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大通りへ止まるように運転手へ告げると、俺とミランは車から降りた。
名案の前にとりあえずこの二人をどうにかしないとな。
「どうしますか?」
「人目につかない場所を探そう」
ミランにそう告げると歩き始めた。
あのー。腕を組む意味は?
「おっ。あそこの路地裏に入ってみよう」
俺達が車を降りると、向こうは分かりやすくバイクから降りて尾けてきた。
まだ見失わずにつけてきている二人を確認して、路地裏へ流れるように二人で入っていった。
sideストーカー
「おいっ!行くぞ!」
くそっ。俺が初めにミランちゃんを見つけたのに!!
まぁ俺だけなら尾行して住んでいる家を見つけようなんてマネはしなかっただろうから仕方ないか……
「わかったよ。見失うなよ」
遂にミランちゃんのお家が……
「あれ!?いねーぞ!?」
五階建てくらいの建物と建物の間に、ミランちゃんを追って入った連れが何事か騒ぐ。
俺も急いでそこへ向かうと……
「行き止まり……おいっ!ミランちゃんはどこにいったんだよ!!」
「知るかよバカっ!!この辺にいるはずだ!手分けして探すぞ!!」
アイツはそう言って走っていったけど……
絶対ここに入ったよな?
二つの建物のこっち側には窓もないし、もちろん入口もない……
「消えちまった…」
side聖
「行ったな」
二人が行き止まりの所から居なくなったのを上から確認した。
「行きましたね。でも驚きました…いきなりだったので…」
そう言ったミランの顔は真っ赤だ。
俺がしたのは三角飛びの要領で二つの建物の壁を利用して、ミランを抱えて屋上まで跳んだだけだ。
「悪かったな。説明する前に良い場所が見つかってな」
「い、いえ。…重たくなかったでしたか?」
あぁ。年頃だもんな…そりゃ恥ずかしいわな。
ちょっと前までそんなことを気にせずに、お餅を10個も食べていたのに。
その後エリーと一緒に苦しんでいたけど……
「ミランは軽かったぞ?もう少し食べなきゃな?」
「こ、これ以上はダメですっ!聖さんは優し過ぎるので、そういった言葉は素直に受け取ってはダメだと、セーナさんが言っていました!」
あいつは……
「それは聖奈の好みの体型だ。真に受けるなよ?」
アイドルや二次元は細いからな……
俺は健康体が一番だ。
その後は転移でアパートまで帰り、今日の業務は終了した。
本来俺はミランにくっついていなくてはならないが、名案が浮かんでいたので聖奈に伝える為に日本へと転移した。
聖奈ならまだ起きているだろう。
案の定、聖奈は起きていた。
そして案の定、俺の名案は迷案だった……
「流石に馬鹿にし過ぎかと思ってたんだけど…本当に気付かなかったね…」
「…仕方ないだろっ!!いきなりミランがストーカーされてるなんて聞いたら、そんな考えに至らねーよ!!」
聖奈はとっくにボディーガードを雇っていた。
くそっ!!名案だと思ったのにっ!!
そもそも俺がボディーガードとして行く時点で気付けよな!!
俺じゃなくても雇えばいいって……
そういえば、俺を冴えない奴と言っていた社員が『新しいボディーガードですか?』って言っていたな。
あの時は気にしなかったけど、よく考えればそういうことだよな……
もちろん俺は自他共に認める過保護だから、どちらにしても自分の目で確認に行くけど。
「まぁお陰で聖くんも息抜きが出来たでしょ?
ホントは一人旅行で息抜きしてもらうつもりだったんだよ?」
そう…全ては最初から俺の勘違いが原因……
それがなければ今回のこともボディーガードを雇ったと報告するだけで良かったんだ……
「色々気を遣わせてすまん…」
「いいよ。でも後三日は続けてね?ボディーガードさんがまだ旅行から帰ってきていないから」
「…そいつって」
「女の人だから大丈夫だよ。はぁ…」
俺の別の心配に、遂にため息を吐かれてしまった……
愛想を尽かされる前にこの話はやめよう。
それからの三日間はミランと遊んで過ごした。
なんなら異世界でも連れ回して遊んでいたけど、それはライルに怒られた。
これだから仕事人間は……
「今日からはこっちで過ごすぞ」
ミランのボディーガードが帰ってきたのだ。
ミラン自体は異世界でも仕事があるから半分は向こうなんだけど、何故かこの五日間は俺といたな。
まぁそうでもしないと自発的に休んだりしないだろうから、偶には良いだろう。
「うん。寂しかった?」
寂しかったかと言われればノーだ。
だって、ミランと四六時中一緒だったからな。
だが俺もリア充の仲間入りを果たしたんだ。
ここで答えを間違うことはないっ!!
