「これは……すごいな」
「『ゲート』に浮遊島!?
こんなものあったら、戦の仕方が
変わっちまうわよ!」
浮遊島の上で、ランドルフ帝国の軍人二人が
その光景に声を上げる。
一人は大柄な鎧に身を包んだ―――
黒の短髪に半開きの目をした、
帝国武力省将軍、ロッソ・アルヘン。
もう一人は……
黄色に近いブロンドの長髪をした、
魔戦団総司令、メリッサ・ロンバートさんだ。
「無理を言って、ライオネル様に手配して
頂いたのです。
将来、帝国とウィンベル王国は縁続きに
なるのだからと―――」
パープルの長髪に、前髪を眉毛の上で揃えた
ティエラ王女様が誇らしげに話し、
「いきなり、あちらの王族と恋仲になったと
いうのも驚きでしたが……
ワシらもここにいていいんですかい?」
「とんでもない国家機密を次から次へと
見せられているような―――」
筋骨隆々のアラフィフの赤髪の男……
カバーンさんと、
アラフォーのブラウンのボサボサ髪の男性、
セオレムさんが疲れ気味に語る。
「だって、あなた方2人はわたくしの従者
でしょう?
なので、わたくしの知っている事は、
あなたたちも知っておいた方がいいと
思いまして」
「まっ、そーゆーわけだ。
悪く思うなよ、2人とも」
そしてグレーの短髪には白髪が混じった、
アラフィフの細マッチョな男が彼らに絡む。
冒険者ギルド本部長にして、前国王の兄、
ライオネル様―――
彼も今回、この浮遊島の情報共有の場に
参加していた。
ちなみに私が『道連れ……』とぼそっと
言った時、一組の男女の動きが一瞬止まったが、
それは見なかった事にしておこう。
そして現状、ここはランドルフ帝国の上空。
大ライラック国の侵攻を食い止めるため、
今回、ウィンベル王国、延いてはライさんの
出番となったのだが、
作戦の全容を伝えるため、これを機に数々の
機密解除を行い―――
ここにいる帝国サイドの人たちと共有する事に
なったのである。
もちろんその中には、私が『境外の民』
である事も含まれていて、
ウィンベル王国のワイバーン騎士隊を始め、
このトップシークレットを知る人は一気に
広がった。
「しかし、さすがに寒いな」
「そりゃ今の季節、山より高いところにいりゃ
そーなる。
さっさと中に入ろうぜ」
アルヘン将軍の言葉にロンバート総司令が
応え―――
みんなで施設の中へ避難するように
入っていった。
「暖かい……
というか、少し暑いくらいだな」
「何か暖かい風が吹き込んで来るような」
カバーンさんとセオレムさんが、不思議そうに
室内を見渡す。
「ホット・ストーンを用いた暖房器具を設置して
いますからね。
なるべく地上の生活を再現しておりますから」
私が二人にそう答えると、
「確かに―――
言われなければ、ここが空の上だとは
気付かないだろう」
「空中基地かあ。
空の上で補給可能、休息も出来るって……
敵さん、たまらんだろうな」
ランドルフ帝国の軍事トップの二人が、
呆れるように評価し、
「今、ウィンベル王国ではこの浮遊島の
新規建設を急いでいる。
この島はこのままこっちに置いていくから、
白翼族、あと技術者から機能・管理を
学んでくれ」
ライさんがそう言うと、将軍に総司令も
目を丸くして、
「ほ、本当ですか!?」
「事後承諾になるが、状況が状況だし―――
いちいちこれを向こうの大陸まで移動させる
手間を考えたら、その方がいいだろう。
それに帝国もワイバーン部隊をそれなりに
抱えている。
あっても邪魔になる事は無ぇ」
驚いて声を上げるティエラ王女様に、
ライオネル様は事も無げに語る。
「さ、さすがはティエラ様の婚約者……」
「結婚する前からもらい過ぎじゃねーのウチ?
