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「偶然と不意打ち」

うつむく私と、こちらを見ない 紀坂(きさか)の間に、長い沈黙が流れた。

やがて向かいの気配が動き、顔を上げれば、彼がイスから立ち上がるところだった。

「じゃあ」

抑揚のない声を置いて彼が去った後、呆然としながら視線を前に戻す。

目の前には泡の消えたビールや、一口も食べなかったサラダ、手つかずの出し巻き玉子や唐揚げがあって、それを眺めながら強い喪失感に襲われた。

紀坂の反応は当然だ。

失望されると予想していたし、実際そうなっただけなのに、ここまで苦しい自分のほうが予想外で―――。

(……いつの間にか、気づかないうちに、あの人の存在が大きなものになっていたんだな)

結局、紀坂が私を気にしていた理由はわからない。

でもノリとか遊びというふうな感じではなかったし、なにより私の本質を見抜いて、変わることを願っているのが彼だった。

私が今いる場所は―――守******

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