「聖奈に会えなくて寂しかったぞ」
…いや。だから…恥ずかしいなら聞くなよ……
「こほんっ。それから、式場は決まったよ。予約もしたから聖くんのご両親に連絡もしたよ」
「えっ?予約までしたのか…なんかこう…イメージなんだが、普通は新郎側も一緒に行って…」
もしや、俺の感覚は古いのか?
「普通はそうかもね。でも、聖くん面倒でしょ?」
「め、面倒っていうか…センスもないし…意見もないからなぁ。俺としては聖奈の好きにしてくれたらそれでいい」
「そ。それで好きにしたの。私の家族は呼ばないね。会ってわかったでしょ?呼んでも来ないし来ても嫌なだけだって。
私側の親族は叔父さんと母方の伯父さん家族だけの参加だよ。
四月に予約したけど、聖くんにお願いすることは…衣装のサイズ合わせくらいだから」
「わかった。また教えてくれ」
3ヶ月後なら丁度…いいのか?なんか早くね?
半年くらい前から予約するってイメージだったんだが。
これも古いのかも……
「ちなみにどこでするんだ?」
「うーん。ホントはサプライズにしたかったけど、どうせご両親やお姉ちゃんからバレるもんね。
聖くんが行きたいって言ってたアジアにしたの。インドネシアのバリ島で式を挙げるよ」
「本当か!?一応転移ポイントはあるけど、 観光はしていないから楽しみだな!」
転移ポイントを増やしていた時は、仕事のように飛行機で飛びまくって、主要都市で人目につかない所を探すことしかしていなかったからな。
行きたかったアジアの国々もいつか回ろうとその時に思っていたけど、転移でいつでもいけると思うと逆に足が遠のいてしまっていたな……
「あれ…でもいいのか?結婚式の主役は花嫁だぞ?俺は新婚旅行ででも、なんでも行く機会はあるから」
「いいの。私が本当に異世界場所には、すでに連れて行ってもらったから」
そんなことを真剣な眼差しで言われたら、おっちゃん泣いちゃうよ?
この時は幸せだったな。
そして、これからの幸せを何も疑っていなかった。
「ミランちゃんのストーカーさんが逮捕されたんだって」
いつもの朝食の席で聖奈が報告してきた。
「…それを今伝えたのは、一緒にいないと俺が飛んで行きそうだからか?」
「ううん。行きそうなんじゃなくて、必ず行ってるよ」
くっ…正解だっ!!
ミランは昨日の夜に異世界からヨーロッパへ送ったばかりだ。
「安心して。もう警察に捕まって今頃裁判を受けてるから、今から行っても何にもならないよ?」
それでも立ち上がり転移しようとしていた俺を聖奈が止めた。
「そ、そうか。無事ならいいんだ…でも、何か困ったことがあればすぐに教えてほしい。
ミランも聖奈も俺に遠慮し過ぎだ」
あれ?本当に遠慮か?
使えないから態々教えないだけなんじゃ……
「わかってるよ。ちなみにミランちゃんのストーカーさんが捕まったのはこれで四人目だから」
「えっ…なんで?」
「報告したら心配で寝れないでしょ?私達、明日結婚式を挙げるために出発するんだよ?」
それで今かよ…まぁそれだけ問題なかったということなんだろうな。
結婚式は問題なく終わった。
その後に、新郎から花嫁を新郎姉が奪うというハプニング(?)はあったが、犠牲者は聖奈だけで済んだからいいんだ。
見たいところも観光出来てリア充よろしく聖奈とバナナボートに乗れたし、何もいうことのない結婚式だったぜ!
不可抗力ではあるが、両親を海外旅行に連れて行けたしなっ!!
さて。今回は東雲聖で来ているから流石に転移では帰れないし、飛行機でゆっくり休むとするか!
「ファーストクラスって、最早空飛ぶ部屋だよね」
そうなんだ。
ファーストクラスって凄いんだね…お値段も凄いけど。
俺が転移ポイントを増やしていた時はエコノミーだったからな…聖奈からはビジネスに乗れるお金を貰っていたんだが、行く先々で酒を買っていたら足りなくなってしまったんだ……
懐かしい思い出だ。
「ま、社長と副社長の結婚式だからな!」
「普段は飛行機使わないもんね!」
しーーーっ!!