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熊蟄穴
僕はこの匂いが好きだった。秋と冬の間の匂い。それでいてかつそこそこ寒くて人肌恋しくなる、僕を含めた全ての日本人が1番人間くさくなるこの時期。
そんな日は君に会いたくなる。君の居なくなった12月12日。
この匂いに包まれながら、人によっては微妙って感じるこんな日を君とただ歩いていたい。それだけでいい。たったそれだけが何故か叶わない。君の瞳も声も顔も匂いも話し方も、笑顔もそのどれもが本当に好きだった。でもそれを感じとる術はもうない。
君はすぐ近くにいるって分かるのに、何故か感じ取れない。もちろん理解している、どう頑張っても2度と僕の願いは叶わないということは。それでも願わなければ。望まなければ。そんなおもいが僕を縛り付ける。
僕のそれが神にでも通じたのか、あるいは分からないけれど12月12日の宵の口から夜明けの間だけは君の姿が見えるようになった。
僕が見ている君の姿は正座でいつも泣いている。どうして泣いているの?いつも問いかけるけど、答えはもちろんない。僕らは悲恋なんかじゃないんだよ。もちろん僕の言葉が届くことはなかった。
それでも今日も、この時間だけは全力で君に恋をする。
2022/12/12