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ゆゆゆゆ
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ゆゆゆゆ
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翌日。
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古びたデリバリーカーは荒れた高速道路を走っていた。
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運転席にはピザガイ。
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助手席にはGuest。
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後部座席にはシャーロットとエリオット。
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エンジン音だけが響く。
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誰もあまり喋らない。
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昨日見つけたノートが。
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全員の頭から離れなかった。
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シャーロットは膝の上にそれを置いている。
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ボロボロの表紙。
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角は擦り切れ。
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何度も開かれた跡があった。
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「読んでみる?」
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エリオットが聞く。
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シャーロットは少し迷った。
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そして頷く。
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「うん」
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ノートを開く。
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最初のページ。
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そこには綺麗な字で書かれていた。
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シャーロットの好きなもの
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・チーズたっぷりマカロニ
・オレンジジュース
・いちごジャム
・甘い卵焼き
・マッシュポテト
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シャーロットが固まる。
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「……全部好き」
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「当たり前だろ」
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Guestが小さく笑う。
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「母親なんだから」
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シャーロットは黙る。
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ページをめくる。
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そこには。
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『嫌いな野菜を細かく刻んで混ぜる』
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『気付かず食べる』
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『勝利』
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エリオットが吹き出す。
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「デイジーさん面白い」
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「騙された」
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シャーロットが真顔で言う。
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「最低だ」
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「愛情だよ」
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「詐欺だ」
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少しだけ。
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車内に笑い声が戻る。
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さらにページをめくる。
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今度は。
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Guest用
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だった。
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Guestが露骨に嫌そうな顔をする。
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「読むのか?」
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「読む」
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シャーロット即答。
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『Guestは野菜を食べない』
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「食べろよ」
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エリオット。
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「うるさい」
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Guest。
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『無理やり混ぜても気付く』
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『異常な嗅覚』
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シャーロットが笑う。
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Guestが顔を覆う。
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『肉料理なら機嫌がいい』
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『コーヒー中毒』
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『寝不足』
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『心配』
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そこで。
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Guestの表情が止まる。
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『もっと自分を大事にしてほしい』
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短い一文。
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それだけだった。
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だが。
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誰も何も言わなかった。
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Guestだけが窓の外を見る。
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表情は見えない。
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しばらくして。
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シャーロットがページをめくる。
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すると。
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エリオットが首を傾げた。
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「ん?」
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そこには。
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料理メモ。
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ピザの絵。
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焼き時間。
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材料。
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そしてタイトル。
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Builder Brother’s Pizza風
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車内が静かになる。
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エリオットの手が止まる。
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「え」
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もう一度見る。
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間違いない。
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Builder Brother’s Pizza。
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自分たちの店。
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世界が終わる前。
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働いていた場所。
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『シャーロットが好きだったピザ』
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『エリオットさんの笑顔が素敵だったので教えてもらった』
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エリオットが固まる。
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『ピザガイさんは怖そうだったけど優しかった』
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後ろから。
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「誰が怖そうだ」
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運転席から声が飛ぶ。
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「書いてある」
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シャーロット即答。
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『二人とも娘によくしてくれた』
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『もしまた食べられる日が来たら』
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『家族みんなで食べたい』
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そこで。
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エリオットが黙る。
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ノートを見つめる。
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文字が滲む。
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視界も滲む。
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「……エリオット?」
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シャーロットが見る。
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エリオットは慌てて目を擦る。
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「なんでもない」
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「泣いてる」
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「泣いてない」
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泣いていた。
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完全に。
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「だってさ」
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エリオットは笑う。
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少し震えながら。
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「覚えててくれたんだなって」
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世界が終わった。
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店も消えた。
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常連客もいなくなった。
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もう誰も覚えていないと思っていた。
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けれど。
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違った。
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デイジーは覚えていた。
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家族の思い出として。
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一枚のレシピとして。
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ノートの中に残していた。
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「絶対作ろう」
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エリオットが言う。
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涙を拭きながら。
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「このピザ」
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シャーロットが頷く。
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Guestも小さく頷く。
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運転席のピザガイも。
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何も言わないまま。
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ほんの少しだけ口元を緩めた。
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いつか。
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デイジーを見つけたら。
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このレシピで。
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みんなで食べる。
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そんな小さな約束を胸に。
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車は北へ走り続けた。