テラーノベル
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──────みぞれさん視点──────
「…ッ!瞬間移動、ですか。」
神界で、全員が合流した瞬間、ピエロのような見た目をした神が指を大きく鳴らしたあと、私の視界は瞬時に違う情報を伝える。空の模様が違い、地面の質感が違う。───瞬間移動だということが分かる。あの奇妙なピエロは瞬間移動を司っている…それならばあまりにもピンポイントすぎる。ならば他のものを司っている可能性が高い。ならば何か───そう考えている間に、どうやら私は囲まれたらしい。
「…なんの用でしょうか?」
私がそう尋ねると神々の中の一人が答える。
「あなたが精霊王でお間違いがないですか?」
「…そうだとしたら?」
仕方が無いので、聞き返す。曖昧な返事だが、神ならば、いや神ではなくてもこれで察せられるだろう。
「報告と違うことになります。時空神から、精霊王を殺したと報告を受けました。しかし、魂までは破壊していなかったようで…。死神の仕業ですか?」
およそ予想通りの返答が帰ってくる。思考回路が単純だが、そちらの方が今回の場合は正しい。複雑に考えると死者が生き返るなんてあらゆる考え方があるのだから。必要な情報のみを受け取り、いらない情報を切り捨てる取捨選択。見事なものである。が、
「───半分正解ですね。そうです。私が亡き精霊王ですよ。」
「神に逆らったという伝説は、今も語り継がれていますよ。」
私を挑発するのが目的なのか、そう嫌味たらしく言ってくる。私は、それに笑みで返す。
「ふふ、私は正しいと思ったことを行っただけです。」
「神に逆らうのが正しいとでも?」
「…全てのものに救いが、チャンスがあってもいいじゃないですか。それに、人間の方が再利用しやすいですし、時間においても、人間はすぐ死ぬのですからやり直すことが簡単ですよ。」
「…じっくりと適応させて、属性と能力の見極めをする必要が───」
「人間なら、簡単に判断できます。彼らは力に溺れやすい。溺れない物を採用し、その中から強いものを選べばいいじゃないですか。そうしないのは?」
「ただの食料が力を持つのは、他の人外たちの迷惑だ。」
「人外、いりますか?」
そう尋ねると、神は驚いたかのように目を見開く。まるで、思考の裏をつかれたかのような、考えたこともなかったかのような、驚きの表情をうかべる。神は安定志向を持ちがちで、新たな挑戦をしたがらない。何故ならば新しいことは失敗する可能性があり、神に失敗は許されない。いや、神がやることは全て成功なのに、勝手に基準を作って、失敗とみなすのは神である。
「人外は長く生きる。それは経験を積むということ。ならば、当然強くなる。そしたら敵を作らないように本性は隠すでしょう。それをどう見抜いているんですか?」
私はそう言いながら氷の椅子に座り、神の次の言葉を促す。
「いつかボロが出る。その時に全てわかる。何故なら「神が完璧、なんて言わないでくださいよ?」」
私が被せるように言うと、その神は顔をしかめる。その顔が語る。神は完璧に決まっているだろうと。私はその人が正気なのかを疑いつつ、話を続ける。
「あなた達の言う最高神様が精霊との賭けに負けてるんですから、その事実は受け入れて下さいよ。それに、神の力の継承が上手くいってないのでしょう?」
「…お前がそれを知る必要は」
「そりゃそうですよ。精霊はマイペースで自由な子達なんですから。突然やってきた誰かも分からない神に命令されて生物に属性を無理やり与えさせられる───そんなこと、精霊が黙ってると思っているんですか?しかも、私を追放するというおまけ付き。」
そう言いきってやると、その神は表情を変えずにこちらを見る。ただ、その目は一瞬、驚きを写した。盲点だった、とでも言わんばかりに。
「───正直に言いましょう。神は完壁でした。…過去形ですよ。今のあなた達は不完全で、他の人外達よりもやや生きているだけです。私から見れば全員子供同然です。その子供が癇癪を起こしてるから、私は止めてあげてるだけですよ。」
そう、だから私はもう一度最高神様と賭けをした。───数十億年後、神界が不安定になると。私は、そんなことにならないと思った。ただ、初代最高神様は断言なされた。
今、私はその賭けに負けた。実際神とは名ばかりの子供ばかりになってしまい、優秀なものは寿命が尽きて死んでいくからだ。これで賭けはおあいこである。勝って負けた。お互いに一勝一敗である。まあ、この賭けに負けたのならば私はその賭けに負けた時の約束を守らなければならない。
───私が今まで生かされていたのは神々の暴走のストッパーとなるため。ライフは2用意されていたとは聞いていたが。まさか…誰かを犠牲にした蘇生なんて聞いていない。そこの部分を問いただしたかったが、今はもうご存命では無いので諦める。
自らを地上に落とせば永遠の命を手に入れられたというのになんとももったいない話である。が、高貴な神様には選べない選択肢なのだろうということも同時に理解する。それでも堕ちることを選んだ水神───ウパさんには尊敬の意を評させてもらう。
「神は完壁だった…?何を言っているんだ。『今も』完璧だ。侮辱するなよ…ッ!精霊ごときがッッ!!」
「煽り耐性バツですか…。まあ、普段崇め奉られていたらそうなりますよ。無理ないですよ。同情します。」
「神を憐れむな。神を侮辱するな。精霊のくせに立場を弁え───。」
その瞬間、神々は氷漬けにされる。十数人あまりいた神、全員だ。こんなに長々と話しているのだから、そりゃ技を用意してるに決まっている。氷の椅子を本当に椅子の為だけに用意したと思っているのか。この人達は。経験が浅いのだろう。彼らを責めることはできない。仕方がないのだ。
