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果実少年

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果実少年

16 - Episode.16 梨のつぶて!サンダリオスの歴史

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2025年08月01日

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サンダリオス家の屋敷は、グランドランドの山脈に囲まれた荘厳な城だった。

石壁には古の魔法の紋様が刻まれ、窓からは炎と風の粒子が揺らめく。

広間では、エリザ、パイオニア、ルナが円卓を囲み、緊迫した作戦会議が開かれていた。

第15話でのセレスティア魔法学園での敗北――

アルフォンスの「記憶の鏡」と

レクトの巨大なレモンによる妨害――は、

彼らのプライドに深い傷をつけた。


サンダリオス家は、グランドランドの頂点に君臨する一族だ。屈辱は許されない。



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「アルフォンスの魔法…あの『記憶の鏡』は厄介だ。」


パイオニアの声は低く、炎のように熱を帯びていた。

国を守る仕事の長として、彼の炎魔法は敵を焼き尽くしてきたが、アルフォンスの心理戦には一瞬動揺した。

「奴は我々の心を揺さぶる。次は、もっと徹底的に叩く。」


ルナが冷たく笑う。

彼女の影魔法が、広間の床に黒い霧を漂わせる。

「あの老いぼれは問題じゃないわ。問題は…レクト。

あの落ちこぼれが、なぜあんな強大な魔法を?」

彼女の声には、弟への軽蔑と、どこか拭いきれない苛立ちが混じる。


エリザは黙って窓の外を見つめていた。彼女の風魔法は、感情が揺れるたびに空気を震わせる。

第7話の戦い、第15話の巨大レモン。

あのフルーツ魔法に、彼女は一瞬、息子の可能性を見た。

だが、パイオニアの圧力は彼女を縛る。


「レクトを…退学させるには、どうすれば…」


彼女の呟きは、ほとんど聞こえないほど小さかった。



パイオニアが拳を円卓に叩きつける。

炎の粒子が飛び散り、部屋が一瞬熱くなる。

「退学? そんな生ぬるいものではない。セレスティア魔法学園そのものを破壊する。それが、サンダリオス家の名を守る道だ。」

彼の目は、まるでレクトを焼き尽くすかのように燃えていた。




ルナが提案する。


「スパイを送り込むのはどう?

老いぼれ校長が厄介だというなら、

レクトの魔法を…『変更』させる。

フルーツ魔法を別の魔法にすれば、楽に丸く収まるじゃない。」



彼女の影が、まるで笑うように揺らめく。

エリザが顔を上げるが、言葉を発しない。

パイオニアが頷く。


「いい考えだ。レクトを内部から壊す。準備を進めよう。」






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Episode.16

梨のつぶて!サンダリオスの歴史


その夜、パイオニアは国を守る仕事の出張で屋敷を離れていた。

エリザは一人、屋敷の書斎に座り、

携帯を手に持つ。

窓の外では、夜の風が唸り、彼女の魔法が微かに反応する。


第15話のレクトの叫び――


「ただ、認められたかっただけだ!」――

が、彼女の胸を締め付ける。

彼女は迷いながら、レクトの番号を押した。


セレスティア魔法学園の星光寮。

レクトは自室のベッドに座り、

バナナの魔法の杖を握りしめていた。

ゼンの死、サンダリオス家の拒絶、第15話での戦い。

すべてが彼の心を重くする。



俺の魔法…学園を救ったけど…本当にそれでいいのか?



