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十歳を過ぎた頃から、二人の間の空気は少しずつ、だが確実に変わり始めた。
「……また、攻撃術が使えなかったのか」
王邸の廊下で囁かれる家臣たちの冷ややかな声が、元貴の背中を刺す。次期国王として期待される彼だったが、その術式は癒やしや植物を操る補助的なものに特化し、敵を討つ力は皆無だった。
一方、滉斗は「若井家史上、最も冷酷で美しい」と称されるほどの氷剣術を完成させつつあった。彼が剣を振れば、真夏の空気さえも凍りつき、周囲には近寄り難い威圧感が漂うようになる。
「元貴、顔色が悪い。……無理をしていないか?」
数少ない密会の折、滉斗は元貴の手を握る。しかし、かつては温かかったその手は、今や冬の夜のように冷え切っていた。
「大丈夫だよ、ひろぱ。僕は次期国王だから。強くならなきゃいけないんだ」
無理に作った元貴の笑顔が、滉斗の胸を締め付ける。家臣たちは、力の差が開きすぎた二人を会わせることを拒むようになった。「剣は王の盾であれ、友である必要はない」という無言の圧力。
地位、才能、そして周囲の期待。
それらが巨大な壁となり、二人の間を隔てていった。