テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
【前回のラスト】
🇺🇸「……。」
アメリカの笑い声が、不意に止まった。
視線が、日本の肩越しへ向いている。
日本は首を傾げた。
🇯🇵「アメリカさん?」
返事がない。
海面。
逆光の中。
岩場から少し離れた場所に、人影が立っている。
くすんだ緑色の軍服のような輪郭。
腰から下は、波の向こうへ溶けるように薄れている。
見間違えるはずがなかった。
昨日、墓前に立っていた男。
そして――遥か昔。
まだ生きていた頃に、何度も対峙した男。
大日本帝国。
アメリカの指から、少しだけ力が抜けた。
それに気付いた日本が、繋いだままの手を見下ろす。
🇯🇵「……どうしました?」
🇺🇸「…………いや。」
アメリカは目を逸らさない。
黒い影もまた、じっとこちらを見ている。
いや。
正確には――
アメリカだけを見ていた。
🇺🇸「……なんでもない。」
そう答えながら、アメリカは無意識に日本の手を握り直した。
すると黒い影の視線が、ゆっくりと下がる。
二人の繋がれた手へ。
🇺🇸「…………。」
アメリカの背中に、嫌な汗が流れた。
日本は何も知らない。
🇯🇵「……アメリカさん?」
🇺🇸「……日本。」
🇯🇵「はい、?」
🇺🇸「とりあえず……」
アメリカは乾いた笑みを浮かべた。
🇺🇸「……手、離さないでいてくれる?」
日本は不思議そうに瞬きをした。
それでも、
🇯🇵「……約束しましたから。」
と、小さく握り返した。
その瞬間。
遠くに立つ日帝の目が、
すっと細められた。
【続き】
アメリカが岩場を降りていくと、
その背後を追うように、黒い影もまたゆっくりと動いた。
足音はない。
波に濡れた岩の上を歩いているはずなのに、水を踏む音さえしない。
ただ夕陽を背負った軍服姿の輪郭だけが、一定の距離を保ったままアメリカについてくる。
やがてアメリカは立ち止まった。
°*シャチのえさ✝*°
つくつくhat
86
84
「……なあ」
返事はない。
それでも振り返らず、海を見たまま続ける。
「さっきからいるの、分かってるぜ」
数秒の沈黙。
すると背後から、突然低い声がした。
「……気付いていたか」
その声を聞いた瞬間、アメリカの肩がわずかに強張った。
何十年経っても忘れられない声だった。
ゆっくりと、振り返る。
そこに立っていたのは、
濡れた軍服を纏った男――大日本帝国だった。
生前と変わらぬ鋭い眼差しで、真っ直ぐアメリカを睨んでいる。
🇺🇸「……久しぶりだな」
🇯🇵☀️「貴様と再会を喜ぶ仲になった覚えはない」
🇺🇸「へっ。相変わらずだな」
軽口を叩いてみせたものの、アメリカの笑みはどこかぎこちなかった。
大日本帝国はそれを見逃さない。
🇯🇵☀️「……貴様。俺の息子に何をした」
🇺🇸「…What?」
🇯🇵☀️「とぼけるな」
一歩。
一歩。
日帝が近づく。
🇯🇵☀️「昨日から様子がおかしいな?米帝。」
🇯🇵☀️「あれほど貴様が来る日を待っていたというのに、」
🇯🇵☀️「顔を合わせれば互いに腫れ物へ触れるような有様だ」
アメリカの表情から、笑みが消えた。
🇺🇸「……知ってたのか」
🇯🇵☀️「何をだ」
🇺🇸「あいつが……俺が来るの、楽しみにしてたって」
日帝は答えなかった。
ただ、その沈黙だけで十分だった。
アメリカは苦笑し、海へ視線を逃がした。
🇺🇸「……俺、昨日やらかしたんだよ」
ぽつり、ぽつりと話し始める。
墓地でのこと。
日本を喜ばせたくて持ってきた花が、結果として彼の大切な場所を乱してしまったこと。
墓石に刻まれた名を見て、過去を思い出したこと。
そして、日本の父を奪った側の自分が、そんな日本を好きになってしまったこと。
