テラーノベル
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「めめ、どうなってるの?笑」
「なにが?」
「しょっぴーだよ」
シャワーに向かう途中、追いついたラウールが話しかけてくる
「あぁ。翔太くん、あれで自分の気持ちにぜんぜん気付いてないんだよ」
「まじか笑」
「びっくりでしょ」
「ふぅーん、だから香水?」
「……めざといな、お前」
「うふ笑 進展あったらちゃんと教えてね」
「はいはい」
(周りですらも気づいているのに、なんで本人は無自覚なんだか)
今日は練習が終わったのも遅かったから、ひとまず寝る準備を整えて、早めにベッドに入ってから話をしている
寝転がってこちらを向きながら、楽しそうに話す様子が可愛い
「それでさ、その後、、くしゅん!」
「しょっぴー寒いの?」
「ん、ちょっと。ちゃんと布団かぶらなきゃだな」
「こっちおいで」
「え?」
腰に手を回して、引き寄せて腕の中に閉じ込める
「わ、ちょ、めめ…」
俺の胸に手を置いて見上げてくる
「ん?まだ寒い?」
驚いているのに気付かないフリをして、さらにぎゅっと抱きしめる
「……あ、ぅえ?」
今も漂うこの香りと、何度も繰り返した抱擁で、もうすっかり翔太くんの体には俺の体温が馴染んでいるわけで、ふにゃと力が抜けてしまったようだ
「ん?」
見下ろして顔を覗き込めば、うるうるの瞳が戸惑いを伝えてくる
刷り込みはずいぶんと上手く行ったようだ
愛おしすぎて口角が上がるのが止められない
「翔太くん、俺ね、翔太くんが好きだよ」
「ふぇ?」
驚きに、大きな目がさらに大きく見開かれる
「翔太くんも俺のこと好きなんじゃない?」
「え……え?………わかんない」
「翔太くん、俺の体温が好きでしょう?」
「………そうなの?」
「じゃあ今、俺に抱きしめられてるの嫌?」
「嫌じゃない」
「どんなふうに感じる?」
「え、ん〜、」
見上げていた顔を下ろして考え始める
「……なんか、あったかくて、落ち着くから、安心する…それと」
「うん?それと?」
「っ………」
問いかけた俺の方に再び目線を戻した途端に、頬が紅く染まり始める
(お、これは)
思わず俯こうとするのを、頬に手を当てて止める
「それと?」
にっこりと笑いかければ、顔を逸らせない分、キョロキョロと目線が泳ぐ
顔がどんどん熱くなっていく
「あ……えと、、めめからする、この香り、も、、すき、、、だし、、、、」
「うん」
「あ、、あの、そ、そんな、ふうに、笑いかけられると、、う、嬉しくて、、、ドキドキしちゃう」
最後はずいぶん小さい声だったけど、この至近距離だから、しっかりと聞こえた
「ふふふ、そのドキドキはなんだろうね?」
「う、あ、、、も、わかっ、た、からぁ、、、ゆる、して」
もう全身真っ赤にしてようやく自分の気持ちを自覚した翔太くんは、恥ずかしさで瞳に涙を滲ませている
「だーめ。ちゃんと言って?」
「う、、、、あ、、、あの、、、めめが、すき、です」
「うん、嬉しい。俺も翔太くん大好きだよ」
「んぅ」
そっと触れるだけのキスを落とせば、翔太くんの体からさらに力が抜ける
「や、も、ちから、はいらない〜」
「ふふふ、かわいい」
「もぅ………」
「ようやく自覚してくれた」
「え…………あの、おれいつから?」
「さぁ?流石にそこまでは俺もわからないけど。でも、そうだなぁ。少なくとも、寝香水の話をした時より前からそうかなぁって思ってたよ」
「うわぁ………」
ずっと、そんな気がしていた
俺が翔太くんを好きだから、そう思いたいだけかと思っていたけど、たぶんどうやら俺の思い違いではないようだと確信した時には嬉しかった
だけど、まさか当の本人が全くの無自覚だなんて
それで色々と考えてやってみて、寝香水もそれのひとつだ
別に香りが気に入っただけなら、自分の家で同じ香水を振ればいいだけの話だ
それでも泊まりに来て、抱きしめられることにもぼんやりと気づきながら嫌がらない
あの香りに包まれて起きた時は、俺に抱きしめられるところまでが自分の中でセットになっていることを、無意識に受け入れていることにも気付かないなんて
それでも自分の体の変化にようやく気づいてくれたから、告白に踏み切れた
これっぽっちも自覚もしてない人に告っても、望みなんてゼロだし
「好きを自覚したからって、避けたりしたら嫌だからね」
恥ずかしがり屋の翔太くんがしそうな行動にしっかりと釘を刺す
「う、、善処します」
「恥ずかしくてどうしようもなかったら、とりあえず無言で抱きついてきたらいいから、どっか行ったりはしないで」
「う、ん」
「俺、もう香水変えられないなぁ笑」
「なんで?」
「だって翔太くんが覚え込んじゃったんだもん」
「同じことすれば、また覚えるんじゃないの?」
「へぇ、覚えたいの?笑」
「あっ、いまの無し!」
「もう取り消せません」
「もぅ〜!」
「ふふ、とりあえず今日はこのままずっと抱きしめたまま寝ていい?」
「………うん」
初めてちゃんと俺の腕に抱かれていることを自覚しながら、徐々に眠りに落ちていった恋人になった人をより一層抱きしめて、俺も夢の中へ誘い込まれていった
コメント
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あ、あ、あ、顎が外れそうです🫠 無自覚!!!!!
良き、ラブ❤️ラブだなぁ〜🥰🥰