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大きな海を一つ越え、険しい山を二つ越えた時、やっとサンタクロースは目的の街につきました。
「この辺りじゃろうか……」
そこは今まで訪れた中で一番小さな街で、商店もなければ大きなお屋敷もありませんでした。
「何かお探しですか?」
サンタクロースが星を探して辺りを見渡していると、一人の少年がそう声をかけました。
「この辺に輝かしくて立派な星があると聞いたのじゃが」
「星……僕はこの目で星の輝きを見ることができません」
そう言った少年は手に杖を持ち、その目は開いていましたがどこか遠くを見ているようでした。
「この街にそんな星があると僕は聞いたことがありませんが、もしかしたら街の誰かなら知っているかもしれません。ちょっと行って聞いてきます。さあ長旅お疲れでしょう。その間にうちで休んでいってください」
少年はサンタクロースを家に案内すると、井戸で汲んできてコップに入れた水と、小麦を練って作ったというお菓子をサンタに出し、すぐにまた外に出ていきました。
「シリウス、いるかい?」
サンタクロースが少年を待っていると、少年を訪ねてきた女性が家のドアを開けました。
中にいる見知らぬ老人に驚いた彼女に、サンタクロースは今までの経緯を話しました。
「なるほど、あたしもそんな話は聞いたことがないね……実はあの子、事故で両親を亡くしているんだよ。視力もその時に一緒に……でもね、あの子は希望を捨てたりしなかった。それどころかこんなに優しい子に育ったんだ。この街で一番輝いていて立派な星は他の何でもなく、あの子じゃないかとあたしは思うけどね」
確かに少年の心の優しさは、サンタクロースの探している星に負けないほどの輝きを放っていました。
ですが、その輝きはツリーに乗せるためのものではありません。それは、これからもこの街やこの街の人々を明るく照らしていくためのものだとサンタクロースは思いました。
そこに少年が肩を落として帰ってきました。
「お帰りシリウス。探し物は見つかったかい?」
女性がそう尋ねると少年は静かに首を横に振りました。
「せっかく手伝ってもらったのにすまないね」
「お役に立てずすみません……」
「いや、君の気持ちがとても嬉しかった。ありがとう」
サンタがそう言うと、少年は小さく笑みを浮かべました。
「僕の名前は父がつけてくれました。母は僕に言いました。空で一番輝くこの星のように、周りを照らす人になるんだと。僕にとって一番輝く星は、やはりあの空の星です。僕には見ることができないけど、それが僕の行く道をいつも照らしてくれます」
サンタクロースは少年の言葉を聞いてただ静かにうなずきました。
「帰る前に、君の願いを聞いてもいいだろうか」
ソリに乗ったサンタクロースは少年にそう尋ねました。
「僕の願い……両親にもう一度会いたい……でもそれはきっと叶わないから、せめてもう一度だけでいいからこの目で星を見たい……」
「君の願い、確かに受け取ったよ」
サンタはそう少年に微笑むと、北に向かって飛び立ちました。