テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
°*シャチのえさ✝*°
つくつくhat
86
84
続き
一応言っておきますが、今回での挿絵は本来ならデジタルで描かれるはずが、主がマイペースすぎるせいでアナログになってしまいました☆
しかもちょっと雑i((((
なので申し訳ないですがちょっとクオリティが下がってるかもしれません(?)
それでは本編どうぞ!!
八月十四日――海
翌朝になっても、昨日の墓地で生まれた小さな亀裂は、完全には消えていなかった。
昨夜、眠ったアメリカが無意識のうちに日本の布団へ転がり込み、その身体を抱きしめたことで、
少なくとも日本の中にあった怒りのようなものは随分と薄らいでいた。
それでも、だからといって何もなかったことにはできない。
朝食を囲む二人の会話は昨日より幾分柔らかくなっていたものの、
ふと沈黙が訪れるたび、墓前に置かれた線香と、行き場を失った赤い薔薇が二人の頭をよぎった。
そんな空気の中で、日本が切り出したのが海だった。
「……今日は、海へ行きませんか。」
味噌汁の椀を置きながら、日本はなるべく何でもないことのように言った。
「ここから、それほど遠くありません。」
「せっかく八月にいらっしゃったんですから、」
「家にいるだけというのも勿体ないでしょう。」
アメリカは一瞬だけ目を丸くした。
昨日のことがあったから、
もしかすると今日は別々に過ごすことになるのではないかと、
ほんの少しだけ覚悟していたのだ。
🇺🇸「……いいのか?」
🇯🇵「何がです?」
🇺🇸「いや……俺と行って。」
その問いに、日本は箸を止めた。
しばらくアメリカを見つめたあと、ほんの少し困ったように眉を下げる。
🇯🇵「……行きたくなければ、そもそも誘いませんよ。」
🇺🇸「…………そっか。」
アメリカは、それ以上何も言わなかった。
ただ、少しだけ嬉しそうに笑った。
家を出ると、昨日と変わらない猛暑が待っていた。
照りつける日差しに蝉時雨。
住宅街のアスファルトには陽炎が揺れ、
遠くには夏の雲が大きく膨らんでいる。
二人は海へ続く道を並んで歩いたが、その間には微妙な距離が残っていた。
昨日までなら、
アメリカが日本の肩を抱いたり、
くだらない冗談を言って笑わせたりしていただろう。
今日はしない。
日本もそれに気付いていた。
時折、隣を歩くアメリカの手が視界に入る。
昨夜、自分を抱きしめていた手。
けれど今は、触れようとすれば届く距離にあるのに、
どちらからも伸ばそうとはしなかった。
🇺🇸「……暑いな。」
🇯🇵「八月ですから。」
🇺🇸「それ昨日も聞いたぜ?」
🇯🇵「昨日も八月でしたから。」
🇺🇸「まぁそりゃそうだけどさぁ…笑」
思わず二人とも笑った。
ほんの一瞬だけ、いつもの空気が戻る。
けれど笑い声が途切れると、また蝉の声だけが二人の間へ入り込んだ。
それでも昨日とは違う。
沈黙が、痛いだけではなくなっていた。
海へ着いた頃には、二人ともすっかり汗をかいていた。
目の前には、夏の日差しを反射して眩しく輝く海が広がっている。
水平線は白く霞み、沖合では小さな船がゆっくりと進んでいた。
砂浜には家族連れや学生たちの姿があり、波打ち際から笑い声が聞こえてくる。
「……きれいですね。」
日本が目を細める。
🇯🇵「こうしてゆっくり海を見るのは…久しぶりかもしれません。」
🇺🇸「…俺も。」
アメリカは答えてから、少し考えて付け足した。
🇺🇸「……こういう海は、だけど。」
日本はその意味を聞かなかった。
海というものが、彼らにとって必ずしも楽しい記憶だけを持つ場所ではないことくらい、
