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もくもくもくもく(旧nono)
19
『友達以上、恋人未満』
第1話「お前だけ特別」
「湊ー! 待って!」
放課後の廊下を、悠真が走ってくる。
「……遅い」
教室の前で待っていた湊は、少しだけ不機嫌そうに言った。
「ごめんごめん! 先生に呼ばれてた!」
「五分」
「え?」
「五分待った」
「そんな細かいこと気にすんなって!」
悠真が笑いながら、湊の肩を軽く叩く。
湊はため息をついた。
「……帰るぞ」
「うん!」
二人は並んで歩き出した。
この二人が一緒に帰るのは、いつものこと。
クラスでも、休み時間でも、気づけば隣にいる。
「なあ湊」
「ん?」
「俺らってさ、めっちゃ仲良いよな」
「……今さら?」
「だよな!」
悠真が嬉しそうに笑う。
その顔を見て、湊は一瞬だけ目をそらした。
「……まあ」
「なんだよ、その反応!」
「別に」
「絶対なんかあるだろ!」
「ない」
そんな会話をしながら、校門を出る。
すると、前からクラスメイトが歩いてきた。
「あ、悠真と湊じゃん!」
「また一緒に帰ってんの?」
悠真が笑う。
「まあ、いつも通り!」
するとクラスメイトが冗談っぽく言った。
「お前ら、付き合ってんの?」
「は!?」
悠真が勢いよく振り返る。
「ないない! 俺らただの友達!」
「……そう」
湊が小さく答える。
その声が妙に静かだった。
悠真は気づかない。
「じゃあなー!」
クラスメイトと別れたあと、二人の間に少しだけ沈黙ができた。
「……湊?」
「何」
「なんか怒ってる?」
「怒ってない」
「じゃあなんで黙ってんの?」
「……別に」
湊は前を向いたまま歩く。
悠真は首をかしげた。
「変なの」
しばらく歩いて、駅に着く。
「じゃ、また明日!」
悠真が手を振る。
「……うん」
湊も手を振り返す。
悠真が階段を上っていく。
その背中を、湊はじっと見つめていた。
「……ただの友達、か」
小さくつぶやく。
そのとき、スマホが震えた。
悠真からのメッセージだった。
『明日も一緒に帰ろーな!』
湊は画面を見て、少しだけ笑った。
『うん』
短い返信。
でも、その一言には――
自分でもまだ気づいていない気持ちが、少しだけ混ざっていた。
――第1話・終
コメント
1件
沙良さん、第1話読ませていただきました🌷 「五分待った」って湊が言うところ、細かいけど距離感が伝わってきました。クラスメイトに「付き合ってんの?」って聞かれたときの悠真の「ないない!」と、湊の「……そう」の静けさ。その温度差が切なかったです。最後の『うん』の返信に、湊自身も気づいてない気持ちが混ざってるっていう一文、すごく好きです。このもどかしさ、続きが気になりますね✨