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僕は星が大好きだ、暗い中でも必死に光り続けている星たちが大好きで、綺麗で仕方なかった。
僕も星みたいにどんなに暗くても光続けたいと思っていた。
いつからだろう、うまく、笑えなくなったのは。
君にもう一度会えるのなら、これ以上何も望まない。
九月に入ったとはいえ、夏の名残で空気は生ぬるい。暖かな風がふわふわした栗毛を撫でるように吹き抜ける。真新しい制服も、合い服では暑すぎるように感じた。
もしもこの気温で学校まで走ったなら、きっと汗だくになってしまう。腕時計を見て、悩みながら一条星(いちじょうせい)は歩く速度を早めた。転校初日に汗だくで挨拶するのは避けたいが、遅刻するのはもっと避けたい。今日は初めての登校日なのだから多少の遅刻は大目に見てもらえないだろうか。そんな打算的な考えを頭に浮かべながら、星は通学路を早歩きした。
初めて着る制服。ネクタイを結うのにこんなに苦戦するなんて、昨夜の星は思いもしなかったのだ。
「間に合うかな、遅刻したら母さんに絶対怒られる……」
今朝、星は「学校まで車で送ってあげる」という母の申し出を断った。久しぶりの景色を見ながら、ゆっくり歩きたかったのだ。
通学路の河道は桜並木がずっと遠くまで続いている。夏の間に茂った青い葉が木影をを作ってくれているのがありがたい。春になれば桜が花をつけて、河道は一面桜色になる。
そんなこの町に高校二年の秋、星は六年ぶりに帰ってきた。小学五年の頃に引っ越して以来、ずっと都会で暮らしていた。けれど、わけあってこの秋から故郷のこの町に帰ってくることになった。
引っ越しに伴い、今日から新しい高校に転校する。
川面に映る制服の自分は、他人のようで星は不思議な気分になる。新しい制服はまだ見慣れない。星は緊張して、大きく息を吐く。
「はぁ……どうしよう、会えるかな。」
帰り道にすれ違うかも。廊下で出くわすかも。もしかしたら同じクラスかもしれない。
彼女に会えたら、なんて声をかけようかな。
星は新しい学校のことより、そればかり考えていた。