分かっていたからだ。
だから日本は、代わりに砂浜の向こうを指差した。
🇯🇵「少し、向こうへ行ってみませんか?人も少ないようですし。」
二人は人混みを離れ、海岸沿いを歩いていった。
やがて砂浜は途切れ、潮風に削られた岩場へ変わっていく。足元に気を付けながら岩を越えていると、アメリカがふと足を止めた。
🇺🇸「日本。」
🇯🇵「はい?」
🇺🇸「手。」
差し出された掌を見て、日本は固まった。
🇯🇵「……何ですか。」
🇺🇸「ここ滑るから。」
🇯🇵「………」
🇯🇵「大丈夫です。」
🇺🇸「昨日転びかけただろ?」
🇯🇵「それはあなたが走ったからでしょう?」
🇺🇸「こ、今日は走らねえから!」
🇯🇵「…信用できません。」
そう言いながらも、
日本は少し迷った末、その手に自分の手を重ねた。
恋人のように指を絡めるわけではない。
ただ、転ばないため。
そう自分に言い聞かせるような握り方だった。
アメリカも何も言わなかった。
少しだけ強く握り返しただけだった。
岩場を進んでいくうちに、二人は小さな海食洞を見つけた。
入口は人ひとりが余裕をもって通れるほどで、
奥へ行くにつれて外の喧騒が遠ざかっていく。
洞窟の中は驚くほど涼しく、岩肌から落ちた雫が、
ときおり水面へ小さな音を立てていた。
🇺🇸「おお……!天然のクーラーだなぁこりゃ。」
🇯🇵「先ほどまで暑い暑いと騒いでいた人には丁度いいですね^^」
🇺🇸「は…はぁ?」
🇺🇸「日本だって汗だくだったじゃんか!」
🇯🇵「私はあなたみたいに騒いでいませんよ~」
日本は軽やかな口調でからかってくる。
対してアメリカは何も言い返せず、不満そうな顔でぎゅむ、と口をつぐむ。
───そんな他愛のない会話をしながら、二人は少し奥へ進んだ。
外から差し込む光が届く、平らな岩に腰を下ろす。
そこで、また静かになった。
ざあ、と洞窟の外で波が砕ける。
先ほどまで聞こえていた海水浴客の声は、ここまでは届かない。
――二人だけだった。
日本は膝の上で手を組み、
アメリカは海を見ている。
昨日からずっと避け続けてきたものが、
逃げ場のない洞窟の静寂の中で、ようやく二人の間へ姿を現した。
先に口を開いたのは、アメリカだった。
「……昨日のことなんだけど、さ。」
日本の肩が、わずかに揺れた。
🇯🇵「はい。」
🇺🇸「あの薔薇…」
それだけで、彼は何の話か分かった。
🇺🇸「俺、実はさ…………」
アメリカは勇気を出して、その先の言葉を口に出す。
「墓に供えるために買ったんじゃないんだ。」
日本がゆっくりと顔を上げた。
アメリカは困ったように笑っていた。
🇺🇸「……あれ、日本にやろうと思って買った。」
🇯🇵「…………私に?」
🇺🇸「そう。」
アメリカは頭を掻いた。
🇺🇸「俺んところの空港で見つけてさ。」
🇺🇸「なんか……綺麗だったし。」
🇺🇸「日本って自分じゃああいう派手なの買わないだろ?」
🇺🇸「だから、たまにはいいかなって。」
日本は何も言えなかった。
昨日の墓前。
真っ赤な薔薇を持つアメリカ。
そして自分が口にした言葉が、次々と思い出される。
『*せめて、もう少し考えていただきたかったです。*』
胸の奥が、きゅっと縮んだ。
🇯🇵「じゃあ……どうして、あの時……」
🇺🇸「言えなくなったんだよ。」
アメリカの声から、いつもの軽さが消えた。
🇺🇸「あの墓に書いてある名前を見たら……頭、真っ白になった。」
日本は黙って聞いていた。
🇺🇸「あいつの墓だって知らなかった。」
🇺🇸「日本が毎朝そこに行ってたことも…知らなかった。」
🇺🇸「で……昔のこと、ちょっと思い出して、、」
波の音だけが響く。
🇺🇸「その横に日本がいてさ。」
