体育館に来てから20分程が経っただろうか。
ずっと飛雄のトスでスパイクを打ち続けて、もうヘトヘト。
私から休憩を希望して、適当に放り投げておいたバッグの中から真っ白の水筒を取り出して中の水を思いっ切り飲む。
久しぶりにこんなに体動かした…
新鮮だった感覚とは別に、疲労も私の体には襲いかかってきていたが、そんなことよりも何故か楽しさが勝っている自分がいた。
影山「凜、サーブ見てろ。」
『うんっ!!…飛雄のサーブ見るの久しぶり……まさか、また上達したの?』
影山「…まぁ、お前が見た最後のサーブよりは、春休みも練習してたからな。」
『あ、そっか…』
私は水筒を片手に休憩を取っているというのに、飛雄はコートのエンドラインより奥に立ってサーブを打とうとしている。
ほんっと、体力馬鹿は休憩いらないのね…
なんてことを思っていたら、飛雄が春休みの練習の話を持ち出してくるから、私は春休みの飛雄の練習を断ったことを思い出して申し訳なくなってしまう。
でもその分、今ここで飛雄の練習の成果を私は初めて見ることができる。
影山「……」
ダンッ…ダダン…ダンッ
飛雄の目が変わってやる気が入ったな、とわかる。
私は水筒の蓋を閉じて床へ静かに置き、そのまま真剣にボールをついている飛雄を見つめる。
トンッ…キュキュッ
そして、綺麗にボールが真上へと片手であげられた。
そのままボールは打ちやすい位置、飛雄のおでこから腕を伸ばした位置へと落ちてきて。
飛雄がそれをそのまま打とうとステップを踏んだ瞬間。
?「なんで居る?!」
影山「…?!」
『…!!』
突然入り口から誰かが入って来たかと思えば、その子は大きな声をあげて、
飛雄と私は驚いてそちらの方を瞬時に向いた。
もちろんボールは飛雄の頭に綺麗に当たった。
?「ぐぐっ……!!…影山飛雄!!」
そして何事かと思えば、目の前にはどこかで見たことあるオレンジ頭の子…
その子は飛雄の名前を大きな声でハキハキとした声で叫ぶ。
…あぁ、確かこの子去年、うちの男バレのチーム…飛雄のチームに初戦で負けてた子だ。
影山「…お前…去年の……」
影山「名前は知らない。」
やっぱりその印象強い髪色のせいか、ましては “あの圧倒的なジャンプ力…運動能力と反射神経” は飛雄も鮮明に覚えていたっぽい。
まぁ名前は知るわけないよね。
私でも知らないもん、そんなの飛雄が知ってるわけがない。
そして飛雄がそう冷たく返すと、そのオレンジ頭の子は悔しそうな表情をする。
日向「おっ俺の名前は日向翔陽だっ!…おぼっ、覚えとけっ!!」
影山「……」
日向「一回戦で負かしたチームのことなんか覚えてないかも知んないけどなぁ…おれはっ、!!」
『日向くんの事はよく覚えてるよっ(同時)』
影山「お前の事はよく覚えてる。(同時)」
日向「……?!」
飛雄と私の声が揃う。
案の定日向くんは目をまんまるにして驚いている。
あのスバ抜けた能力、普通じゃないって気付いてないのかな…?
日向「……あっ、えっと……」
日向「…ギャラリーで応援してた人……北川第一のマネージャーさんだったんすか、?」
『…!!私のこと、知ってるの?』
日向「あ、はい…ギャラリーでめっちゃ応援してたし、試合が終わったあとコート近くの出入り口で見てましたよね…?」
『…あぁ、…ふふっ笑…うん。』
『みっともないとこ見られてたんだね…笑』
まさか日向くんにあんなみっともないところ…1人で涙を流しているところを見られていたなんて思わなかった。
今更隠しても無駄だろうし、私はそのまま会話を続けた。
…にしてもまさか、日向くんが意外なところで私を知っていて驚いた。
さっきはついうっかり「日向くんのことを覚えてる」なんていってしまったけれど、実際日向くん自身は私のことを知らないんだろうなと思っていた。
日向「…あっ、いやっ…!!そのっ、…!」
影山「クソ下手くそな奴!!」
日向「!!」
『ちょっ、飛雄……』
ほんとにこの子は……
礼儀というものを知らないのかな?
よくほぼ初対面の子にそんなこと言えるもんだわ…。
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コメント
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続き楽しみにしてます‼️😆