テラーノベル
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その国は、常に清冽な風が吹き抜けていた。
明治の日本を思わせる重厚な洋館と、唐の時代の息吹を感じさせる極彩色の彫刻。二つの文化が溶け合う王都の中央で、若井滉斗と大森元貴は、世界に二人きりであるかのように過ごしていた。
王邸の最上階にある元貴の部屋は、二人の聖域だった。
「ひろぱ、見て。今日はこの花を咲かせてみたんだ」
元貴が小さな手のひらをかざすと、術式の光が淡く弾け、机の上に置かれた一輪の椿が、季節外れの蕾を震わせた。
「……綺麗だ。元貴の術は、いつも優しいな」
滉斗は、幼いながらも鋭さを秘めた瞳を細め、元貴の頭をそっと撫でた。
剣士一家の長男として、物心ついた時から氷のように冷たい真剣を握らされてきた滉斗にとって、元貴の周りに漂う温かな空気だけが唯一の救いだった。
「ねえ、約束だよ。僕たちが大きくなったら、ずっと一緒にいよう。……結婚しようね」
無邪気な元貴の言葉に、滉斗は一瞬だけ驚いたような顔を見せ、すぐに彼だけにしか見せない柔らかな笑みを浮かべた。
「ああ。俺がもっと強くなって、お前を一生守るから」
その時二人が信じていた未来は、琥珀の中に閉じ込められた宝石のように、永遠に変わらないはずのものだった。
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