最後の一つだけは、口に出すまで随分と時間がかかった。
🇺🇸「……今日、告白するつもりだった」
大日本帝国の眉がぴくりと動く。
🇯🇵☀️「…………何だと?」
🇺🇸「だから。その……俺、日本のことが好きなんだ」
🇯🇵☀️「…………」
🇺🇸「いや怖ぇよその顔()」
日帝の目つきが、一段と険しくなった。
🇯🇵☀️「……貴様」
彼は腰に備わった鞘からすらり、と刀身を晒し出す。
🇺🇸「待て待て待て! まず最後まで聞けって!」
アメリカは思わず両手を上げる。
かつて太平洋を挟んで睨み合った相手に対して取る姿勢にしては、あまりにも情けない。
だが大日本帝国は笑わなかった。
🇯🇵☀️「……ふざけるなよ」
低い声だった。
🇯🇵☀️「貴様が、あの子を?」
🇺🇸「……嗚呼」
🇯🇵☀️「誰の息子か理解して言っているのか」
その言葉だけは、アメリカにも刺さった。
そう。
目の前にいる人物を殺めた人物こそ自分なのである。
それなのに、その人から息子を取ろうとまでしようとしているのだ。
改めて――自身のやっていることの罪深さが身に染みて分かった。
しばらく黙ったあと、彼は静かに頷いた。
🇺🇸「分かってる」
🇯🇵☀️「なら――」
🇺🇸「だから怖ぇんだよ」
日帝が口を閉ざした。
アメリカは拳を握る。
🇺🇸「俺だって忘れてねえよ。」
🇺🇸「お前と戦ったことも、お前がどうなったかも。」
🇺🇸「日本がそれを全部知った上で俺と笑ってることも…」
いつもの大袈裟な身振りも、冗談めいた笑顔もなかった。
🇺🇸「好きになっちまったからって……昔のことが消えるわけじゃねえ。」
🇺🇸「………それくらい分かってる。」
波が一つ、岩へ砕ける。
🇺🇸「だから俺……日本に言っていいのか分かんなくなった」
日帝は黙っていた。
やがて視線を逸らし、遠く岩場の上を見る。
そこには、こちらの会話など知る由もなく、アメリカの帰りを待っている日本がいる。
🇯🇵☀️「……あいつは、知っているのか」
🇺🇸「俺の気持ち?」
🇯🇵☀️「違う。」
🇯🇵☀️「貴様自身が、まだ過去を引きずっていることだ」
アメリカは目を見開いた。
🇺🇸「……たぶん、知らない」
🇯🇵☀️「ならば勝手にあの子の答えまで決めるな」
🇺🇸「……え?」
大日本帝国は忌々しげに眉を寄せた。
🇯🇵☀️「貴様を許したかどうかを決めるのも、貴様を好くか嫌うかを決めるのも、あの子自身だ。」
🇯🇵☀️「貴様ではない。」
アメリカは何も言えなかった。
まさか、この男からそんな言葉を聞くとは思わなかった。
🇺🇸「……それってさ」
恐る恐る、口元が緩む。
🇺🇸「も…もしかして俺のこと、認め――」
🇯🇵☀️「調子に乗るなクソ米帝が」
🇺🇸「ですよねぇー!!☆」
即答だった。
日帝は深い溜息を吐く。
🇯🇵☀️「俺は今でも貴様が嫌いだ」
🇺🇸「知ってる」
🇯🇵☀️「顔を見るだけで腹が立つ」
🇺🇸「それも知ってる」
🇯🇵☀️「できることなら今すぐ刀でみじん切りにしてやりたい。」
🇺🇸「それは初耳だな!?」
🇯🇵☀️「だが――」
そこで言葉が止まった。
日帝はもう一度、日本のいる方を見る。
その眼差しだけが、不思議なほど穏やかだった。
🇯🇵☀️「……あの子が貴様といる時に笑っていることも、俺は知っている」
アメリカから言葉が消えた。
🇯🇵☀️「俺が死んでからも、あの子は生きてきた。」
🇯🇵☀️「ならば……これから先まで俺の死に付き合わせる道理はない」
🇺🇸「…………」
🇯🇵☀️「だからといって、貴様に譲ったつもりはないぞ?」
🇺🇸「いやそこは譲ってくれよッ!?」
🇯🇵☀️「黙れ」
けれど、その「黙れ」は、昔よりほんの少しだけ柔らかかった。
大日本帝国は踵を返す。
