テラーノベル
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#独占欲
#ワンナイトラブ
#溺愛
「他に好きな男でも出来たんじゃないのか?」
「そんな人いないよ、前にも言ったでしょ」
「怪しいけどな」
「私は私たちの話をしてるの」
「男といるとこ見たって聞いたぞ」
純也の視線が
私の目を直視する
これまで一方的に話す側だった私
純也の目力に気圧されたじろぐ
それでも
ここで逃げ出すわけにはいかない
私は
会話を推進させる
「それって鈴木さんから聞いたの?」
そうだと直感的に思った
それしかないと思った
週末に後を尾けるほど執着した鈴木さんは
純也にそれとなく告げ
私と純也が対立するよう仕向けたのかもしれない
リュカが読み解いたように
もしも彼女が純也と私の別れを望み
純也との未来を望んでいるのであれば
十分にあり得る
筋も通る
「……」
私が口にした
鈴木さんの名前に
あからさまに黙り込む純也
やはり純也と鈴木さんはそういう事なのだろうと
私には確信的に思えた
「最近ね、変なメッセージが来るの」
「差出人不明の怪しいメール」
私は
そう言いながら立ち上がると
鞄からスマホを取り出し
件のメッセージを純也に見せた
「これ、私や純也のことだと思うの」
「心当たりある?思い当たること何かある?」
差し出したスマホの画面を凝視する純也
スクリーンの発光に照らされた純也の眼球が
上下左右にせわしなく動く
純也に見せた文面には
具体的な氏名の摘示こそないものの
その内容から
私のみならず
純也のことも内包してることが伺える
何より
具体的な氏名の言及なくとも
私宛に送付されたメッセージだ
そこには——
私が嫁として失格なこと
夫に迷惑を掛けていること
夫が可哀想であること
そんな内容の文面が
長文で書かれていた
レシートのように長いそのメッセージは
それだけに止まらない
「これだけじゃないの」
「スパムかと思って開けてなかったんだけど……」
「少し前から度々送信されてたの」
そう言って
別のメッセージも見せた
私が夫に愛されていないこと
夫には他の女性が相応しいこと
夫には他に好きな女性がいること
先と同様に長文で
先のメッセージに似た文体な事から
差出人は不明なれど
差出人は同一人物であると強く推認できる
そして
そのメッセージでは
別にいる夫が真に愛する女性との
少し踏み込んだ内容にも言及していた
その女性は
夫たるその男と逢瀬を重ねていること
嫁たる私よりも濃密な時間を過ごしていること
会ってどんなことを聞いたのか
会ってどんなことをしたのか
そして
その女性しか知らないとする
私は知る由もないとする
彼女だけが知っている
その男の本当の姿
その男が
彼女だけに見せるとする
私など知り得ないとする
その男の
本当の魅力を
熱意を込めて書かれていた
リュカの言う通り
複数のメッセージを読み解くと
差出人のその男への深い愛情と執着
その男の嫁たる宛先の女への憎悪
浮かび上がるのは総じてそんなこと
そして
その宛先が私
今
純也はそのメッセージを見て
何を思い
何を考えているのだろうか
かなり時間を掛けて読んでいた純也が
顔を上げ
顔を逸らす
何か都合の悪いことで
思い当たる節があったのだろう
あからさまに気まずそうにしながら
怪メッセージから逃げ
会話から逃げ
鍋を摘まみ
食事へ逃げる純也
メッセージは確認したが
未だ私の問いへは答えていない
「怪しいよねこんなの」
「差出人も不明でタイトルもないの」
「どう?何か思い当たることあった?」
咀嚼していた純也が
口内の食べ物を飲み込むと
追及する私に
嫌々ながら答えた
「いや、特にないな」
「でも怪しいよな、迷惑メールなんじゃないの?」
そんなはずはない
どう見ても迷惑メールとは性質が異なる
私には
純也には思い当たる節があり
それがやましいことに直結していて
誤魔化し逃げたようにしか見えなかった
しかし
逃げる純也に追い打ちをかける気にはなれなかった
私がしたいのは
離婚協議を進めたいだけ
されどこのまま放置するのも得策ではない
私は
その目的から逆算して
リュカのアドバイスから着想を得て
念の為釘を刺しておいた
「純也には迷惑メールに見えるかもしれないけど、私にはそうは見えない」
「それに送られた本人の私は怖いの」
「この文面、私宛に書かれてるでしょ」
「断続的に続いてるし、ストーカーとかそんな類かもしれない」
「だから……」
「警察へ相談に行くか開示請求しようと思ってる」
「念の為消さずに保存して、一応全部スクショも撮っておいたんだ」
「訴えるかどうかは別にして、今後も続くようなら対処したいの」
純也は
目を合わせず
伏し目がちに
鍋物を食べながら
私の言葉を黙って聞いていた
今
純也は
何を思い
何を考えているのだろうか
コメント
1件
第85話読み終えました。純也に鈴木さんの名前を出した瞬間の沈黙、そしてあのメッセージを見せた後で「警察に相談する」って言う流れ、すごく計算されていて主人公の強かさが際立ちますね。純也が鍋に逃げる描写も含めて、心理戦の緊張感が丁寧に積み上がっていて引き込まれました。メッセージの差出人はやっぱり鈴木さんなんでしょうね…この抑止力がどう作用するのか、続きが気になります。