🇺🇸「俺が薔薇持ってて。」
🇺🇸「……そこで『これ君にあげようと思ってたんだ』なんて言えなかった。」
アメリカは俯いた。
🇺🇸「だから変なこと言った。供えようかなってさ。」
小さく笑う。
🇺🇸「最悪だろ。」
🇺🇸「日本を喜ばせたかっただけなのに、逆に怒らせて。」
🇯🇵「…………」
日本は黙り込む。
二人の間に、沈黙が下りたその瞬間。
「…怒っていませんよ。」
反射的に日本が答えた。
驚いたアメリカは反射的に顔を上げる。
日本は一度唇を結んだ。
昨日も同じことを言った。
けれど今度は、少し違った。
🇯🇵「……いえ、」
自分で訂正する。
🇯🇵「少し、怒っていたのかもしれません。」
アメリカが目を瞬いた。
🇯🇵「ただ……薔薇そのものに怒っていたわけではありません。」
🇯🇵「父の墓前で、あなたがあまりにも普段通りに見えたから……。」
日本は自分の手元へ視線を落とした。
🇯🇵「私だけが、昔のことを気にしているように思えてしまったんです。」
初めて口にした本音だった。
🇯🇵「父にも非があったことは分かっています。」
🇯🇵「あの時代が、どちらか一方だけのせいだったとも思っていません。」
🇯🇵「それでも私にとっては……父でしたから。」
声が少しだけ震えた。
🇯🇵「私を………育ててくれた人でしたから。」
アメリカは何も言わなかった。
🇯🇵「だから、あなたを責めたいわけでも、嫌いになったわけでもないのに……」
🇯🇵「あの名前の前にあなたが立っているのを見たら、どうしていいのか分からなくなって。」
日本は困ったように笑った。
🇯🇵「……随分、勝手ですね。私ったら。」
🇺🇸「勝手じゃない。」
即答だった。
日本が顔を上げる。
そして目線を隣に向けると、アメリカは真っ直ぐこちらを見ていた。
🇺🇸「俺だって昨日、あの名前見た瞬間、昔に戻ったみたいになった。」
🇯🇵「……アメリカさん。」
🇺🇸「日本だけじゃないさ。」
その一言で、日本の表情が崩れた。
ずっと自分一人だけが過去を引きずっているのだと思っていた。
けれど違った。
アメリカも覚えている。
アメリカも苦しんでいる。
それでも、この人は今、自分の隣にいる。
🇯🇵「……ごめんなさい。」
🇺🇸「なんで日本が謝るんだよ。」
🇯🇵「薔薇のこと……あんな言い方をしてしまって。」
🇺🇸「俺も説明しなかったし。」
🇯🇵「…でも。」
🇺🇸「じゃあ、お互い様だな。」
アメリカが笑った。
昨日まで何度も見せた、 誤魔化すための笑顔ではなかった。
🇯🇵「………」
日本はしばらくその顔を見つめ、
🇯🇵「……そういうことに、しておきましょうか。」
と、ようやく笑った。
――洞窟の外から波の音が聞こえる。
何かが劇的に変わったわけではない。
過去が消えたわけでも、
父への複雑な思いがなくなったわけでもない。
ただ、昨日から二人の間に挟まっていた小さな棘だけが、
ようやく抜けたような気がした。
アメリカが立ち上がる。
🇺🇸「じゃ、戻るか。」
🇯🇵「はい。」
日本も立ち上がった。
洞窟の入口へ向かおうとして――ふと止まる。
🇯🇵「……アメリカさん。」
🇺🇸「ん?」
🇯🇵「帰ったら、、、」
日本は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
🇯🇵「……あの薔薇、改めていただいてもいいですか…?///」
数秒。
アメリカは何も言わなかった。
🇯🇵「……あ…アメリカさん?」
🇺🇸「いや。」
🇺🇸「ちょっと待って。」
彼の口元が、にんまりと笑う。
🇺🇸「今の、もう一回言って?^^」
🇯🇵「っ!?///」
🇯🇵「い、嫌ですっ!!」
🇺🇸「Please!」