その輪郭が夕暮れの光へ溶け始める。
🇺🇸「待てよ」
アメリカが呼び止めた。
🇺🇸「……俺、日本に言ってもいいのか?」
大日本帝国は振り返らなかった。
🇯🇵☀️「俺に聞くな」
🇺🇸「…………」
🇯🇵☀️「あの子に聞け」
それだけだった。
草柳色の軍服の輪郭が、潮風の中へ消えていく。
あとには波の音しか残らなかった。
アメリカはしばらくその場所に立ち尽くしていたが、
やがて岩場の上で待つ日本へ目を向ける。
🇺🇸「……ったく」
小さく笑う。
🇺🇸「最後まで怖ぇ親父だな、お前」
そして今度は、
先ほどより少しだけ軽くなった足取りで、日本のもとへ戻っていった。
アメリカが岩場から戻ってきた頃には、
昼間あれほど白く眩しかった海も、すっかり色を変えていた。
水平線へ傾いた太陽が海面を橙色に染め、その上を細かな光が揺れている。
昼間の喧騒は遠のき、
聞こえるのは寄せては返す波の音と、時折吹き抜ける潮風だけだった。
アメリカは少し前を歩きながら、何度か後ろを振り返った。
日本はちゃんとついてきている。
洞窟の中で話したあとから、二人の間を覆っていた重たい空気は随分と薄くなっていた。
けれど、完全になくなったわけではない。
むしろ今は、壊してしまわないようにお互いが慎重に扱っているような、
不思議な静けさがあった。
🇺🇸「……日本」
呼ばれて、日本が顔を上げる。
🇺🇸「手、大丈夫か?」
🇯🇵「え?」
言われて初めて気がついたらしい。
日本は自分の右手へ目を落とした。
わずかに、震えていた。
洞窟の中で大日本帝国のことを話してから、ずっと。
🇯🇵「……冷えているだけですよ」
🇺🇸「嘘つけ」
即答だった。
日本が困ったように眉を下げる。
🇯🇵「いや、本当に……」
🇺🇸「じゃあ貸せ」
🇯🇵「え?」
アメリカは半ば強引にその手を取った。
昨日なら、日本は反射的に振りほどいていたかもしれない。
だが今日は違った。
一瞬驚いたように指を強張らせただけで、やがて力を抜いた。
🇯🇵「……アメリカさんの手、暑いですね」
🇺🇸「お前のが冷たすぎんだよ」
🇯🇵「そうでしょうか…」
🇺🇸「そうだよ!」
そんな、どうでもいい会話だった。
けれど日本は、少しだけ笑った。
その横顔を見て、アメリカもようやく肩の力を抜いた。
二人はそのまま海岸沿いを歩いた。
しばらくして、日本がぽつりと口を開く。
🇯🇵「……父は、厳しい人でした」
アメリカが隣を見る。
日本は海を見たままだった。
🇯🇵「礼儀にも、言葉遣いにも、作法にも。」
🇯🇵「幼い頃は、どうしてこんなに細かいことまで叱られるのだろうと思ったこともあります」
潮風が二人を揺らす。
🇯🇵「でも……私が熱を出した日は、一晩中そばにいてくれました。」
🇯🇵「眠ったふりをしていたので、父は私が起きていたことを知らなかったでしょうけど」
懐かしむように、日本の目元が柔らかくなる。
🇯🇵「怖い人でしたよ。本当に」
🇺🇸「……うん、そうだな。」
🇯🇵「ですが、私にとっては、良い父でした」
アメリカは何も言えなかった。
昨日なら、その言葉を聞いただけで胸の奥に罪悪感が押し寄せていただろう。
だが今は、逃げずに聞こうと思った。
日本が大切にしているものを、自分の罪悪感だけで塗り潰してはいけない気がしたからだ。
🇺🇸「……なあ、日本」
🇯🇵「はい」
🇺🇸「俺さ。昨日……お前があの墓に毎日来てるって知ったとき、正直、どうすりゃいいかわかんなかった」
日本は黙って聞いている。
🇺🇸「俺がお前の親父に何したかなんて、忘れてねえよ。」
🇺🇸「忘れられるわけない。」
🇺🇸「だから……お前が俺と普通に話してんのも、本当は無理してんじゃねえかって思った」
🇯🇵「…………」
