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俺はただ講堂の裏口で立ち尽くしていた。
久条が突きつけてきた残酷な真実。
俺の存在そのものが偽物だったという事実。
頭の中が真っ白で何も考えられない。
ミラー:「おい奏。しっかりしろ。もうすぐ幕が上がるぞ」
奏:「どうでもいい。俺の存在も、この舞台も、全部」
ミラー:「弱音を吐くな。お前が書いた脚本だろ。最後まで見届けろ」
ミラーの声が遠くに聞こえる。
やがて開演を告げるブザーが鳴り響いた。
二年四組の演劇『現代版高校ハムレット』。
その幕は上がった。
俺が舞台袖に戻った時、劇はすでに始まっていた。
柴田隼人ハムレットが舞台の中央で叫んでいる。
その演技は、もはやただのお調子者ではなかった。
父を失い、復讐に燃える王子の苦悩そのものだった。
斎藤律ホレイショーがその親友を冷静に諭す。
彼の知性が役に深みを与えている。
そして結城莉奈オフィーリア。
彼女の舞うような美しい動きと悲痛な表情。
観客は彼女の悲劇に息を呑んでいた。
山中(ハムレットの父の部下)もまた物語の重要な歯車として完璧に機能している。
そして白瀬ことり(侍女)。
彼女はただヒロインの隣に静かに佇んでいるだけ。
彼女には色がない。
彼女には感情がない。
彼女はまるで美しい絵画の背景のようにそこにいる。
だからこそヒロインの悲劇がより一層際立つのだ。
彼女のその圧倒的なまでの「無」の存在感。
それこそが久条が求めた完璧な舞台装置だった。
ミラー:「見ろよ奏。お前の役者たちは完璧だ」
奏:「ああ。俺がいなくても。あいつらは輝いている」
俺はその光景をただ呆然と眺めていた。
自分が作り上げたはずの物語が今俺の手を離れ役者たちの魂を得て
俺の知らない場所へと向かっていく。
その輝きが眩しすぎて俺は目を逸らした。
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#ファンタジー