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「気絶したワームドをクッション替わりにして落下とか殺す気か!」
青色のツルツル肌を全身に感じながらバックは叫んでいた。
今まさに降下中の彼の顔は風圧であわれもない形に変形している。
「ええ!むしろ好機だったんじゃない?この世界に文字通りドボンした直後にぶつかるなんてさ!これで着地も楽だよ」
ワームドの頭に胡坐状態で乗るセイののほほんとした声が空に消えていく。
「どこが楽なんだよ!意味わからん!おい、不気味系チンピラカード使いも何とか言えよ」
隣でしがみついてるはずのモブ仲間に視線を移せば、不気味系チンピラカード使いは白目をむいていた。
「気絶してる…グヘッ!」
まるでスライムが落下したような気持ち悪い音とともに無事陸地に到着した事にバックはホッとした。
クッション替わりとなったワームドはもはや形をとどめていない。
この場合、主人公力はたまるのかという問題が頭をよぎるがすぐに消え去った。
今さっき、空中浮遊を楽しんだワームドの他にピンピンと活動している別個体を見つけたからだ。
そして、この世界の70%が消失しているようだ。
「気持ち悪い…うぐっ!」
不気味系チンピラカード使いはフラフラと意識を取り戻したとはいえ、まだ視界が定まっていないようだ。
「吐くなら向こうでやれよ」
バックはねぎらうつもりで話す。
だが、自分達を見つめる冷たい視線を背中に感じ、思わず振り返る。
そこには疲れた様子の赤毛の女性の姿があった。
見た目はバックより少し幼い。
だが、彼女の瞳は、“何?この冴えない連中!とでも言っていそうなほど鋭い。
「初めまして。お嬢さん!」
セイはナンパ上等とばかり少女に手を差し出した。
「アンタみたいなヒョロヒョ趣味じゃないのよ!」
少女はセイを乱暴に払いのけた。
おおッ!めっちゃ気が強い。
バックは謎に感動していた。
「あれを退治すればいいんだな。いでよ。我が召喚獣!」
一方、不気味系チンピラカード使いは闘志に満ちていた。
バックは彼とノリが合わないと思った。
「おいおい、後先考えずに…大丈夫なのか?」
召喚効果とばかりにまばゆい光と共に現れたのはやはり猫だった。
とても毛並みが綺麗だ。
ガルルルッ!
「ニャアッ!」
召喚猫はワームドの雄たけびに、震えている。
そして、姿を消した。
「速攻でやられた!」
不気味系チンピラカード使いは頭を抱えていた。
「だからいわんこっちゃない」
チンピラカード使いはショックのあまり動けずにいる様子だ。
ガガッガッ!
「うわッ!」
ワームドの耳を裂くような鳴き声が全身を駆け巡る。
その鳴き声と同時に妙な光線が出ているような錯覚にすら陥る。
「謎の熱風?というか衝撃のせいで近づけねえよ!」
バックは耳を押さえつつ叫んだ。
「チュチュン!」
毎度のように頭の上に重みを感じるバック。
どう考えてもファンの体重だ。
ファンはバックの頭の上で飛び跳ねた。
「そういうのは人の頭の上でしないでくれるか?」
バックの願いもむなしくセイ達の関心は未だ仁王立ちの末、こちらを凝視している少女に向いた。
「なっ!何よ!」
少女は困惑の表情を浮かべていた。
「OKファン。そういうことだね」
セイは親指を立てて承諾のポーズをする。
「チュイン!」
「ちょっと説明もなし!」
少女の怒りの声はチュインの謎の発掘力によってかき消される。
なんか、モブへの扱いが雑になってきてねえか?
モブに雑とかないけどさあ…。
もうちょっと何とかならねえのか?
誰も聞いてねえけど…。
「さあ、君の新たな力を見せるんだ!」
「ちょっと、前に引っ張り出さないでよ!」
ギュルッ!
「キャアッ!こっち来ないで!」
少女は無意識のうちに渾身のパンチを繰り出した。
彼女のか弱い腕と同時にワームドの鳴き攻撃がぶつかった。