こりゃお返しが怖いわぁ」
そしてアルヘン様はやや引いた顔で、
ロンバート様は苦笑で返し、
「ただ今、戻りました」
「まったく、こっちのワイバーンどもは
はしゃぎおって―――
遊び場ではないのだぞ、まったく」
そこへ、淡い紫色の短髪を持つ二十才ほどの
青年と……
真っ赤な長髪の長身の女性が、部屋に入って
来た。
マルズ国第九王子、エンレイン様と、
ワイバーンの女王ヒミコ様だ。
この浮遊島は―――
ランドルフ帝国のワイバーンたちにも
披露しており、
今回の作戦に参加は出来ないが、戦術公開・
共有と言う観点から同行しており、
それをまとめているのがヒミコ様で……
彼女の番としてエンレイン王子様も一緒に
同伴していた。
「はしゃいでいたって―――
アイツらは子供か」
「確かに、『新しいオモチャ発見!!』
みたいな感じでしたけどねえ」
カバーンさんとセオレムさんが苦笑いする。
「まあ、今はこの浮遊島に慣れさせるだけでも」
「いきなり空の上に休める場所が出来るんだ。
飛べる連中に取っちゃ、興奮するのも無理は
ねぇさ」
私とライさんがかばうように話し……
しばらくして私たちは地上へと降りた。
「おお、シン殿」
「あ、マギア様。
それにイスティールさん、オルディラさんも」
地上に戻り、大使館へと移動した後―――
そこには魔王・マギア様と魔族女性二名が
同じ施設内にいて、
「ドラセナ連邦にて、『ゲート』設置は
完了しました」
「これでいつでも、連邦への出撃は可能と
なります」
パープルの髪をやや外ハネさせて、
ミディアムボブにした、キャリアウーマンの
ようにしっかりした印象の女性と、
白銀の長髪に褐色の肌―――
ダークエルフのイメージそのままの女性が
頭を下げてくる。
その二人の間にいる、ベージュのような
薄い黄色の撒き毛の短髪を持つ五・六才くらいの
少年が片手を挙げて、
「シン殿は、浮遊島のお披露目か?」
「ええ、ようやくランドルフ帝国に到着したとの
報告を受けましたので。
自分は『ゲート』を使わせてもらい、
こちらへと」
今回は、大ライラック国に対抗する
ランドルフ帝国と、
モンステラ聖皇国に対抗するドラセナ連邦、
二正面作戦になる。
そのため、帝国側は自分とライオネル様、
そしてティエラ王女様が率いるワイバーン隊、
聖皇国側へは、精霊様たちとメルビナ大教皇様が
向かう事になっているため、
魔王・マギア様に『ゲート』をドラセナ連邦へ
設置してもらいに行っていたのだ。
「しかし、大教皇様は大丈夫なのか?
彼だけ人間と聞いているが」
「『聖なる壁』の使い手なので、
まず身に危険は及ばないかと。
それにこの国のギルドマスター、
ベッセルさん=つまりアウリスさんも
加わります。
精霊様とあの人がいれば、万が一という事は
ないでしょう」
それを聞いたマギア様は、どこか安心したような
表情となり、
「しかしシン殿も大変だな。
子供が産まれたばかりだというのに」
「ははは……
まあその子供のためにも、ってヤツですよ」
そこで女性陣に子供について聞かれ、二・三
話した後―――
私は次の目的地に向かうため、準備を始めた。
「シンさん」
「あ! やっと来たの!」
「おお!
