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クロコダイルからピアスを貰った数日後、俺は今日も今日とてデスクワークに勤しんでいた。
「あ、これ午後までに社長のとこに持って行かなきゃいけない書類だった…」
俺はデスクワーク中にふと思い出した。思い出してすぐに立ち上がり、引き出しの中に入っている封筒を取り出してそのまま社長室へと向かった。
コンコンとノックをして部屋に入ると、クロコダイルはいなかった。
「あれ…?」
今日は外出の予定なかった気がするけど……。ロビンも何も言ってなかったし、急な予定でもできたのかな。机の上に置いておいてもいいんだろうか。いや、直接渡した方がいいよなぁ…。
「仕方ない出直す――」
――ゾクリ
「ッ…!?」
背筋が粟立ち、身体が凍ってしまったかのように動けなくなる。
「テメェが鰐野郎のお気に入りか?」
そんな声が背後から聞こえる。声で誰かは何となくわかった。わかったからこそ、俺は振り向けなくなってしまった。
つつ…と長い指が俺の背中を伝う。
「っ、う…」
「フフフフ」
思わず漏れた吐息と、楽しそうな笑い声。
男の指がそのまま俺のうなじの方まで滑っていく。そして首筋に触れるか触れないかの距離で止まった。ゾクッとした感覚と共に身体中の血液が沸騰するみたいに熱くなる。
やばい。これはまずい。
そう思っても抵抗できるはずもなくて。男の手が、俺の首元にあるチョーカーをカリカリと引っ掻くように弄ぶ。
「や…やめ……」
やっと出た言葉は自分でも驚くほど弱々しくて情けなかった。男の、俺をからかうような、そんなどうにも艶かしい指の動きに、どうしていいかわからなくなったその時、ザラリとした砂の感触が俺の頬を撫でた。
「しゃ、ちょう…」
俺の体が砂にからめとられて引き寄せられる。
「人のモンに手ェ出すとはいい身分だな、鳥野郎」
クロコダイルの鋭い視線に射抜かれても、その男は、ドフラミンゴは怯むことなくニヤリと笑った。
「フフフフフ、あんまり可愛らしいんでついね」
そう言って軽く肩をすくめる仕草をしてみせた。わっ、笑い事じゃねえが!!?? 頭の中がどうにかなりそうで怖かったんだぞ!!!!
俺は心の中で盛大にツッコミを入れた。
「そいつが言っていた優秀な部下、だろう? ニコ・ロビンしかり、どこで見つけてくるんだ?」
「どこだっていいだろう、テメェにはやらねえ」
クロコダイルはそう言いながら、俺の腕を引っ張って自分の腕の中に閉じ込める。
今だけはこのコートの中が最強の安全地帯だと思えた。
「あーらら、お熱いことで」
「うるせえ」
「まあ、いいさ。今日は退散するよ。またな、鰐」
ひらりと手を振って、ドフラミンゴは部屋を出て行った。
ようやく解放されて安心した俺は、クロコダイルの胸板に頭を預ける。
「社長が来てくれてすごく助かりました……」
クロコダイルは黙ったまま俺の髪をくるくるといじる。
「彼、七武海のドフラミンゴですよね?」
「あぁ」
「何しに来たんでしょう?」
「知らん。いらんちょっかいかけに来ただけだろう」
クロコダイルはそう言って俺の顎を掴んで上を向かせる。あ、また……。俺はぎゅっと目をつむる。
だが、クロコダイルは俺の面を外すことはない。……ということはしない、のか?
「クハハ、怖ェか?」
「…………すこ、し…だけ」
「ならいい、やめておこう」
あっさりと引き下がったクロコダイルに驚いて目を開ける。すると、彼はどこか満足げに笑っていた。い、色気に……色気にあてられる……!!
「それで? お前はどうしてここに来たんだ?」
「し、書類を、届けに……」
俺は持ってきた書類をクロコダイルに手渡す。受け取ったそれをパラパラと見た後、俺の頭を撫でる。
「よく出来てる。流石だな」
クロコダイルはしっかりと褒めてくれる。それが嬉しくて、思わず笑顔になってしまった。
「それじゃあ俺は仕事に戻りますね」
「あぁ」
俺は踵を返して社長室を後にした。