敵には容赦してはいけない。私は、それをめめ村で学んだつもりだ。誰に対しても優しい人は搾取されるだけである、下界の良いところも、悪い所も。全て、めめ村で学んだ。神界だけでは下界の様子を真に見ることは出来ない。分かっていたが、分かっていなかった。まあ、この反省は数億年前にやったのだから掘り起こす必要は───。
「油断大敵だよ。精霊王さん?」
私は瞬時に氷の結界を貼る。2重3重と氷を積み重ねる。その声は、瞬時に私に緊張と恐怖をうえつけた。───明らかに異常事態で、想定外である。
「ん〜?そりゃねぇ?最高神様も精霊王を放っておくわけないじゃん。それに、神十数人を瞬時に凍らせてる。尚更ほおっておけないでしょ。
さも当たり前かのように答えられる。私の中で眠っていたトラウマが心を抉って引きずり出される。そいつは、私を見て、あ、と言って付け足す。
「あ、なんで対策されてるか?みぞれさんの記憶にもあるでしょー?初代…だったかな?その人と賭けをしたってやつ。その内容を今の最高神様が知らないわけなくない?」
だからといって、どうして。
私がそう尋ねればそいつはニヤリと笑う。
「死んだはずのメテヲがここにってこと?…くふっあははははッッ!!そんな化け物を見る目で見ないでよー。悲しいな〜。メテヲ達、仲間でしょ?」
そう言って歪な笑いをうかべる。そう、その見た目は、私を殺したメテヲさんに瓜二つで。その狂気的な笑みは私を殺した時に浮かべた顔を彷彿とさせる。───それは、私が1生で1回しか味わうことが無い痛み。恐怖。無欲さ、絶望。それが再来したことを脳が否定しても、体は正直だった。がくがくと震え、口は、言葉を紡ごうとせず、空を食べる。
「んえ?なんでいるか気になる?それはね、ぜんさんが死んでくれたおかげ!そのおかげでメテヲの魂が最高神様の元へ帰れたの!で、蘇生されたってわけ!あ、もちろん一時的だよ?役割を果たしたらすぐバイバーイってこと!」
メテヲさんは生きたからだを噛み締めるかのようにハイテンションで話し続ける。
「その役割が『なんとしてでも精霊王を殺せ』ってこと!メテヲはね〜最高神様の傀儡だから仕方がないよね!だからさ!───死んで?もう1回。」
その瞬間、ゾッとした寒い空気を感じる。私とメテヲさんは絶望的に相性が悪い。太陽に挑むマッチほど差は歴然である。メテヲという人物は数千年程度しか生きていないのに、天性のセンスと才能に恵まれたまさに、『神に愛されたもの』である。数十億年生きている私を、平然のように、呆気なく殺した。───正真正銘の化け物だ。
「みぞれさんは神は不完全なんて言うけどさ。その不完全っていう定義を決めるのはみぞれさんじゃないの。メテヲ達神様なの。君の感覚という物差しで比べないでね。その物差し、曲がってるから意味ないよ。」
「初代様画完璧の基準にしてますよ。それは、あなた達の決めた基準ではないんですか?」
「勝手に自己解釈しないでね。メテヲたちが定めたのは神を完璧と定義にすること。それ以上でもそれ以下でもないし、単純にも複雑にもならない。意味理解できる?」
メテヲさんはそう愉悦混じりに聞いてくる。───大丈夫だ。私は話し合いが苦手だ。なぜならば他の人の意見に押し負けてしまうから。でも、それはめめ村内だから。だからさっきは勝てた。けれど、メテヲさんは違う。彼も元仲間で、自身の主張をはっきりと言う。私よりも何枚も上手だ。ただ、これはただの話し合いではない。表面上は争っては無いが、ちゃんと魔力を貯めている。前回と同じ過ちは繰り返さない。
「あ、そうそう。みぞれさん。もうメテヲの勝ちは決まってるから小細工しても無駄だよ。」
私はその言葉に唾を飲み込む。───私の行動が見透かされている。なんで、どうしてバレた。自分を責める声と、分析する声が脳内からひびき続ける。焦ってはいけないのに。冷静にならないといけないのに。そう思っても、心臓はどくどくと脈打ちうるさい。
「だってそうでしょ?ここはメテヲの空間で。メテヲの時間なんだから。」
そう言って嘲笑うメテヲさん目には私の焦る顔が映っていた。
ここで切ります!昨日投稿できなくてすみません…!!昨日は少し忙しく…代わりに今回はめっちゃ長めに書きました!4000文字書いたの久しぶりすぎる。はい!今回はみぞれさんの黒色の部分が見せられた気がします!ちなみにみぞれさんの言っていること全てが本心なわけじゃありません。みぞれさんは本当に人間を愛してますし、助けようとしています。時間稼ぎをするために、わざと煽るような発言を多めにさせてもらいました。それと、みぞれさんを退場させるか悩んだ結果、メテヲさんに丸投げすることにしました。メテヲさんを登場させる方法が何パターンかあったんですが、そのうちの一つを今回採用しました。まあまあ筋は通っていますが、優遇と言われそう…。優遇するならなんで殺したってことですけどねワッハッハー!
あ、一応明記させてください。この物語に登場する神々は他のあらゆる宗教、団体とは無関係であり全てフィクションです。
念の為ですけどね()創作ですから!あくまで!気を付けてくださいねー!
仲春のどーでもいい情報
神はみんな目にキラキラ?が宿ってます!瞳孔みたいな場所に宿っていて、それを見れば神と分かります!天使や悪魔、それと例外のメテヲさんはハイライトがキラキラになってます!悪魔だと黒色ver.ですけどね!✧←こんな感じのイメージです。
それでは!おつはる!
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