久しぶりじゃのー!」
と、私は精霊様たちから挨拶される。
グリーンの瞳とサラサラした髪の中性的な
少年、土精霊様、
まるで透明なミドルショートの白い髪をした
少女、氷の精霊様。
そして三十センチにも満たない……
透明な複数の羽を持った、小さな少女、
水精霊様がいた。
「…………」
そして無言で、青く透き通るような
ミドルショートの髪に―――
蝶のような大きな羽を持つ、二十代くらいに
見える女性、
森の精霊様がペコリと頭を下げる。
ここはランドルフ帝国の帝都・グランドール。
その冒険者ギルド本部のギルドマスターの
部屋で、私は精霊様たちと再会していたのだが、
(風精霊様はチエゴ国において
ノルト・ダシュト侯爵様との婚約関連の
手続きで忙しかったため不参加。
また、沼精霊様は
精霊化して間もないという理由で留守番。
同じように精霊化したテン君も、鬼人族の里の
防衛にあたりたいとの事だった)
その当の部屋の主はと言うと、
「アウリス様はすぐにいらっしゃると
思いますので」
「もう少々お待ちを……」
さらに室内には女性と見紛うような、中性的な
顔立ちの青年と、青い髪を後ろで三つ編みにした
女性―――
メルビナ大教皇様とティーネさんもいて、
「いえ、どちらかというとこちらがお待たせ
しているようなものなので」
と、二人に私が頭を下げていると、
「シンさん、お待たせしました!」
扉を開けて受付職員の女性……
ピンクヘアーの巻き髪をしたカティアさんが
入って来て、
「あー、さっぱりしたぜ」
「ったく、お前は―――」
続けて、アラフィフの筋肉質のギルド長、
ジャンさんが……
後にライさんが呆れた顔で入って来て、
「ゴールドクラス、ですか。
ウチのミスリルクラスと互角以上に
戦えるなんてねぇ。
しかし、『武器特化魔法』で
あれほど戦えるとは―――
世界は広いものだ」
中肉中背だが目付きの鋭い、シルバーの短髪の
男性……
ベッセルギルドマスター=アウリスさんが
最後に部屋に入って来た。
『こちらがお待たせしているようなもの』―――
そう私が言ったのは、
実はドラセナ連邦へ向かう前に、精霊様たちや
メルビナ大教皇様と打ち合わせを兼ねて、
話をしておこうと思っていたのだが、
ランドルフ帝国の新兵の『訓練』をするために
やって来ていたジャンさんも……
この国の冒険者ギルドに興味を持って同行。
予想はしていたが、ここのゴールドクラスに
匹敵する、ミスリルクラスとの対戦を提案し、
それと戦って満足したであろう、満面の笑みを
浮かべて戻ってきたのであった。
「まったくもう。
ギルド長はあくまでも、軍学校の訓練生
相手のために来たんでしょうが」
さすがに私も呆れて苦言を呈すると、
「いや、俺も冒険者ギルドの支部長としてよ?
機会があれば、そりゃやってみたいと思うじゃ
ねぇか」
「最初っからそれ目的だっただろうが」
ジャンさんの後に、ライさんが苦笑いしながら
話す。
「しかし、彼が支部長とはねぇ。
ウィンベル王国のレベルの高さを
思い知ったよ。
自分の『自分だけの世界』を
こうまでものともしない相手がいたなんて、
予想もしなかった」
「まあ確かにジャンさんは、魔物討伐歴が
長いですもんね。
森でも湿地帯でも河川でも、戦闘経験は
豊富でしょうし」
ベッセルギルドマスターの言葉に、
私はうなずきながら返し、
「しかし水中まであるのは反則だろうよ。
さすがにそんな戦闘まではした事が
無かったからな」
「あれを破られたらさすがに後は無かったなぁ。
とは言え、『自分だけの世界』そのものを
破った相手が目の前にいるんだけど」
ウィンベル王国のギルド支部長の後に、
ランドルフ帝国のギルド本部長が、話の矛先を
私へと向ける。
「それではそろそろ……
例の話し合いを」
そう、メルビナ大教皇様が話を元に戻し、
全員が姿勢を正す。
「モンステラ聖皇国の侵攻に対する、
ドラセナ連邦への救援―――
それについていくつか、共有したい
情報があります」
ライオネル様はそう言うと、私と視線を合わせ、
「アウリスさんは、『境外の民』というのを
ご存知でしょうか?」
その質問に彼は両目を閉じ、
「確か、別世界からの来訪者だったよね?
自分も何度か会った事はあるよ。
確か3人ほどだったかな?」
さすがにエルフ。その長寿であれば、
歴史の記録にしか残っていない人物に
会っていてもおかしくはない。
「じゃあ……
私が4人目、という事になりますね」
「えっ?」
「んっ?」
「ほ?」
私の言葉に、メルビナ大教皇様、ティーネさん、
カティアさんがきょとんとした声を上げた。
「あー、なるほど?
