テラーノベル
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#ファンタジー
物語は順調に進みついに因縁の亡霊の登場シーンがやってきた。
舞台の照明が落ち観客は息を呑む。
俺は舞台袖でその瞬間を待っていた。
だが俺の頭の中はまだ今朝の久条の言葉で飽和していた。
(俺の存在は偽物だった?)
その思考が俺の集中力を奪う。
ミラー:「おい奏。集中しろ。もうすぐお前の出番だぞ。スモークのスイッチを押すだけだ。簡単な仕事だろ」
奏:「分かっている」
舞台の上で役者のセリフが聞こえる。
今だ。
俺は震える指でスモークマシンのスイッチを押した。
しかし何も起きない。もう一度押す。
ダメだ。
舞台はただ薄暗いだけ。スモークは出ない。
役者たちが動揺し舞台の上には気まずい沈黙だけが流れる。
俺の担当箇所での明らかな「ミス」。
劇が止まる。
最悪の放送事故だ。
奏:「なぜだ?動け!なぜ動かない!」
ミラー:「奏。これは罠では???」
久条からの通達によるショックで、そのときの俺の思考は完全に停止していた。
その時だった。
舞台袖にいる久条が静かに場内アナウンス用のマイクを取る。
そして彼女のその美しく落ち着いた声が、劇場に響き渡ったのだ。
「亡霊。それは霧の中に現れるのではない」
「時にそれはあまりにも、鮮明に我々の目の前に姿を現す。まるで生きている人間と同じように。それこそが最も恐ろしい真実」
久条の天才的なアドリブ、美しいナレーションによって「事故」は「最高の演出」へと昇華された。
観客はそれを芸術的な演出だと勘違いし惜しみない拍手を送る。
演劇は歴史的な大成功を収めた。
終演後の熱気に包まれた舞台裏。
俺は「偶然」抜けていたスモークマシンのコンセントを発見した。
それを見ていた久条は静かにスモークマシンに目をやった。
「運命なんてこんなものでしょう」
そして彼女は落ち込む俺の肩を叩き、慈悲深い声でこう言うのだ。
「音無くん、疲れていたものね。でも大丈夫。私がフォローしておいたから。結果的に素晴らしいシーンになったわ」
周囲のクラスメイトたちが、彼女に賞賛の言葉を送り、そして俺に同情の視線を向ける。
俺は何も言い返せなかった。
俺は「重要な場面でミスをしたが久条に助けられた未熟な演出家」という烙印を押されたのだ。
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