テラーノベル
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昼休み。教室に戻る途中の廊下。
ナマエは、何気なく聞こえてきた声に足を止めた。
「え、聞いた? あの子……小学校のときやばかったらしいよ」
「えっ、何それ?」
「なんかね、ぶりっ子で、男子に媚び売ってたっていうか。あと、めっちゃ不潔だったとか……」
「え、それマジ?うわ……」
(――は?)
耳を疑った。
でも、そのあとも声は止まらなかった。
「てか、メイドカフェのときめっちゃ猫かぶってたよね〜」
「卒アルの写真とかも残ってるし、もっとやばいの回ってるらしいよ」
(……誰? なんで今さら、そんな話が)
教室に戻っても、何人かがナマエの方をチラチラと見る。
(あぁ、これ、完全に……広まってる)
席についても、ざわざわした声と視線が肌に突き刺さる。
「ミョウジさん、大丈夫?」
近くにいた女子が声をかけてくれたけど、
ナマエは笑って返すだけだった。
『うん、なーんにも気にしてないよ〜? よくあることだし、笑』
笑った。
笑うしかなかった。
それ以外の表情をすると、崩れてしまいそうだったから。
でも──
(ああ、まただ)
(また、壊れていく)
ナマエはふと、スマホの画面を見つめる。
そこには、何も知らずに送られてきた出水からのメッセージが一通。
『聞きたいことあるんだけどさ後でいい?』
(……どうしよう、先輩にまで、知られてたら)
指先が震える。
返事を打てずに、画面を伏せた。
ーー
ついにここまで来てしまいました。