シン殿の『抵抗魔法』―――
あれは魔法ではなくシン殿の能力であり、
自分が常識の範囲内だと認めたもの以外は
否定出来ると……
おっっっそろしい能力持ってたんですねえ」
両腕を組んで、アウリスさんが天井を見上げる。
「す、すいません。
我ながら無茶苦茶な能力だと思いますけど」
もう何度正体を明かす度に、頭をペコペコと
下げたかわからないが―――
取り敢えず謝ってしまう。
「……いえ、これぞ神の采配……
大精霊様のお導きかと思われます……
……シン殿のようなお方にこの力を授け、
この世界に送り込んだという神……
偶然かも知れませんが、決して間違って
召喚したのではないと確信いたします……!」
拝むように私の前で、大教皇様が両手を
合わせる。
とは言っても、神の都合でこうなってしまったと
神様自身の口から聞いているものなあ。
まあ、結果オーライというのであれば、
その通りかも知れないけど。
「それで作戦内容―――
というほどのものではないかも知れませんが、
現在、ドラセナ連邦側にはすでに『ゲート』を
作成済みです。
なので、モンステラ聖皇国に動きがあり次第、
出動して頂く事になります。
精霊様たちやアウリス様もいらっしゃるので、
大丈夫だとは思いますが」
ライさんと私の説明に、メルビナ大教皇様は
ふぅ、と静かに息を吐いて、
「……そもそも、今回の件……
我がモンステラ聖皇国における政変……
私がレオゾ枢機卿の野望を見抜けず、
暴走を止められなかったのが、原因の一端でも
ありましょう。
ならば、私が止めなければなりません……
その機会を与えて頂き、感謝しております」
ゆっくりと謝罪するように頭を下げる彼に、
こちらも思わず頭を下げ返す。
「では、そろそろ―――」
「もうお帰りになるのですか?」
カティアさんがライオネル様に聞き返すと、
「あ、私はもう少しこちらに……
エードラム様やビルドさん、クエリーさんにも
挨拶していきたいですし」
「精霊様方はいかがしますか?」
と、ベッセルさんが低姿勢でおずおずと聞くと、
「別々に行動していますと、いざという時
合流に時間がかかりますので―――
出来ればこちらに」
と、土精霊様が空気を読んで答えると、
「そうだねー、わらわもここがいいの。
食事も美味しいしー」
「ワシもそうだ。
ここは気に入ったぞ」
氷精霊様・水精霊様に反応するように、
森の精霊様もコクコクとうなずく。
「誠心誠意、おもてなしさせて頂きます!!」
と、土下座せんばかりにアウリスさんが
平身低頭し、
改めてエルフ族の精霊に対する信仰を
確認した後、それぞれが部屋を後にした。
「あー……
あの人、シンさんのところのギルドマスター
だったんだ」
「道理で―――
規格外の強さだったわけです」
ブラウンの短髪にハチマキのような布を巻いた
青年と、
ダークブラウンの毛並みの、狼タイプの獣人族が
納得したように答える。
私は厨房で、お餅を使った雑炊やお汁粉などの
料理を教えながら、
ミスリルクラスパーティー、『月下の剣』の
メンバーと情報を共有していた。
「ところで、クエリーさんはどこに?」
そう私が聞くと、人間の青年は視線を下に、
獣人の方は両腕を組んで眉間にシワを寄せて、
「あー、おめでただよ、おめでた!」
「それで今、報告のために里帰りしてんだ」
他の料理人たちから、冷やかされるように
報告が飛ぶ。
「おお、それはおめでとうございます!
……ってアレ?
エードラム様は同行しなかったんですか?」
ふと言った後に、もしかしてマズい話題かと
思っていると、
「いや、リーダーも俺と一緒に行きましたよ。
だけど妹から―――
『あなたと兄さんがいてもどうにもならない
でしょう!
早く戻って、ギルドのみなさんのお役に
立ちなさい!』
って言われたら、まあ」
「俺は冒険者ギルド本部の専属料理人みたいに
なっちまっているし。
義兄……ビルドはビルドで、『神前戦闘』の
主力選手の一人だから、そうそう抜けられない
ってのはわかっちゃいるんだが」
と、妹と妻にたしなめられた二人は、
バツが悪そうに答える。
「はは……母は強し、ってところですか」
「まったくですよ。
正直、リーダーとくっついた時は複雑な
気持ちもありましたけど。
今は両親ともども、『よくもらってくれた!』
という感謝の方が強いです」
しみじみとビルドさんがうなずき、
「あ!
そういえばシンさんも、あの奥さん2人に
子供が出来たって聞きましたけど」
「え?
もう話が出回っているんですか?