🇺🇸「毎月俺が来るたびに笑ってくれてたのも、全部」
そこまで言ったところで、日本が立ち止まった。
繋がれた手に引かれて、アメリカも止まる。
🇯🇵「それは違います」
穏やかな声だった。
けれど、はっきりとしていた。
🇯🇵「私は、アメリカさんが来るのを楽しみにしていました」
🇺🇸「……え」
🇯🇵「毎月、三日間だけでしょう?」
日本は少し恥ずかしそうに視線を逸らした。
🇯🇵「ですから……帰ってしまった次の日から、次はいつ来るのだろうと考えていました」
アメリカが目を丸くする。
🇺🇸「一ヶ月なんて、すぐじゃん」
🇯🇵「…アメリカさんには、でしょうね」
🇺🇸「え?」
🇯🇵「待つ側からすれば 、案外長いんですよ。」
その言葉に、アメリカは何も返せなくなった。
一年で十二回。
一度につき、たった三日。
一年のうち、二人が同じ場所で過ごせる時間はほんの僅かだ。
アメリカにとってその三日間が心の支えだったように、
日本にとってもまた、何気ない日常へ突然入り込んでくる賑やかな三日間は、
いつの間にか特別なものになっていた。
🇺🇸「……じゃあ、来月もまた来ていい?」
🇯🇵「来ないつもりだったんですか?」
🇺🇸「いやそうじゃねえけど!?」
日本がくすりと笑う。
するとアメリカは自信満々に小指を差し出す。
🇺🇸「俺、絶対約束するから!」
差し出した小指を、日本が呆れたように見つめる。
🇯🇵「…また指切りですか……?」
🇯🇵「子供みたいですね、アメリカさん」
🇺🇸「いいじゃん。日本式なんだろ?」
🇯🇵「そういうところだけ覚えるんですね……」
そう言いながらも、日本は自分の小指を絡ませた。
二人の声が、夕暮れの海へ溶けていく。
やがて歌い終えると、どちらからともなく指を離した。
けれど。
そのあと再び歩き始めたときには、
いつの間にか、
今度は普通に手を繋いでいた。
どちらも、そのことには触れなかった。
空が茜色から群青へ変わり始めた頃。
🇺🇸「そういや日本」
🇯🇵「はい?」
🇺🇸「明日、何する?」
アメリカは何気なく尋ねた。
🇺🇸「せっかく最後の日だしさ。なんか面白いことしようぜ」
日本の足が、一瞬だけ止まった。
🇯🇵「……明日、ですか」
🇺🇸「ん?」
🇯🇵「…………」
日本は少し迷った。
そして、静かに答えた。
🇯🇵「明日は、8月15日です」
その日付を聞いた瞬間。
アメリカから笑みが消えた。
言われなくても分かった。
🇺🇸「……終戦記念日」
🇯🇵「はい。」
波の音が、やけに大きく聞こえた。
日本は水平線の向こうを見つめる。
🇯🇵「毎年、父のお墓参りをしています。今年も……行くつもりです」
🇺🇸「そっか」
🇯🇵「ですから……」
そこで日本は言葉を止めた。
何かを迷うように唇を結ぶ。
そして突然、アメリカのほうを向いた。
🇯🇵「そのあと、夏祭りに行きませんか?」
🇺🇸「…………は?」
アメリカは本気で聞き間違えたと思った。
🇯🇵「夏祭り、です。」
🇺🇸「いや、それは聞こえたけど」
日本は自分でも妙なことを言っている自覚があるのだろう。眉を下げ、少し困ったように笑った。
🇯🇵「最低ですよね。」
🇯🇵「終戦記念日なのに……夏祭りに行こうだなんて…笑」
🇺🇸「…………」
🇯🇵「父のお墓参りをした、その日の夜にですよ…?」
乾いた笑いが零れる。
けれど、その目は笑っていなかった。
🇯🇵「不謹慎だと思います」
🇺🇸「………日本、」
🇯🇵「忘れたわけでもありません。父のことも、あの戦争のことも」
日本は一度、目を伏せた。
🇯🇵「忘れられるはずがありません」
それから、ゆっくりとアメリカを見る。
🇯🇵「ですが……忘れないことと、ずっとそこに留まり続けることは……」
🇯🇵「同じではないと思うんです。」
