それは、必死に叫ぶ様な圭介の声を聞いて駆け付けた時だった。
手を血で染めるマイキー、そんなマイキーに怯えながら、止めるように縋り付く圭介。
そして、顔の、主に口元を。血塗れにして困惑しているジブンの兄。
何が起きたのか、分からなかった。
いや、理解を拒んでいた。
無意識に眼力が強まり、身体中に鳥肌が立つその感覚。
それと同時に、マイキーが口を開く。
「笑えよ、春千夜。」
その言葉は、とても恐ろしかった。
ハル兄は口が裂けていた。見るだけで分かるその痛さ、恐ろしさ、皮膚から出続ける血の量、 そして目から溢れ出る涙。
ハル兄は口を抑えて、余りにも酷い痛みと恐怖を抑える様に震えていた。
そんな状態で、笑うなど出来る訳が無い。
マイキーがまるで別人の様だった。
さっきまで遊んでいた筈の、あの無邪気な瞳が今は真っ黒。
何かに取り憑かれたのでは無いかと思った。
そして、脳がやっと状況を理解し始める。
ジブンがプラモを壊したのはハル兄だと、嘘を付いた結果マイキーは怒ってハル兄の口を裂いた。
酷い罪悪感が生まれた。
自分はなんて事をしたのだろうか。
自分の所為で、兄が傷付いた。
それは、いつもの事では無いか?という思考が一瞬でも脳内に生まれた事に、罪悪感が増していく。
「ヒッヒッヒ、アハハハハッ!!!!」
今まで感じた事の無い痛みが悲鳴を上げている筈なのに、ハル兄は狂った様に口角と周りの皮膚を持ち上げて笑い出す。
どうしよう。どうすればマイキーを止められる?
力の強さもマイキーに及ぶ訳が無い、守られてばかりの女の子には”衝動”に包まれたマイキーを止める事なんて、出来る訳が無い。
薄々分かっているんだ。
その場で正気が保たれて居たのは、自分の所為で兄が傷付いた千壽と、今まで見た事の無い幼馴染の姿に震えている圭介だけだった。
コメント
7件
上手すぎ!!! たしかに、あの場で正常なの場地さんだけなんかもな……?! おぬし考え方天才じゃろ!!✨️
え小説作るのうますぎな せんじゅ目線なのまじすき最高
せんじゅ視点…好き やっぱ最高だわ…寝る前に癒し(?)をくれてありがとね!