🇯🇵「絶対に嫌ですっっ!!!///」
🇺🇸「おねがいだよぉ!言ってくれよJAPAAAN~!!」
🇯🇵「帰りますよ!!!//」
逃げるように洞窟から出ていく日本を、アメリカが笑いながら追いかけた。
昨日から初めてだった。
二人の笑い声が、何の引っ掛かりもなく重なったのは。
それからの時間は、不思議なくらい穏やかだった。
岩場を歩くとき、日本はもう差し出された手を断らなかった。
とはいえ恋人同士のように指を絡める勇気まではなく、ただ掌を重ねているだけ。
それでも昨日までの二人にはなかった温度だった。
やがて岩場の上へ登り、二人で海を見下ろす。
水平線まで広がる青。
砕けた波が白い飛沫となり、潮風が二人の肌を涼ませる。
🇯🇵「……きれいですね。」
日本が呟いた。
🇺🇸「だろ?」
なぜかアメリカが得意そうに言う。
🇯🇵「あなたの海ではありませんよ。」
🇺🇸「細かいなあ。」
🇯🇵「事実です。」
🇺🇸「じゃあ来年も一緒に見ようぜ。」
日本が振り向いた。
アメリカは海を見たまま、何でもないことのように続ける。
🇺🇸「来月も、その次も来るけどさ。こういう夏の海は、また一年後だろ。」
🇯🇵「……来年。」
🇺🇸「うん。」
日本は少し考えてから、小指を差し出した。
🇯🇵「約束、ですよ。」
🇺🇸「指切り?」
🇯🇵「アメリカさんが破りそうなので。」
🇺🇸「失礼だな!?」
笑いながら、アメリカも小指を絡めた。
🇯🇵「指切りげんまん――」
日本が小さく歌い始める。
🇯🇵「嘘ついたら、針千本――」
🇺🇸「いや待て待て待て、!?罰重くねぇか!?」
🇯🇵「日本では普通です^^」
🇺🇸「普通じゃねえって!!!」
日本が声を上げて笑った。
アメリカも笑う。
昨日とは違う。
今度こそ本当に、元に戻れた。
――その時だった。
🇺🇸「……。」
アメリカの笑い声が、不意に止まった。
視線が、日本の肩越しへ向いている。
日本は首を傾げた。
🇯🇵「アメリカさん?」
返事がない。
海面。
逆光の中。
岩場から少し離れた場所に、人影が立っている。
くすんだ緑色の軍服のような輪郭に、
顔に紅く目立っている旭日の印。
腰から下は、波の向こうへ溶けるように薄れているが、
見間違えるはずがなかった。
昨日、墓前に立っていた男。
そして――遥か昔。
まだ生きていた頃に、何度も対峙した男。
大日本帝国。
アメリカの指から、少しだけ力が抜けた。
それに気付いた日本が、繋いだままの手を見下ろす。
🇯🇵「……どうしました?」
🇺🇸「…………いや。」
アメリカは目を逸らさない。
黒い影もまた、じっとこちらを見ている。
いや。
正確には――
アメリカだけを見ていた。
🇺🇸「……なんでもない。」
そう答えながら、アメリカは無意識に日本の手を握り直した。
すると黒い影の視線が、ゆっくりと下がる。
二人の繋がれた手へ。
🇺🇸「…………。」
アメリカの背中に、嫌な汗が流れた。
日本は何も知らない。
🇯🇵「……アメリカさん?」
🇺🇸「……日本。」
🇯🇵「はい、?」
🇺🇸「とりあえず……」
アメリカは乾いた笑みを浮かべた。
🇺🇸「……手、離さないでいてくれる?」
日本は不思議そうに瞬きをした。
それでも、
🇯🇵「……約束しましたから。」
と、小さく握り返した。
その瞬間。
遠くに立つ日帝の目が、
すっと細められた。
次回へ続く………
コメント
8件
うわぁぁぁ…アメさんと日本さんの生足だぁ…!笑顔も可愛くて墓に埋まりたいよ…! にてさんがみてるのがちょっと怖いですね…!
やっぱ仲良くしてるのがいちばんいいんだなぁ
うあーん😭(´;ω;`) 良かった( ; ; )仲直り(?)ができてッ…… にてちゃん……