🇺🇸アメリカは黙っていた。
🇯🇵「父を大切に思うことと、今を楽しむことも……」
🇯🇵「きっと、両立していいはずです。」
その言葉は、まるで自分自身へ言い聞かせているようでもあった。
🇯🇵「……だから」
日本は、ほんの少しだけ笑った。
🇯🇵「明日の夜くらい、楽しく過ごしてもいいでしょうか」
アメリカは数秒、日本を見つめた。
そして。
🇺🇸「……ったく」
繋いでいた手を強く握る。
🇺🇸「そんな顔して誘われて、断れるわけねえだろ」
🇯🇵「アメリカさん……」
🇺🇸「行こうぜ。夏祭り」
いつもの調子で笑う。
🇺🇸「墓参りして、ちゃんと親父さんに挨拶して。それから行けばいい」
🇯🇵「…………はい」
🇺🇸「花火も見ようぜ。屋台も全部回る。」
🇯🇵「全部は無理ですよ 笑」
🇺🇸「じゃあ半分!」
🇯🇵「多いです」
🇺🇸「んじゃ3分の1!!」
日本がとうとう吹き出した。
🇯🇵「ふふっ……もう。分かりました」
その笑顔を見た瞬間。
アメリカの胸の奥で、昨日から絡まり続けていた何かが、
ようやくほどけた気がした。
帰り道―――
田舎道にはもう街灯がぽつぽつと灯り始めていた。
蝉の声に混じって、草むらから虫の音が聞こえる。
日本家屋の屋根が見えてきた頃には、空には薄く星が浮かんでいた。
🇺🇸「へへっ。そうと決まれば明日は忙しいな!」
アメリカが日本の手を引きながら笑う。
🇺🇸「昼は墓参りして、夜は祭りだ!」
🇯🇵「ちょ、ちょっとアメリカさんっ、引っ張らないでくださいっ!//」
そう言いながら、日本は手を離さなかった。
玄関へ着く。
日本が引き戸を開けると、
昼間の熱をまだ僅かに残した畳の匂いと、どこか懐かしい家の空気が二人を迎えた。
縁側の風鈴が、ちりん、と鳴った。
🇯🇵「アメリカさん、先にお風呂どうぞ」
🇺🇸「え、日本は?」
🇯🇵「お湯を沸かしておきます。それから夕食の準備も」
🇺🇸「相変わらず世話焼きだなぁ~」
🇯🇵「誰のせいだと思っているんですか」
🇺🇸「…もしかして、俺?笑」
🇯🇵「あなた以外に誰がいるんです?」
日本は呆れたように笑いながら、台所へ向かう。
けれど途中で、一度だけ立ち止まった。
🇯🇵「……アメリカさん」
🇺🇸「ん?」
🇯🇵「今日は……ありがとうございました」
アメリカが目を瞬く。
🇯🇵「海に誘ってくださったことも。」
🇯🇵「洞窟で……話を聞いてくださったことも」
🇺🇸「…………」
🇯🇵「昨日のままでは、きっと私は……何も言えないままでしたから」
アメリカは少しだけ黙った。
それから、照れ臭そうに鼻の下を擦る。
🇺🇸「俺も悪かったんだから、お互い様だろ」
🇯🇵「ふふっ。そういうことにしておきます」
再び、風鈴が鳴った。
日本は台所へ消えていく。
一人残されたアメリカは、
その後ろ姿を見つめながら、無意識に自分の胸元へ手を置いた。
明日。
最後の日。
8月15日。
――本当は、日本へ告白するためにここまで来た。
その目的を、まだ果たしていない。
昨日は言えるはずがなかった。
今日も、結局言えなかった。
なら、残されているのは、、明日だけだ。
🇺🇸「…………明日、か」
小さく呟く。
その声に答えるように。
ちりん、と。
夏の夜の風鈴が、もう一度鳴った。
そしてアメリカはまだ知らなかった。
翌日の夜。
夏祭りの喧騒から離れた古い神社で――
自分がもう一度、日本の父と向き合うことになるなど。
次回へ続く………
コメント
31件

最っ高すぎて〜滅!
これで振られたら私どんな顔すればいいの!?
にてさんが…お父さんしてる可愛い…!アメさんが終戦記念日ちゃんと知ってるのやっぱり引きずってることがわかりますね…!いやまじでゆうやみ飴様、小説家すぎる…!…続き待ってます!