⚠異世界パロ ⚠彼女さんが出てきます
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届く届かないは無しにして
あの人のことを信じてみる
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俺は来た道を覚えてるとおりに、走って進んでゆく。
走っているところは路地裏なので目印になるものも何もない。
だが、幸いなことに俺の生まれつきは『電気』とのことで、電気の流れが分かっていたので間違うことなく帰ることができた。
ついに、家の前にたつ。
あの人は出てきてはくれるのだろうか…。
小さな不安がだんだんと俺の体を蝕んで呼び出す前に座り込んでしまいそうになる。
「ふぅ……」
息をゆっくりと吐き出し、冷静になる。
そして、震える手を触れたか分からないぐらいの強さでそっと押す。
勢いよく、扉が開いた。
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「き…よ」
彼女は泣きつかれたのか、目もとが赤くなっていた。
「か、帰って!」
…いや……あのね、帰るって…ここ俺の家でもあるんだけどな…
心の中で苦笑して、現実では違う言葉を吐き出した。
「ねぇ、これ、プレゼント」
「え?」
大きな目を更に大きく開かせて、ぱちぱちと瞬きをしている。
彼女は、指にくるくるとリボンを少し絡ました後、照れくさそうにさっき俺が買った桜の枝を手に取る。
数秒間目を光らせて、その枝を眺めている。
だが、その数秒が過ぎたら一瞬だけ、哀しそうな顔をして
儚さが残っている笑顔で答えた。
「ありがとう、すっごく嬉しいよ。」
「そっか、なら良かった。」
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「あのさ、もう一回、」
「今度は…私への思いの花、買ってきてよ。」
彼女は枝を大事そうに握ってそう言った
「けど…言うことばっかり聞くなって…」
「それとこれとは話が別!」
「とにかく…よろしくね。」
いつもと違い、どこか焦っているようにみえた。
「はい…」
俺はいつもの癖でハイと言わざるを得なかった。
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右…右…左…ひだり…
正直、あの人と会えるのがちょっぴり楽しみだから俺も渋々受け入れた所はある。
頭に煩悩の塊を置いておくと店をまた見つけることが出来た。
相も変わらず、綺麗な名前の店だと思った。
まぁ、花の意味は知らないんだけど。
「こんにちは…」
「え…また…来られたんですか…?」
「な……………ん……」
何か彼はボソボソとマフラーの中で呟いていた。
こちらを見る。
「また、お悩みですか?」
「あ…はい。」
何故悩みだと言うことが分かったのか…
そんなことを少しだけ感じながら俺はお花を頼もうとした。
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「思いの…花……ですか…」
「えと…はい…。」
「どんな意味を伝えてあげたいんですか?」
不思議そうにじっと見つめてくる。
「俺…やっぱり…無難に……好きって伝えようかなって…。」
店員さんにこんなことを言うのは初めてで、小さく照れてしまう。
その顔を見て、彼はちょっと眉を下げて「分かりました」と言ってくれた。
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「こちらはどうですかね。」
彼が置くから取り出してきたのはひまわりだった。
大きなひまわりと、小さなひまわりと、普通のひまわりを一本ずつ。
それを俺に合わせていく。
「うーん…これかな…」
「いや…これじゃぁ…でかいか…」
独り言をひまわりに向かって喋っていて何かを決断したようだった。
「では、これを」
彼は俺にとっては少し小さめのひまわりを差し出してくる。
その花を手に取る。
じゅわりと、歪な音がした。
手元で何かがふつふつと泡をたててきている。
それを見て、店員さんは「危ない…!!!」と叫んで俺の手を叩いた。
厳密に言うと、酸のように化したひまわりを遠くへと飛ばした。
「いっ……」
店員さんの指が青黒くなって、指の肉が少し溶けていた。
「けが…は?」
「え…ありませんけど…。そちらの方は」
「そうですか、なら良かったです…。これは……大丈夫なはずなので」
自分のことよりも俺のことを心配している。
あんなに顔色悪そうなのに。
けれど、彼の言うことは正しく、みるみると溶けた部分が回復していき、元の指へと戻った。
「は…?」
「あ…そんなことより…。うーん…」
「…信じたくないですけど、こちらを…」
そう言って渡してきたのが大輪の大きなひまわりだった。
俺がそれにぴとりと手を触れても今度は何も起こらなかった。
彼が物凄く気まずそうな顔をする。
意を決したような顔つきをその後見せると息を必死に出していた。
「そ…花…ことば…は…」
「偽りの愛」
て…ことは……
彼女への愛は偽物って…ことか…。
「…………」
「…ちなみに…あの普通の方はあなただけを見つめる…。です。」
「溶けるときは…その思いと花詞が噛み合ってなかったときです。あの酸毒に触れると死に至ることもあります。」
俯いてとても顔が見せられなさそうだった。
けど…
俺…他に好きな人がいるのか…。
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彼が「他のお花、探してみます」と気まずそうな顔で奥へと戻っていっているとき
俺は何故だか口から声を零していた。
「あの…お名前は?」
店員さんに普通は聞くことではない。そんなのは分かっている。
だが、自然の摂理だった
「…名前は…………………レルトトと申します。」
悩んだような顔をして、手に持っていた溶けて乾いたひまわりの残骸を眺めながら教えてくれる。
「お、俺はキヨです!」
忘れさせないように大声で叫んだ。
「え…あ…はい…キヨさん…?」
まだ少しどことなく悩んでいる顔をしながら聞いてくる。
「友達感覚がいいので、キヨで全然いいです。」
「えっと…それでは失礼なので…」
目をバッチリと見つめて声を放ってきた。
「キヨくん…で…いいですかね…」
また胸が高鳴る。
…?なんでだろう…まだ分からないや…
「………あ………。……俺は…レトさんって…呼ばせて頂きますね。店員さんですし。」
長考した結果だった。安直なものだ。
最初と最後のもじで名前を作るなんて。
「あ…はい。では…探してきますね。」
「き、キヨくん。」
さっきよりもどくんっと胸が高鳴る。
心臓がうるさい。
これは……次の花に期待しているだけだ…きっと。
レトさんのさっきの薄く赤らめた顔を頭の片隅に思い浮かべて胸が鳴っている事も分からず
俺は頭にはてなを沢山浮かべてレトさんを待つことにした。
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コメント
4件
Fooooooooooo!!!!!最っっっっ高
待ってまじで最高すぎる…!!!好きって言うのに気がついてないの可愛すぎるぅぅぅ!!!うわぁぁぁぁぁ!!!(?)