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父は俯いたまま言った。
「…俺にはもう”正しい”が分からないんだ…」「制服を着なければ命はない。命がなければエスターを守れない。」
「…そう思っていた。エスターに嫌いって言われてようやく気づいた。」
パパの声は風よりも小さかった。
「本当に遅くなってごめん。制服を着ずに、エスターを守る。」
私は何も言わずに「ナチスの方にいかなで」ど小さい声だけど繰り返した。
そしたら、パパは頷いてくれた、あの小さい頃に見た、柔らかい笑顔で。
パパは私の手を優しく繋いだ。
その手は悲惨な現実を忘れさせてくれる優しい手。
戦争を支える側の手じゃなくて、娘を愛する手。
私はパパの手を握り返した。
「すまない」パパはその言葉を言わなかった。
それで良かった。
それ以上の言葉なんていらない。
どんなに謝られても私はきっと許せない。
でも、許さなくても一緒にいれる。それを私はやっと知った。
私たちは並んで歩いた、どこへ行くのか、何も分からない。でもそれが楽しかった。小さい頃を思い出す。
パパは私に合わせて歩いてくれた。
「…少しだけ信じてくれるか?」
私は笑って頷いた。
これが始まりなのかも知れない。
関係を戻さないんじゃない。「ここから」始めるだけ。