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魔界城・謁見の間。
重厚な扉の向こうで、
魔界と人間界の代表が向かい合っていた。
魔王。
王子ノエル・クラーク。
勇者アルト・ヴォイド。
そして、それぞれの側近たち。
場の空気は、張りつめている。
「本日の議題は――」
人間側の使者が口を開いた、その時。
「ぱぱ!」
小さな声が、場の空気を一変させた。
とて、とて。
白いドレスの少女が、扉の隙間から顔を出す。
「……?」
ノエルとアルトの視線が、一斉に止まった。
――また、だ。
(前より……)
ノエルは、息をのむ。
(……綺麗になってる)
たった数日のはずなのに。
それなのに、確かに。
「セラフィナ」
魔王は、ため息混じりに言った。
「今日は、大事な話をしている」
「おはなし?」
「そうだ」
セラフィナは、きょろきょろと周囲を見回し――
そして、人間側を見つけた。
「あ……」
「このまえの、ひと」
その一言で。
ノエルとアルトの心臓が、同時に跳ねた。
「……また、あえた」
にこっと笑う。
それだけで。
「……っ」
アルトは、思わず視線を逸らした。
(まずい……)
ノエルは、指先に力が入る。
(分かってるのに……)
「ぱぱ」
セラフィナは、魔王の外套を引いた。
「このひとたち、なあに?」
「人間界の者たちだ」
「ふぅん……」
セラフィナは、少し考えてから言った。
「……おともだち?」
その瞬間。
協定の場は、完全に崩れた。
騎士たちの動揺。
側近たちの硬直。
そして――
「……はい」
ノエルが、無意識に答えていた。
「……っ!」
自分で言ってから、はっとする。
魔王の視線が、ゆっくりと向いた。
「ほう」
低く、底知れない声。
「友と、名乗るか」
ノエルは、背筋を正す。
「恐れ多いことですが……」
「そうなれたら、と」
アルトは、拳を握りしめながら言った。
「……俺も」
「守るって、決めました」
その言葉に、クロウ・フェルゼンの気配が変わる。
一歩、前へ。
剣に触れる――寸前。
「クロウ」
魔王が、短く制した。
「下がれ」
「……御意」
だが、その視線は人間たちから離れない。
魔王は、セラフィナを抱き上げる。
「セラフィナ」
「なあに?」
「お前がここにいるのは、
世界を守るためだ」
「せかい?」
「そうだ」
セラフィナは、よく分からないまま、
人間たちを見下ろした。
「……じゃあ」
小さな声で、言う。
「なかよく、するの?」
沈黙。
そして――
魔王は、ゆっくりと笑った。
「……あぁ」
「それが、今日結ぶ協定だ」
その瞬間。
魔界と人間界の代表たちは理解する。
この協定は、
文書ではなく。
一人の姫に、心を奪われた瞬間に成立した
ということを。
そして。
ノエル・クラークと、
アルト・ヴォイド。
二人の少年は、同時に悟った。
――もう、戻れない。
この小さな姫から、
目を逸らすことなど、できないのだと。