テラーノベル
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⚠️落書き
左手をひらこう、何が見える?
広げた左の手のひらが見える。
右手をひらこう、何が見える?
広げた右の手のひらが見える。
左手をひらいた、空っぽな手のひらがあった。
右手をひらいた、空っぽじゃない手のひらがあった。
刃を握る利き手の赤色、肺を蒸す死の硝煙!
警報音に劈かれて、戻れないと知った。
ひどい夢を見た、思い返すべくもない悪夢を見た。
転がり落ちて打った背中より、息が、息、できない、 しびれる指は誰のせい、俺、の? 泳ぐ指が溺れて、沈む、まわる、あたまをぶつける。霞む意識、を寄せ集めて、吸って、吐いて……。
「、ぁ……っ……」
すえ、吸えない。眼前に、虚な目、声、首をしめられ……?
「た、……───あ」
どの口でたすけてと希うのか?
内耳に蘇る警報音!?! 赤い湖畔に染め尽くされて、ぬるい、ぬるい、両の手のひら 。
経る毎に贄の手が伸びる。あれは死者、あれは亡霊、その宴!
「ひゅ、っ、ぅ……っ」
打った頭がじくりと痛む。風切り音のような自分の吐息だけが残る部屋。凪いだ水面に小石を投げ込むように、こえごえが伽藍堂な脳に響く。
窓に薄明が差す。床に伏せども置いていかれて、世界の夜は明ける、それを恨めしく思うことすら敵わない。
不意にぴりりと鳴いた小さな数字に縋りついた、これを、生者の意思で塗り潰してくれるのなら。
『……え、起きてんの?』
「ぁ、っ……っ、は……」
息が喰われて、微かな風が喉を擦る。
「ひゅ、ぁ、あず、……っあ、ず」
『……シトロン息吐け』
「ぁ、ぇ?、っ、は……っは、っはぁ、」
心許ない通信のノイズに耳を澄ませて息を、吐く、吐く、吐く。足りない声を擦り砕く。鼓動を捩じ伏せる。
「っは、っ……はーっ、……ふー……っ」
『吸って』
「は、……ひゅ、っ、__っ……」
言われるがままに空気を取り込む。意味を問わず、可否を飲み込んで、従うべきものに従うだけ。
『吐いて』
「っ、ふー……っ、……ふー…………」
『吸って』
「___、……___……、」
そこに在る命令が、何より確かだったから。
漣を均すことはできずとも、既に崩れてしまうほどではない。手を離されたなら、次は首の枷から自立できると、尚良いだろう。……それができないから、こうなっているのだ。
『さて、大丈夫じゃなかったみたいだけど』
あっけらかんと言い放つ彼は、いつもの調子。当の俺を差し置いて、恩人は早朝の通信を詫びる。
『や〜失敬! 徹夜で仕事してたんだよ! 偉くない!? なんか終わったから終業報告しようかなって!』
「……、珍しいな」
ネクタイにかけていた指を外して、少し震えていた。揺らぎかける神経を渡らせて、ぐらりと身体を起こす。寝台に沈み直して、広げた手をやっぱり閉じて、通信のノイズを抱く。
『でさ! 今から寝ようか迷ってるんだけど、今から寝たら完全に昼夜逆転だよね!? どーしよ〜!』
「……寝ておけ。俺は寝る」
『え、シトロン二度寝するの? え〜、それなら僕も仮眠取ろうかな』
ひんやりとした掛け布団に頬擦りをして、相方の笑い声を聞いた。絹声が映す水面は、やわらかい。
『今って朝の何時だろ、ギリギリ太陽上りきってる?、ね。おはよ』
「……ああ」
『……んでもって、おやすみ』
「……あぁ」
囁く風を帯びた声が、ふわりと遠ざかる。薄く残った意識に、小さな声を巻いた。
「…………有難う」
『 、いいってことよ』
(補足)
うちの世界では、インポスターだけが酸素なしで生きられて、クルーとニュートラルは死にます。
インポスターは酸素がなくても生きられますが体内の酸素が多すぎると死にます多分。
ベルリウム
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ベルリウム
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コメント
1件
うわ、このエピソードめっちゃ刺さった……! 悪夢から醒めても呼吸すらままならないシトロンの焦燥感と、それに気づいて「シトロン息吐け」って静かに導く相方の距離感がたまらない。通信越しの「吸って」「吐いて」の繰り返しで少しずつ戻ってくる感じ、生々しくて息止めて読んだ。最後の「いいってことよ」の余韻が優しすぎる……続きが気になる🔥