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おばちゃんのおはぎ食べれてよかった😭嬉しいね〜嬉しいよ〜😭きな粉で真ん中に小豆!食べた事ない。絶対のやつ〜🤤 チヂミのタレも!リョウちゃんの苦手のコチジャン入れる!チヂミの粉絶対買う!!! あ、先生からのご提案の話もしなきゃねΨ(*´༥`*)モグモグ
「いい男だねぇ、すごく若く見えたけど」
「同級生で…家も向かいの幼なじみなんです」
「それで三岡も安心してたわけだ。良子ちゃんをとてもよく理解してくれているんだね」
「…はい」
颯ちゃんを誉められて照れる私に、北川先生は思いがけない提案をした。
「週に1、2日出勤であとは在宅ワークにしてもいいよ。うちの事務所の電話はすでに各弁護士に渡しているスマホでもブースにいるのと同じように応答できるし、どこにいても内線が繋げるシステムを導入している。事務員さんも希望があれば仕事用のスマホを支給して自宅でもデスクにいるのと同じように電話応対はしてもらえるんだ。ただ事務所に来ないとどうしても見られない資料とかはあるよね?ここにあるのは個人情報の塊だから。その点を考慮すると在宅だけでは無理なんだけどね」
北川先生には、それも含めて彼と相談すると伝え面談を終えた。
「ただいま」
「おかえり、リョウ。お疲れ」
「颯ちゃん、何時に来たの?」
「1時間くらい前に着いた」
誰もいない部屋に帰ることが続いて、1年以上になる。
おかえりと言ってくれる人のいる部屋のあたたかさは‘暖かく’‘温かい’
「チヂミって言ってたから肉入りにしようと思って、豚バラ買ってきた」
「ありがとう、楽しみ」
手を洗い着替えて、もうフライパンでチヂミを焼き始めている颯ちゃんの隣に立つとチュッと唇が重なり顔が火照る。
チヂミを焼くのは颯ちゃんに任せて、私は簡単にたれを作ることにした。
「それだけ?」
「うん、出来たの食べてみる?」
すでに焼き上げたチヂミを切っていた颯ちゃんは、一切れをたれにつけるとパクっと口に入れた。
「うまっ」
ぽん酢にごま油と刻みネギ、ゴマを加えただけのたれが美味しいのだ。
「コチュジャンを入れてもいいらしいけど、私辛いの苦手だから」
「これで十分」
「あと何作ろうか?」
私が冷蔵庫を開けると
「リョウ、テーブルの上、見て」
フライパンに向かったまま颯ちゃんが言う。
テーブルを見ると紙袋が置かれているので中身を出して……
……一気に胸と瞼が熱くなり涙が溢れた。
聞かなくてもわかる。
小さな頃から毎年2回ほど食べる、おばちゃんのおはぎだ。
家を出て以来、声さえ聞いていないおばちゃんの顔と声、最後にもらい食べられなかったおはぎが頭と胸とに渦巻く。
最後と同じように、私の好きなきな粉のおはぎが多めに入れてある。
おばちゃんの炊いた小豆は甘さ控えめで美味しいんだけど、真ん中にその小豆が入り周りがきな粉というのが絶品なんだ。
「…ぉばちゃ…ん…嬉しい……」
「もう食っていいぞ」
明るい颯ちゃんの声に、その場にお尻をペタッと下ろすと、手でおはぎを掴む。
そして大きく口を開けると半分ほど一気にかじった。
きな粉と小豆と米に混じり涙の味がする。
寝そべるように手を伸ばしてティッシュを取ると、くしゃくしゃと涙を拭いてもう一口頬張った。
「美味しい…すごく美味しい……」
指に残るもう一口を口に入れると、モグモグしながら小豆に包まれたおはぎを手に取った。
「今夜のリョウのメインディッシュは、おはぎか?」
うちにある中で一番大きなお皿いっぱいにチヂミを乗せてきた颯ちゃんが、私の目元を親指で拭う。
「チヂミはデザート」
「俺とは逆だな。たくさん食えよ」
そう言い彼はお箸や取り皿を持ってくる。
私が何もせずにおはぎの前に座ってしまったから。
「嬉しい…美味しい……」
「良かったな、リョウ」
お箸を片手に、反対の手で私の頭を撫でる颯ちゃんの声は安堵を含むようだった。
食べられるかどうか……心配していたのかもしれない。