そうなんですよ、ちょうど産まれたばかりで。
男の子が2人―――」
エードラム様に返すと、厨房全体が
ざわめき出し、
「おー、『万能冒険者』もですか!」
「あれ?
そういえば一方はドラゴンだったような……」
「えぇ!?
ドラゴンを孕ませたってのか!?」
と、なぜか不穏な方向へ話が飛び、
「いや、ドラゴンですけど人の姿になれます
からね!?
出産したのも人間の姿で、ですから!」
しばらく私は火消しに躍起になり―――
予想外に長く、そこに拘束される事となった。
「……連絡は?」
「すでに大ライラック国の『義勇軍』に向けて
通達済みです」
モンステラ聖皇国、その東の海沿いの港で、
ものものしい準備が行われていた。
やり取りをしているのは、いかにもな宗教服に
鎧を着こんだ者たちで、
「作戦は同時に行われなければ、効果が
薄いからな……
我らはドラセナ連邦―――
あちらはランドルフ帝国。
それぞれをくぎ付けにしなければならぬ」
その部隊を取りまとめているであろう男が、
状況を確認するように語る。
「あとどれくらいかかりそうか?」
「モンステラ聖皇国、聖兵隊80万のうち、
狂信的な者だけを扇動したといえど、
それでも数万はおります。
どう考えてもあと1ヶ月はかかるかと」
まとめ役らしき上司に彼は答えるが、即座に
首に杖のようなものが押しあてられる。
「ヒ……ッ!?」
「狂信的、扇動などという言葉を口にするな。
我らはあくまでも、大精霊様による支配以外を
認めない、敬虔な信者、なのだからな……」
彼はそのままその場にへたり込み、
「もも、申し訳ございません!!」
謝る部下に、上司は見下ろしたまま話を続け、
「……あと2週間で物資を揃えろ。
我々は正式な軍では無いのだからな……
多少の不足は仕方あるまい……
それにこちらは陸路を行くのだ。
何もあちらの得意な水上で戦う
理由はない……」
対ドラセナ連邦を想定し―――
モンステラ聖皇国の『敬虔な部隊』は、
準備作業を続けた。
「モンステラ聖皇国から?」
「あと2週間で侵攻を開始するとの事だ」
一方、大ライラック国郊外西南で……
多くの魔導兵器を揃えた軍勢が、訓練を
行っていた。
「ランドルフ帝国から『情報提供』された、
魔導兵器の対空飛翔体―――
何とか実用化に間に合いましたな」
「ああ。
他の魔導兵器も完成を急がせている。
しかし、これほどまでに早く、
新兵器の出番が来るとは」
地球でいえば……
中世の軍人ふうの衣装に身を固めた、
上官と部下らしき男がやり取りする。
例の大規模合同軍事演習以降―――
帝国からいくつか、合法的に軍事技術が
大ライラック国に渡っており、
(■219話 はじめての わさび参照)
「『義勇軍』という形は取っているものの……
あのゴーレム兵器が間に合えば、勝機は
あるのだがなあ」
「そもそも操縦士もゴーレムという事なので、
完全再現はなかなか難しいかと―――
だが、性能を落としたゴーレム型魔導兵器は、
何とか数を揃えられましたからな。
簡単に制圧される事はありますまい」
そう言う彼の視線の先には……
上半身は人型だが、下半身は馬車のような
移動手段で構成された軍団があった。
「見よう見まねで作ったが―――
なかなか壮観だな」
「1人の強力な魔法の使い手に頼らず、
兵士1人1人の攻撃力と防御力を上げる……
今後の戦力増強は、このような方針に
なっていくかと思われます」
部下の言葉に上官らしき男はうなずき、
「攻撃魔法の使い手は貴重だからな。
そうそう消費させるわけにはいかん。
操縦士を攻撃魔法が使える者に限定しても、
防御力さえ上げれば生存率は高くなる。
『身体強化』程度しか使えない兵士も、
あのゴーレム型魔導兵器を盾にすれば、
恩恵に預かれるだろう」
そして今度は上官の言葉に彼がうなずく。
「しかし、ランドルフ帝国に取っては
災難ですな。
自らがひけらかした兵器で攻め込まれるの
ですから」
「ああ、我々も―――
教訓とせねばな」
そう言うと彼らは、軍勢を前に笑い合った。






