テラーノベル
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西幽の険しい岩山に聳え立つ、悪名高き盗賊団の砦『黒鉄城(こくてつじょう)』。その堅牢な門の前に、二人の旅人が立っていた。「おい、白霧幻。この砦の頭目が、付近の街から家宝の『万年不滅の灯火(まんねんふめつのともしび)』を略奪したというのは本当だな?」極不壊が背中の大剣の柄に手をかけながら、低い声で尋ねる。「ああ、間違いないよ、極不壊。……だが、見てごらん。あの門は厚さ一尺(約30センチ)の純鉄で作られている。いかに君が『剛刃破天』の二つ名を持つ強者だとしても、正面から叩き割るには骨が折れるだろう? ここは私の幻術で、門番の目を欺いて忍び込むのが――」「フン、小細工などいらん」極不壊は白霧幻の言葉を遮ると、背中から大剣『万鈞』を引き抜いた。「我が一振に迷いなし……。天道歪まば、この鉄塊にて、悪鬼の命運を叩き斬らん!」極不壊が裂帛(れっぱく)の気合と共に、その巨大な剣を門へと叩きつけた。――ドオォォォォン!!!凄まじい爆音が岩山にこだまする。純鉄の堅牢な門は、極不壊の圧倒的な腕力と気功によって内側へと文字通り「ひしゃげて」吹き飛んだ。「……やれやれ。本当に君の力技には、風情というものが微塵も感じられないねぇ」白霧幻は呆れたように溜息をつき、立ち込める土煙を煙管で払った。「侵入者だ! 叩き殺せ!」門が破られたことで、砦の中から数百人もの武装した盗賊たちが一斉に溢れ出してきた。さらには、砦の壁上から、無数の毒矢が雨あられと降り注ぐ。「ハァァァッ!」極不壊は迫り来る矢の嵐に対し、ただその巨大な剣を風車のように振り回した。あらゆる飛び道具を完璧に弾き返し、近づく盗賊たちをその質量だけで次々と壁の向こうへと叩き飛ばしていく。しかし、砦の奥から、禍々しい漆黒の鎧をまとった頭目――鉄鬼(てっき)が現れた。鉄鬼の手には、いかなる名刀をも一撃でへし折るという巨大な戦斧『断岩斧(だんがんふ)』が握られている。「ガハハハ! 面白い、力自慢の馬鹿が飛び込んできたか! だが、我が斧の錆びにしてくれるわ!」鉄鬼の放った一撃は、大地を割るほどの威力だった。極不壊は剣でそれを受け止めるが、激しい衝撃波が二人の足元を裂いた。「ほう、俺の斧を受け止めるか! だが、これならどうだ!」鉄鬼が合図を送ると、砦の周囲に仕掛けられていた道術の罠が発動した。極不壊の足元の地面が突如として底なしの泥沼へと変化し、彼の巨体がじわじわと地中に沈み込んでいく。「しまっ――身動きが……!」「ハハハ! 動けねばただの的だ! 死ねぃ!」鉄鬼が勝ち誇り、極不壊の脳天めがけて戦斧を振り下ろした。――カラン。静かな音が響いた。次の瞬間、鉄鬼の戦斧が極不壊の頭に届く直前で、世界がガラリと反転した。気がつくと、鉄鬼が斧を振り下ろしていた相手は、極不壊ではなく――なんと、自分の最側近である部下の首領だった。「ぎゃあぁっ!?」部下が悲鳴を上げて倒れる。「な、何だと!? 極不壊はどこへ行った!」鉄鬼が驚愕して周囲を見回すと、泥沼に沈んでいたはずの極不壊は、いつの間にか罠の外で平然と立っていた。そして、その傍らで、優雅に煙管の紫煙をくゆらせている白霧幻の姿があった。「おや、不思議そうな顔をしているねぇ、鉄鬼」白霧幻の瞳が、妖しく細められる。「貴様……いつの間に術を……!?」「君が罠を発動させたその瞬間さ。私の『臨風吐霞』の術はね、人の五感だけでなく、空間の認識すら霧に巻く。君は極不壊を泥沼にハメたつもりだったようだが、実際にハメられていたのは、君の大切な部下たちの方だったのさ。……ほら、君の足元を見てごらん?」鉄鬼が慌てて自分の足元を見ると、底なしの泥沼に沈み、身動きが取れなくなっているのは、他ならぬ鉄鬼自身と、残された盗賊たちだった。「う、嘘だ……! 我が砦の罠が、なぜ俺たちを……!」鉄鬼は絶望に顔を歪ませ、泥の中で必死にもがく。白霧幻はその醜く歪んだ絶望の表情を、うっとりとした表情で見つめながら、深く煙を吸い込んだ。「ククク……素晴らしい。己が完璧と信じた罠で、自らが泥に塗れる。これ以上の喜劇が他にあるかね? 君たちの誇りと、その強欲の結末に、ふさわしい舞台だよ」「おい、白霧幻。悪趣味な観察はそこまでにしておけ。……トドメは俺が刺す」極不壊が一歩前に出た。泥沼で動けない鉄鬼に向けて、その巨大な『万鈞』を、容赦なく振り上げる。「待て! 頼む、命だけは――!」「問答無用!」ドゴォォォン!!!極不壊の放った一撃が、鉄鬼の武器もろとも、彼らの戦意を完全に叩き潰した。砦の奥から無事に『万年不滅の灯火』を回収した極不壊は、それを懐にしまい、大剣を背中に戻す。「ふぅ。今回も貴様の不気味な術に助けられたな、白霧幻。……だが、借りにしたつもりはないぞ」「おお、手厳しいねぇ。私はただ、極上のエンターテインメントを楽しませてもらっているだけさ」白霧幻はクククと笑いながら、再び夕闇の霧の中にその白い姿を消していく。極不壊は呆れたように鼻を鳴らすと、その背中を追って、静かに歩き出すのだった。
#隠し子
コメント
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わあ、第3話、読み終わりましたよ…!もう冒頭から「剛刃破天」の極不壊が門をぶち破るシーンで痺れました。力技一辺倒かと思いきや、白霧幻の「臨風吐霞」でまんまと敵を欺くコンビネーションが本当に鮮やかで。二人の凸凹感がたまらないですね。最後の鉄鬼の絶望描写も、白霧幻の悪趣味なまでの美学が滲んでいてゾクゾクしました。次も絶対読みます!