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〈ストーリー〉


ここはある時代のある場所、とある街。

乱れに乱れている世の片隅。

1人の少年がいた。

彼は走っていた。今しがた盗んだパンを抱いて。

その理由は「生きるため」。大人達のような私利私欲にまみれた汚らしい動機ではない。

罪を犯しながらも、その純粋な心は穢れていないのだ。

パン屋の太った店員が追いかけてくるが、風のように走り抜ける少年には追いつけるはずもない。

もうこんなことは嫌だ、と彼は走りながら思った。空腹を満たすためだけに、また一つ罪を重ねる。

天国でも地獄でも、ここよりマシなら行きたいものだ。

いつかこの街に来ていたペテン師みたいな奴が言っていた。「人は皆平等」などと。

そんなもの、自分が生きる世界には関係ない、そう思っていた。


パンを抱いて逃げる途中、反対方向からやって来た行列に出くわした。

その中にいる美しい少女に目を奪われ、立ち止まる。

きっと遠い街から、金持ちの家に売られてきたのだろう。

寂しげにうつむく少女の目には、涙が光っている。

青い瞳に、水色の雫。

悲しいはずなのに、綺麗だった。

それを見て、どうしようもない感情が込み上げてきた。それがどういうものなのか、彼自身にもわからない。

やっぱり、平等なんてこの世にはないんだ。

もし神様がいて、そういった類いのものを司っているのなら、僕らはたぶん見放されている。

少年に世界を変える力はなく、少女には未来を考える思想は与えられない。

なぜ、僕らだけ愛してくれないのか。

少女がむりやり家に押しこまれていくのを見とどけたあと、振り切るようにまた走り出す。

まだ小さな少年が口にするには早すぎる、世の中への不満を大声で叫びながら。


続く

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