそう、そのことでちょっと話してたんだよ。」
「あーなるほど…そういえばさ、今度学園大会があったよね?」
「学園大会?」
おどろくは首を傾げる。
「学園大会っていうのは学園内で開かれる大会のこと、優勝者と上位者は生徒会に入れるんだって。」
「へー…」
何も知らないおどろくにべるさんが説明してくれる。
「…それでさ、おどろくさんその大会で活躍しそうなんだよね。」
「…え?」
「あー確かに!」
「いやいや、おどろく別に優勝とか生徒会に興味無いし!」
「でも大会には生徒は全員強制参加だよ。」
完全に終わった…おどろくの平和でほのぼのとした学園生活が…
…でも、頑張るしかないか。
………ウルお姉ちゃんと、あんな約束しちゃったし…