テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「あ、また間違えてる。」
「ごめん、」
「最近気が抜けてるんじゃない。」
またミスをしてしまいました。
全体で聞くと余り目立たないミスでも周りからしたらバランスが崩れてしまうのです。
ファーストトランペットを任されたので必死に練習をしました。
セカンドトランペットは莉音ちゃんです。
「鈴ちゃん、ファーストトランペット譲ってくれてもいいんだよ?」
「いや、私本気でやるから。」
毎日必死で練習をしていました。
父から認めて貰うために。
「ママ、パパはなんであのお部屋にいつもいるの?」
「パパはね、私たちよりも音楽が好きなの。パパの人生はトランペットと共にあるの。」
「鈴は賢いから分かってくれるでしょう?」
「うん、分かったよ。」
本当は分からなかったんです。
母が父の人生を語る時に必ず出る”トランペットと共に”という言葉が。
父は私たちと一緒に居てくれる時間はそう多くありません。
ですが厳しかったり母に手を挙げたりするような人ではありませんでした。
唯一父が怖くなる時がありました。
それがトランペットの練習中です。
3歳の頃からトランペットを練習してきました。
父は百瀬 優という有名なトランペッターです。
母は宮野 琴羽という有名なバイオリニストです。
その2人の一人娘として生まれたのが私、百瀬 鈴です。
父も母も周りもトランペットをさせるかバイオリンをさせるか迷っていました。
とりあえずの音楽をということでピアノを習い始めました。
やはり音楽一家の娘なので才能がありました。
トランペットとバイオリンも習いました。
どちらも上手くできてしまいます。
そんなとある日、母が手を負傷して上手く動かすことが出来ないという後遺症が残ってしまいました。
母が教えられないのなら父が教えるしかない、ということでトランペットを主として練習しました。
父は自分かそれ以上を求めるのです。
上手く吹けないと沢山怒られます。
だから私は中学生になると同時に練習部屋に行くのを辞めました。
一応中学は吹奏楽部に入りました。
私がいるというだけで金賞を大量に取ることが出来ました。
個人的な習い事でソロでも演奏会に出場しました。
何度出ても金賞を取ってしまうんです。
それが怖くなりソロを出るのも辞めました。
舞台に立った途端に無意識で吹いてしまうのが怖くて、観客の期待と視線が怖くて、どうしても立っていられなくなります。
そんな時に都合よく私は病気にかかりました。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!