携帯が鳴り、画面に「母」と表示される。

心臓が跳ねる。震える手で電話を取る。



「…母さん?」

「レクト。」 エリザの声は、抑えた響きだった。

だが、どこか温かさが滲む。

「…少し、話したい。」


レクトの胸が締め付けられる。

第12話の電話、体育祭での彼女の揺れる視線。

母は、どこかで彼を認めようとしているのかもしれない。

だが、パイオニアとルナの影がちらつく。「何…?」


エリザは深呼吸し、話し始めた。

「サンダリオス家の歴史…知っておくべきだと思う。」

彼女の声は、まるで過去の重みを背負うようだった。

「我々は、グランドランドの守護者として、何百年も戦ってきた。パイオニアは…国のために、すべてを犠牲にしてきた。

彼の炎は、敵を滅ぼし、国を護るためのもの。だけど、…その重圧は、彼を厳しくした。」


レクトは黙って聞く。

エリザが続ける。


「レクトを追い出したのは…最終的にはパイオニアの決断よ勿論。

サンダリオス家の名は、完璧でなければならない。

彼にとって、フルーツ魔法は…弱さの象徴だった。まだ未熟なのもあって、私だって驚いたもの……。

レクトがその魔法に固執する限り、彼はきっと……レクトを認められない。」



「…どうして?」 レクトの声が震える。


「俺の魔法が…そんなに恥なの? ずっとずっと練習して……前よりは強くなってるのに!」


エリザの声が一瞬途切れる。

「…私だってレクトを認めてあげたい。だけどパイオニアの意志は…あまりにも強い。」


彼女の言葉には、母としての葛藤が滲んでいた。

「レクト…ごめん。それだけ知って欲しかったの」


電話が切れる。


レクトは携帯を握りしめ、ベッドに倒れ込む。


父さんが…僕を捨てた理由…



サンダリオス家の歴史、国の守護者としての重圧。理解はできた。


だが、納得はできなかった。

なぜ、僕の魔法じゃダメなんだ…?

ゼンの死、

家族の拒絶、

仲間を危険に晒した罪悪感。

すべてが彼の心を締め付ける。




レクトは立ち上がり、

寮のシャワー室に向かった。

薄暗いタイルの部屋で、シャワーの水音が響く。

彼は服を脱ぎ、熱い湯をかぶる。水が肌を叩き、髪を濡らす。そして目を閉じる。


*母さんの声…温かかった。

でも、父さんとルナは…*


水が涙と混じる。シャンプーを手に取り、髪を洗う。

泡が指の間を滑り、排水溝に流れていく。


シャワーを終え、タオルで体を拭く。

水滴が床に落ち、静かな音を立てる。



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彼は脱衣所に戻り、制服を着る。

シャツのボタンを留め、ズボンを履く。

鏡に映る自分の顔は、疲れと迷いに満ちていた。


(サンダリオス家の名なんて、僕には重すぎる…)


脱衣所を出ると、星光寮の廊下は静かだった。

人は沢山いるのに、

レクトの心が音を遮るから。




サンダリオス家の屋敷。

パイオニアが、出張から帰還した。

広間の扉が開き、

彼の後ろには一人の少女が立っていた。


13歳前後、レクトと同い年。ピンク髪に鋭い目、キラメキと愛くるしさを放つ微笑みを浮かべる少女。


エリザが眉をひそめ、ルナが興味深そうに目を細める。


「彼女は…?」 エリザが問う。

パイオニアが答える。


「セレスティア魔法学園に送り込むスパイだ。

名前はミラ。

レクトの魔法を…『変更』させる。」


彼の声は、炎のように冷酷だった。


「フルーツ魔法は、サンダリオス家の恥。彼女の魔法で、レクトの魔法を別のものに変える。」


ミラが一歩進み、ニッコリと微笑む。

「ご安心を。私、失敗しませんよ。」

彼女の手から、謎の果実が現れる。



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ルナが笑う。

「面白いわ。そしてミラさん、その果実は何?」


「ああ……これは、『禁断の果実』です。

この果実を食べさせれば人の魔法は別のものに変わる。

私の魔法でスパイとして潜入し、彼にこの果実を食べさせるのです。」


「……へぇ、ちなみにどんな魔法に変わるの?」


「それはまだ分かりません。禁断の果実は、魔法を指定できないのです。」



エリザは黙り、窓の外を見つめる。



レクト…ごめん…



セレスティア魔法学園に、新たな嵐が迫っていた。



次話 8月7日更新!

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ヴェルがセクシーすぎる!

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